『ぼっち・ざ・ろっく!』後藤ひとりの使用機材から考察──際立つ“ギターヒーロー”の腕前
なぜ後藤ひとりは「Cubase」を使わないのか?
「UR22C」も「UR22mkII」も、Steinberg製のDAWソフト「Cubase AI」が付属しています。 どうして後藤ひとりは「Cubase AI」ではなく「Grageband」を使用しているのでしょうか? 仮に、後藤ひとりが“弾いてみた動画”を制作するために「UR22C」(あるいは「UR22mkII」)を購入したとして、オーディオインターフェースに付属している「Cubase AI」ではなく、あえて「GarageBand」を使用するのは不自然……とまでは言えない(※)ものの、何らかしらの意図を感じさせます。 (※)DAWソフトには、それぞれ得意・不得意があるため、単純に優劣を語るのは難しいです。ちなみに、筆者がはじめてオーディオインターフェースとして「UR22mkII」を購入した時には、「Cubase AI」を使用していました。 アニメ『ぼっち・ざ・ろっく!』と言えば、アニメ制作会社・Clover Worksによる音楽やバンドに対するリアリティと細部への気づかいを感じさせる描写も注目を集めた作品。 そこにはきっと理由があるはず!
無料ソフト&エントリーモデルの機材構成を明確にしたからこそ浮かび上がるキャラクター性
下位モデルから上位モデルまで、“共通の高音質と使いやすさ”を備えていると謳う「Cubase」。プロのアーティストも使う人気のソフトです。 どのグレードの「Cubase」も、ディティールで区別するのが困難だと言えるほどに、ほとんど似たようなUIデザインなのも特徴。もし仮に後藤ひとりが劇中で「Cubase」を使っていたとしたら、下位モデルなのか最上グレードなのか、それを断定するのは難しいです。 その点にこそ、後藤ひとりにふさわしいソフトが「GarageBand」である理由が隠されていると考えています。 「GarageBand」なら、デフォルトの無料ソフトであることが明確(そもそも無料版しか存在しないため。有料版の「Logic Pro」とディテールで区別するのは「Cubase」ほど難しくありません)。使用機材によって、後藤ひとりのキャラクターを表現/演出するのであれば、「GarageBand」のほうが意味性が生まれます。 つまり後藤ひとりは、無料ソフト×エントリーモデルという機材構成で、覆面女子高生ギタリスト「guitarhero」としてインターネット上で人気を集めていた、という設定を生み出せるのです。 もちろんプロと同じ機材を使えば必ずしもクオリティが高くなるというわけではありませんが、そのビハインドを埋めるほどに「guitarhero」の腕前は凄まじかったのです。 「UR22C」(あるいは「UR22mkII」)と「GarageBand」という機材構成は、後藤ひとりのギターの実力を示す演出として、しっかりと機能していると考えています。
都築 陵佑