票につながりにくいから?…衆院選鹿児島3区で原発政策の議論低調 立地自治体の薩摩川内市長選・市議選も無投票の公算大で有権者嘆き
衆院選鹿児島3区、九州電力川内原発の立地する薩摩川内市で、国が進める原発回帰政策の議論が低調だ。27日は市長選・市議選の投開票もある「トリプル選」ながら、市長選が無投票の公算が大きいのも追い打ちをかける。1号機が40年超の運転延長期間に入ったのと重なる年に論戦自体がほとんどなく、有権者からは嘆く声が聞かれる。 【写真】薩摩川内市の位置を地図で確認する
衆院選公示の15日、川内原発から10キロ余り離れた市中心部。一騎打ちの与野党候補は自らの出陣式で、支持者らを前に「政治とカネ」問題のほか、農業や子育てといった得意な政策に時間を割いて支持を求めていた。原発には触れずじまい。街では選挙カーが候補者名を連呼するばかりだった。 前回衆院選の後、国は原発回帰にかじを切った。川内原発は目下、「原則40年、最長60年」の現行ルールに基づく40年超運転の段階に進んでいる。1号機が7月に入り、2号機は2025年11月に控える。 さらに来年6月移行の新制度が認める「60年超運転」を視野に入れる一方、搬出の見通せない使用済み燃料は31年ごろに貯蔵プールを満杯にする。能登半島地震が避難計画に疑問符を突き付けて1年に満たない。 両候補は取材などで問われれば見解を示す。立憲民主前職の野間健さん(66)は将来的な脱原発は必要とするものの当面の利用を容認する立場で、自民前職の小里泰弘さん(66)は地域の安心安全を前提に動かすとの考え。「60年超運転」への認識こそ違うとはいえ、現在の稼働を認めており課題への言及が乏しい点で大差ない。
原発は専門性が高く分かりづらい上、住民の賛否が割れるテーマ。いずれの陣営関係者も「原発は票につながりにくい。多くの支持を得ないといけない時には、他の関心の高いテーマが優先される」と、ことさら取り上げない思惑を説明する。 告示が20日に迫る薩摩川内市長選も、川内原発の運転延長を容認した現職しか名乗りを上げておらず、無投票の観測が広がる。選挙は住民にとって地域を見つめ直すチャンスとされるが、衆院選と併せて盛り上がりは弱いままだ。 「日常で原発の話題はあまり出ない。議論が低調なのは残念だ」。同市入来のNPO法人理事長、中川功さん(71)は、選挙は有権者が考える機会になるとみる一人。「運転延長後を考えるためにもタブー視するのではなく、候補者が積極的に考えを示してほしい」と要望した。
南日本新聞 | 鹿児島