終身編集長(12月21日)
「福島の進路」は、県内経済の羅針盤。とうほう地域総合研究所の月刊誌だ。景気・産業の調査リポート、経営者インタビュー、行政の施策紹介など話題が満ちる▼65歳の男性編集長がほぼ一人で作業を担う。目を引く表紙のカラー写真を吟味し、取材先や執筆依頼者を決めて手配する。誌面のレイアウトを工夫し、マンネリ化を防ぐ。原稿の修正が多く苦労する時もあるが、締め切り厳守。500号を超える伝統の一冊は4千部印刷され、金融機関や経済団体、図書館に無料で配布される▼東邦銀行の行員として、支店勤務を長く続けた。新たな仕事に就いたのは昨年夏。編集業務は初めての世界だった。金融業とは勝手の違う職場で、旺盛な好奇心が支えになった。芸術やスポーツ記事も盛り込み、自分の色を出したいと意気盛んだ。還暦を過ぎて飛び込んだ新天地で、新鮮な喜びを今も感じている▼世界最高齢のプログラマーと言われる若宮正子さんが、その道を学び始めたのは80歳を過ぎてから。〈人間誰しも、楽しいことは長続きします〉と著者で説く。暦が変わったら、真っ白なページに挑戦を書き込み始め、「生きがいブック」とでも名付ける。あなたは終身編集長。<2024・12・21>