『マッドマックス』最新作で若き日のフュリオサ役に抜擢!活躍光るアニャ・テイラー=ジョイの”これまで”に迫る
大作が次々と公開されるサマーシーズンは気になる作品も少なくないが、『マッドマックス:フュリオサ』(5月31日公開)はその筆頭に挙げられる。アクション映画に革命をもたらしたと言っても過言ではない『マッドマックス 怒りのデス・ロード』(14)の前日談。同作で強烈な印象を残した女戦士フュリオサの若き日の死闘を描いた物語が展開する。スピード感満点のアクションは今回もすごいことになっているだろう。加えて注目すべきは、前作でオスカー女優シャーリーズ・セロンが演じたフュリオサ役を、ここ数年の活躍が目覚ましい若手アニャ・テイラー=ジョイが演じていることだ。 【写真を見る】前作でシャーリーズ・セロンが演じた女戦士フュリオサの若き日を演じる(『マッドマックス:フュリオサ』) ■天才チェスプレーヤーを演じた「クイーンズ・ギャンビット」で演技派としてブレイク 4月に28歳になったばかりのテイラー=ジョイは、すでに俳優歴10年。最も知られている主演作品を挙げるとすれば、2020年にNetflixで配信されたドラマシリーズ「クイーンズ・ギャンビット」だろう。20世紀半ばの封建的な時代に、チェスの天才プレーヤーとしてのし上がっていく主人公の少女を演じたテイラー=ジョイは、繊細さと共に研ぎ澄まされた凄みを表現。全7話を観終えた時すでに、彼女に魅了されていたファンは少なくないだろう。 ■M.ナイト・シャマラン監督の『スプリット』、ロバート・エガース監督の『ウィッチ』&『ノースマン』など個性派監督の作品でも輝く それ以前から、テイラー=ジョイは映画女優として頭角を現わしていた。最初に注目されるようになったのは、おもにホラーやスリラーの分野。『モーガン プロトタイプ L-9』(16)で遺伝子操作により誕生したハイブリッド少女の暴走を体現したのち、M.ナイト・シャマラン監督の『スプリット』(17)でヒロインを務め、新世代のスクリームクイーンとして脚光を浴びた。以後も『マローボーン家の掟』(17)や『サラブレッド』(17)など、この分野の作品への出演は続いた。 作家性の強い監督から好まれるのも彼女の強みで、ロバート・エガース監督のデビュー作『ウィッチ』(15)で初主演を務めることに。テイラー=ジョイは中世の北米で魔女裁判にかけられた少女の受難を熱演し、多くの映画賞を受賞した。また、エガース監督と再び組んだ『ノースマン 導かれし復讐者』(22)では、これまた森の魔女と呼ばれる女性に扮し、裸身も辞さぬ体当たりの演技を披露。アート映画の分野で女優としての仕事が認められたのは、現在のキャリアにもつながっている。 ■サスペンスフルな魅力も鮮烈な『ラストナイト・イン・ソーホー』に『ザ・メニュー』 一方で大作や話題作への出演が増え始め、「X-MEN」シリーズの一編『ニュー・ミュータント』(20)では若き特殊能力者を怪演。『ショーン・オブ・ザ・デッド』(04)でおなじみのエドガー・ライト監督が手掛けたスリラー『ラストナイト・イン・ソーホー』(21)での60年代ロンドンの亡霊のような歌手の役も忘れ難い。サスペンスコメディ『ザ・メニュー』(22)では悪しき美食文化に反抗する女性を演じて、こちらも鮮烈な印象を残した。 ■大ヒット作『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』ではピーチ姫の声優に ほかに、ジェーン・オースティン原作の『EMMA エマ』(20)では文芸ドラマのヒロインを務め、『プレイモービル マーラとチャーリーの大冒険』(19)や、人気ゲームを映画化した大ヒット作『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』(23)などのアニメーションでは声優業にも挑んだ。こんな具合に、テイラー=ジョイの俳優としての10年は芸域を広げ続けた期間でもあったのだ。モデル出身らしい整った体型と、エキゾチックな美貌は、もちろん彼女の強い武器ではあるが、それだけでは成功し得ない。キャリア開拓への意欲こそが彼女をスクリーンで輝かせた最大の理由だろう。 ■『マッドマックス』のフュリオサ役から目が離せない! さて、注目の新作『マッドマックス:フュリオサ』だ。『~ 怒りのデス・ロード』を観た方ならわかると思うが、女戦士フュリオサはタフな戦いを強いられ、肉体的にも過酷な目に遭う。新作のフュリオサは若い設定だが、ストーリーを追う限り、より苛烈な体験をすることになるようだ。これをテイラー=ジョイが演じるとなれば、彼女にとってもこれまで以上にハードなアクション演技を必要とされるだろう。予告編を見ても、その片鱗が垣間見える。ともかく、アニャ・テイラー=ジョイがスクリーンに刻み付けた熱演は、目の離せないものとなるに違いない。 文/有馬楽