【サクラフィフティーン PICK UP PLAYERS】いま、好調のわけ。津久井萌[SH/横河武蔵野アルテミスターズ]
史上最年少で日本代表デビューを飾った2016年から約8年が経過した。3大会目のW杯出場を目指す24歳の津久井萌はいま、好調を維持している。 持ち味の素早いリサイクルでBKを動かすだけでなく、6月のフィジー戦第1戦ではラック脇を突いてトライを挙げた。31キャップ目にして代表初トライだった。 「それまでは自分が仕掛けるよりも、いかに早く仲間にパスを出してスペースにボールを運ぶことしか考えられませんでした。選択肢がそれしかない状況で、余裕がなかったと言いますか。今年は余裕を持って落ち着いて判断することを特に意識してきました」 SHではあるが3月から始まった日本代表のFW合宿に招集され、「もう行きたくない」と思うほど過酷だったが、そこで新たな扉を開けた。FWがセットプレーの練習をおこなう間に、個別でボールキャリーのやり方を教わり、初めてスピードトレーニングをこなしていたのだ。 実は現在のパフォーマンスを手にするまで、津久井は悩み、苦しんでいたという。 「コロナ禍になる前の時期に、自分が成長しているとあまり感じられませんでした。何かを変えなければいけないと」 それまではSHに特化した専門的なコーチングを受けてこなかった。だから、現役時代はSHでサクラフィフティーンのBKコーチを務めていた藤戸恭平氏(現・横河武蔵野HC)に、個人レッスンを請うた。 「群馬まで来てもらい、パスの投げ方を一から変えました。それまでは腕だけで投げていたのですが、体全体を回す力も利用する。ただ、私はその体の連動がすごく苦手で、はじめは全くできませんでした」 とにかく量をこなした。「暇さえあれば投げていました」。ようやく形になってきたのが昨年だった。好調ぶりはレスリー・マッケンジーHCの起用を見ても明らかで、2022年のW杯は全試合ベンチスタートと苦杯をなめたが、W杯以降はほとんどの試合で背番号9を務めている。 「負けず嫌いな性格なので、自分のプレーが上手くいかないと落ち込むし、悔しい。負の連鎖に陥っていたのですが、今は楽しくプレーしようとマインドを変えられた。それからは少しですが周りが見えるようになったと思います」 来年に迫るW杯イングランド大会では、「結果を残したい」と語気を強める。 「テストマッチでは勝てるようになってきましたが、大きな大会で結果を残すことがまだできていません。大きな舞台で1勝でも多く勝ちたいです」 前回大会でリザーブに回り、感じたこともあった。「メンバー外も含めた全員が同じ方向を向いて一つにならないと絶対に勝てない」。だから、リーダーキャラではないけれど、気づいたことがあれば個別で「今のはもっとこうした方が良くなるよ」と伝える。グラウンド内外で、繋ぎ役になる。 (文/明石尚之) ※ラグビーマガジン10月号(8月23日発売)の「女子ラグビー情報」を再編集し掲載。掲載情報は8月18日時点。 【女子日本代表「第2回 WXV2」試合日程】 ・9月27日16:00KO vs 南アフリカ(南アフリカ/DHLスタジアム) ・10月5日14:00KO vs スコットランド(南アフリカ/アスローン・スポーツスタジアム) ・10月11日16:00KO vs ウエールズ(南アフリカ/アスローン・スポーツスタジアム) ※現地時間