（写真：映画.com）

　俳優の福士蒼汰と松本まりかが5月18日、TOHOシネマズ日比谷で行われた映画「湖の女たち」公開記念舞台挨拶に登壇。原作者の吉田修一氏からの手紙に松本が号泣するシーンも見られた。舞台挨拶には三田佳子、浅野忠信、大森立嗣監督も参加した。 【フォトギャラリー】「湖の女たち」公開記念舞台挨拶の模様 　本作は、ベストセラー作家・吉田氏の同名小説を、「日々是好日」「MOTHER マザー」などの大森立嗣が映画化したヒューマンミステリー。湖畔に建つ介護施設で100歳の老人が殺害されたことを契機に、事件を追う刑事と容疑者がいびつな関係性を築くさまを描き出す。 　昨日5月17日に全国190館で封切られた本作。事件を追う若手刑事・濱中圭介を演じた福士は、大森監督からも「これまで観たことがない福士蒼汰が観られる」と語られていたように、劇中ではこれまでのパブリックイメージとはかけ離れたような役柄を演じている。 　初となる映画上映後の舞台挨拶に福士は「皆さんどう思っているんだろうと思うと緊張してきました」と苦笑いを浮かべると、事件が起きた施設の介護士・豊田佳代を演じた松本も「この作品をやっているとき、出口が見えない、答えが分からないなか、とてもきつかった」と思いを吐露する。そんななか、松本は「答えが分かっていない私を、大森監督がひたすら信頼し続けてくださいました。その信頼がきつかったのですが、同時にここまで覚悟を持って役者を信頼してくれることがどれだけのことなのか実感しています」と大きな出会いだったことを強調する。 　福士と松本にとっては“大きな挑戦”。メガホンをとった大森監督も同じ思いだったようで「僕の映画にはありがちなのですが」と前置きすると「昨日公開されましたが、すごく賛否両論があります。一応（否定的な意見には）傷つきますが、でもある種確信があった。改めてこの映画を作れたこと、公開できたこと、スタッフ、俳優に感謝します」と思いを述べる。 　イベント後半には、原作者の吉田氏から手紙が届いた。吉田氏は公開をお祝いすると「この小説はとても持ちにくい形をしています。映像化に際して、持ちやすいように形を変えることは簡単ですが、大森監督は持ちにくい形のまま、それでも持ち上げようとしてくれました」と大いなる挑戦を称える。 　さらに吉田氏は、福士や松本に対して「福士蒼汰さんが持つ野性的な官能、松本まりかさんが体現した大自然のリズム」と表現すると「主演を務められた福士さん、そして松本さん。圭介と佳代という人間を生み出した原作者として思うのは、今回のお二人の挑戦が生半可なものではなかっただろうということです。しかしその挑戦の先でお二人が見せてくれた風景は、小説を遥かに超えたものでした。圭介と佳代を誇り高く演じてくださって、心から感謝申し上げます」と賞賛。 　福士は「ありがたい言葉をいただければいただけるほど、もっとやれたのかな……と未熟さを実感してしまいます」と言葉を紡ぐと「でも役者としてだけではなく人としても大きく変われた出会いでした。役者をやるって素敵だなと思える瞬間でした」と思いを明かす。 　松本は、手紙の感想を問われると、30秒ほど無言で顔をゆがませる。その後、大粒の涙を流し「正直な話をすると、自分がこの役をやるには人間性も芝居も未熟すぎて体現できないと思っていたんです。でも大森監督の作品、吉田さんの原作、どうしてもやりたいと思ってしまった。とても罪深い事でした。手紙をいただき、よりその思いが強くなった」と吐露。それでも松本は「原作の吉田さんがそう思ってくださるのは救いでした」と最後は笑顔を見せていた。