北陸新幹線「小浜・京都ルート」 ついに京都府議会自民党から「NO」の声! しかしなぜか要望書は再提出、もしや“内部分裂”の危機なのか?
財政制度等審議会から厳しい意見
小浜・京都ルートは敦賀駅から小浜市へ西進したあと、地下を通って京都市へ南下、京都府京田辺市付近を経由して大阪市淀川区の新大阪駅へ向かう。途中駅は小浜市の東小浜駅付近、京都市下京区の京都駅付近2案と京都市南区の桂川駅付近のいずれか、京田辺市の松井山手駅付近の計3か所に設ける計画だ。 与党整備新幹線建設推進プロジェクトチームが2016年に決めたが、沿線住民らの反対運動により京都府内で環境アセスメントが遅れ、着工のめどが立っていない。このため、石川県議会や石川県小松市、加賀市、金沢経済同友会、日本維新の会などが米原ルートへの変更を求めている。 国の財政支出の面からも小浜・京都ルートに厳しい意見が出てきた。財務相の諮問機関である財政制度等審議会の分科会が10月末、整備新幹線について議論し、着工5条件の維持を主張したことだ。 着工5条件には投資効果が含まれる。投資効果は事業で得られる便益を総費用で割った費用便益比で判断され、数値が1以上なら投資効果があるとされる。小浜・京都ルートは2016年の試算でぎりぎりの 「1.1」 事業費が2倍以上になれば、投資に見合わない1以下になるとみられる。 与党整備委員会は計算手法の見直しで1以上の数値を確保したい考え。分科会の主張はこれにくぎを刺す狙いも透けて見える。分科会の主張が財務省の方針に100%なるとはいい切れないものの、小浜・京都ルート推進派には新たな“難敵”の登場だ。
着工に立ちはだかる難題
京都府の反対運動は、地下水への影響などを心配する声が沿線住民や環境保護団体だけでなく、酒造や織物業界など 「経済界」 にも広がっている。京都府が反対の立場を取れば、小浜・京都ルート推進に決定的なダメージを与えかねないだけに、その対応に注目が集まっている。 だが、西脇知事はこれまで、小浜・京都ルートの是非や他県の動きなどに公の場で口を挟むことを控えてきた。知事に就任したのが2018年で、小浜・京都ルートがその前から国家プロジェクトとして動いていたことに配慮したもようだ。環境アセスメントに関しては 「慎重な調査と丁寧な地元説明、適切な対応を国にお願いする」 とし、増大しそうな地元負担に対しては地元の利益に見合う負担を国に求めているが、国土交通省が8月に示した京都市内の駅設置3案については、記者会見で情報不足などを理由にどの案を支持するか答えなかった。 国交省は今夏から「地元に丁寧な説明をする」としながら、ルート案などに関する詳しい説明がないまま。府交通政策課は 「今後、新たな対応があるかどうかはまだわからない」 と説明した。 小浜・京都ルートの2025年度着工を実現するとなると、予算確保が必要になる。新年度予算案が閣議決定されるのは例年、12月下旬。それまでに反対派から一定の理解を得るのは難しいだろう。 かといって強行突破を図っても、反対運動が収束するとは思えない。財務省が予算案に整備費計上を認めるのか、少数与党の国会運営で予算案が通過するのか、次々に難題が待ち構えている。混とんとした状況の収拾策は見えない。
高田泰(フリージャーナリスト)