“インプレゾンビ”がひとつのコンテンツ化? 時代を投影するムーブメントに
なにかとSNSで話題になっている“インプレゾンビ”。筆者もXで面白いポストを発見しても、「どうせインプレゾンビしかいない」と思い、最近はリプ欄を開きもしなくなってしまった。そんなちょっと困った存在であるインプレゾンビだが、最近は逆にコンテンツとして昇華している事例が散見される。 【写真】Xを擬人化したコント 「バズってまずクソリプが来て、その後それをコピペするインプゾンビが来る構図ですね」 たとえば漫画。こちらは漫画作家・BirdHatter氏の「インプレゾンビの漫画まとめ」という作品だ。インプレゾンビをリアルなゾンビに擬態化し、ゾンビ映画のような展開で見せていることで話題となった。登場するゾンビも一辺倒ではなく、「さっきまで至極普通のポストしてたやつ」「青バッジ付き無差別虚無自動リプライインプレ稼ぎゾンビ」「リプツリーゾンビ」などなど種類も豊富だ。 筆者はインプレゾンビに対して、AIを使ってインプレッションを稼いで収益を得るユーザー程度の認識だったのだが、漫画にして見るとインプレゾンビにもいろいろあることがわかり、とても理解がしやすい。またインプレゾンビのその後や、一般人がインプレゾンビになる瞬間の表現も、漫画を通してユーモラスに理解することができる。 こちらは「【コント】もしTwitterを実写化したら(feat. annie the clumsy)」という動画だ。投稿しているのは、風刺コント動画を発信している「スケッチブック」というYouTubeグループである。 主人公がテーマパークの入園料について言及したところ、地響きとともに見知らぬ人間がゾロゾロやってきて「ディズニーはオワコン。USJの方がいいから!」「若い人がこう感じるのも不景気のせいだ。治安が悪い!」といったセリフをぶつけてくる。そしてしばらくすると遠くからゾンビがやってきて、「うぅ……ディズニーはオワコン……。ディズニーの愛が足りない」とインプレゾンビがやってきて幕を閉じる。 インプレゾンビ含めX自体を擬人化したコントとなっているのだが、これには「バズってまずクソリプが来て、その後それをコピペするインプゾンビが来る構図ですね」と、Xの流れをうまく体現している演出に反響が集まっている。 こちらは漫画家のきたしま氏の作品「インプレゾンビかと思ったら、正体は恋する乙女でその子に会いに行く話」だ。インプレゾンビだと思っていたユーザーは、実は主人公の絵師のファンであることが判明。主人公が現地に向かい会いに行くのだが……? という内容となっている。徐々に壮大になっていく展開に引き込まれるが、このインプレゾンビだと思ったら実は一般的なユーザーだったという事例は、現実でも発生している可能性が十分ある。 現に2024年9月26日には、インプレゾンビかと思われていたユーザーが、日本語を勉強したインド人だったということで話題になった。 「インプレゾンビは土に還りなさい」というパンチラインもあり大きな反響となったのだが、いよいよこうなってくると人間とインプレゾンビの境界線は曖昧になってきているのではないだろうか。あからさまなコピペやAI文章であるならインプレゾンビだと認識できるが、精度が上がれば見分けるのは難しいだろう。 より複雑化していくインプレゾンビ。今回はコンテンツ化というポップな視点で紹介したが、このまま増加の一途を辿れば、Xというプラットフォームの価値自体がどんどん低くなっていってしまう。信憑性のない情報の投稿が増えると、非常時などでSNSから情報を得ることが難しくなってしまうのはもちろんのこと、日常使いでもSNSの楽しさが減っていってしまうだろう。今後インプレゾンビはどうなっていくのか、Xの動向からは目が離せない。
はるまきもえ