米企業に広まる「オフィス回帰」と従業員監視…専門家の意見は？（海外）
過労への懸念が叫ばれるなかで、アメリカの金融機関は、若手社員の労働時間の監視を始めている。 他の業種でも、監視やトラッキングを用いて、出社義務化（RTO）ポリシーが守られているかをモニタリングしている企業は多い。 部下のトラッキングには、メリットとデメリットの両方があると、ある専門家はBusiness Insiderに述べた。 上司が権限を取り戻しつつある。 新型コロナウイルス感染症（COVID-19）のパンデミックのさなか、そしてその後の数年間は、短期間ながら、従業員が働き方に関する主導権を過去にないほど手にした時期があった。たとえば、ハイブリッドワークや週休3日制、フレックスタイム制度といった現象が見られた。2021年から2022年にかけて、アメリカでは毎月数百万人単位で仕事を辞める人が続出し、「大離職時代」とも呼ばれた。 だが今や、潮目は変わった。雇用主が主導権を取り戻しつつあり、厳密な出社義務化（RTO）ポリシーや、大量解雇といった現象が見られる。さらに、「従業員の監視」も増えつつある。 ウォール・ストリート・ジャーナル（WSJ）は9月、バンク・オブ・アメリカ（Bank of America）とJPモルガン・チェース（JPMorgan Chase）が、若手バンカーの過労対策を計画していると報じた。
過労への懸念から、監視技術を採用する米金融機関
こうした変化は、バンク・オブ・アメリカで働いていた35歳のアソシエイトが、急性の冠動脈塞栓で死亡したことを受けて起きたものだ。死亡した行員のレオ・ルケナス3世（Leo Lukenas III）は、陸軍に在籍したのちに投資銀行のバンカーに転じた人物だったが、大型案件を担当している期間は、数週間にわたって労働時間が週100時間に達していたという。 検視官の報告は、ルケナス氏の死と仕事のあいだに関係があるとは認定しなかったものの、これをきっかけに、ウォール街全体で、特に入社後まもない従業員の労働条件に関する議論が起きた。 JPモルガンでは、若手バンカーの労働時間に週80時間という上限を設けることになった。ただし、一部の状況においては上限の適用が除外される。バンカーの仕事の中でも最も負担が大きい業務である、現在進行中の案件を抱えているなどのケースだ。 JPモルガンの関係者によると、適用除外措置が設けられているケースについても、平均労働時間はすぐにこの上限以下にまで減るはずだという。 バンク・オブ・アメリカでも時間計測ツールを導入し、若手バンカーに対して、自身の仕事量をより詳細に報告することを義務づけるという。同行はすでに、週80時間という基準を超えて働いている従業員について、人事部門に警告するシステムを導入している。 従業員は今後、自分の実働時間を報告するとともに、さらに多くの業務を引き受ける余力があるか否かを知らせる必要が生じる。
