欧州よりも日本が「だいぶいい」 日本人MFが体験したリアル「家族には来てほしくない」【インタビュー】
スイスではアウェーの洗礼も経験
日本ではスタジアムの構造的にホームとアウェーのロッカールームに差があることは少ない。また、アウェーチームが不便に感じないようにホームチームが協力する姿勢を見せ、お互いにいい環境を作り合うところがある。しかし、欧州では「アウェーの洗礼」を設備の部分から浴びせられるのが珍しくないという。 スイスではFCチューリッヒとのダービーマッチに臨んだこともあった川辺だが、「特にダービーなんかは自分たちがアウェーだなと感じる。家族には、来てほしくないくらい危ない。殺気立った雰囲気がすごくあったし、実際に危ないこともあった。サポーターから何か投げ込まれたり、汚いジェスチャーも普通の環境で。でも、面白かったですけどね。アウェーだと、活躍してスタジアム静かになる雰囲気がすごく気持ち良かった」と、安全性の部分で感じた問題と、選手として快感を得られる部分の両面について触れた。 欧州移籍がステップアップを意味すると捉えられる日本サッカーの環境だが、経験者として川辺は「ヨーロッパに行っているたくさんの人が発信していると思うけど、キラキラしている部分は皆さんが得ている情報だけというか、活躍すればすごくキラキラしているけど、それ以外の部分はすごく大変なことも、孤独な時間もある。サッカーから頭が離れない時間もあって、試合や練習での悔しさもあるし、そういうのを経験しないと分からないこともたくさんあった」と実感を込める。 それでも、「その悔しさや苦しさが大きい分、活躍した時の嬉しさ、ゴールやアシストですよね。そういう活躍の嬉しさはもう、今までにないくらいだった。それはヨーロッパに行かないと分からないのかもしれない」と話した。 ただし、そこまで話したあとに、川辺は「苦しい時間のほうが多いと思うけど」とも苦笑いしながら付け加えた。 良くも悪くも平等や公平性を重視する日本と、競争と格差が顕著でそれが当たり前の欧州。その差を経験することは、サッカー選手としても1人の人間としても深みを増すことにつながるはずだ。 [プロフィール] 川辺駿(かわべ・はやお)/1995年9月8日生まれ、広島県出身。広島ユース―広島―磐田―広島―グラスホッパー(スイス)―スタンダール・リエージュ(ベルギー)―広島。J1通算192試合15得点、J2通算33試合3得点、J3通算1試合0得点、日本代表通算6試合1得点。高いテクニックと豊富な運動量を誇るボランチ。2022年1月にはイングランド1部ウォルバーハンプトンと契約を結び、注目を集めた。
轡田哲朗 / Tetsuro Kutsuwada