スマホが農業を変える?(下)経験と勘+AI活用 産官学で挑む農業の未来
農業現場がIT(情報技術)で変わろうとしています。田んぼの真ん中でデータを確認し、困ったときにはスマホが作業のアドバイスをしてくれる…。そんな未来がすぐやって来るかもしれません。トヨタ自動車による農作業の「カイゼン」に続き、AI(人工知能)の活用を含めた産官学の取り組みを紹介します。 【写真】スマホが農業を変える?(上)トヨタが本気で取り組む農業のカイゼン
データからソフトが収量や品質予測
名古屋大学を中心とした「ICT(情報通信技術)活用農業事業化・普及プロジェクト」。農水省などの予算で名大をはじめ中部大、三重大、信州大などの大学と愛知県、豊田市といった行政、そして民間企業の計14機関が連携組織をつくり、2014年度から3年計画で取り組んできました。メインプロジェクトの他、サブプロジェクト(補完研究)には東大や理研、NECの子会社なども名を連ね、今年2月末に最終報告会を東京で開きました。 研究全体のリーダー(実施責任者)は、名大大学院情報科学研究科副研究科長の北栄輔教授。もともとは「複雑系」の科学を専門として交通や株価、生態系のシミュレーションなどを手掛けてきた研究者です。
「今回はまったく“畑”違い」と言う北教授が農学部の研究者らと取り組んだのは、農業の新しい「情報インフラ」づくり。コメやトマト、ブドウなどの栽培現場を対象とし、そこで得られる情報を共通のデータベースにしてどう活用できるか。田畑に種々のセンサーを設置して気象や土壌、果実の色などを観測。それらのデータをコンピューターやウェブで標準的に使われる形式に整えて蓄積し、生産者らが携帯端末でデータを確認、活用できるようなシステムの構築を目指しました。 愛知県内の名大の実験圃場(ほじょう)を対象とした取り組みでは、実際に「e-栽培暦」と名付けたアプリケーションを活用。作業者はタブレット端末などを通して水田の状況をほぼリアルタイムに把握しながら、過去のデータと現在の環境条件を照らし合わせてソフトが自動的にはじき出す今後の作業スケジュールや予測収量、品質の良し悪しなどを知ることができます。