「M-1グランプリ 2023」優勝・令和ロマン、“新星”と呼ばれる2つの理由
「来年もM-1出ます」宣言で広がる夢
結果としてその策はくるまが思う以上に奏功し、トップバッターとして最高得点を記録。むしろトップから爆発的にウケたため、その後のコンビにとって難しくなるという“誤算”も生み出し、最終決戦行きのイスを守り抜いた。その最終決戦で披露したのはかねてより準備していた、車作りに挑戦するクッキー工場の人々の姿を描いたドラマのネタ。 これが1本目以上に“爆発”したことで「2本目に強いネタを残した根性勝ち」と審査員・松本人志の票をつかみ、最終決戦4-3で優勝に至るのだが、くるまは最終決戦1組目として終わった直後「こっちでよかったんだろうな、最初にね」と口にしている。それも今大会に漫才コントで臨んだコンビが少なく、ウケることが計算できたとの分析からだ。 本人たちがどれほどこの青写真をイメージできたかは定かではないが、こうした戦略が優勝を呼び寄せた。彼らのポテンシャルからいずれは優勝するだろうと話す識者は、かまいたちの山内健司を始め多くいたが、結成5年目という早さでそれを達成できたのはいかにM-1グランプリというものと向き合い、緻密な戦略を立ててきたかという証左だろう。 その裏返しとして、くるまが持つふてぶてしさと合わせて「可愛げがない」と評されることもあるが、今後の仕事の爆発的な増加は間違いない。「自分の空気にしてしまうなんとも言えない才能(中川家・礼二)」を持つくるまは世に知れ渡ったが、ケムリは平場のワードセンスも光る優秀なツッコミで、どのような番組であっても即戦力として機能する姿が想像できる。くるまは「来年もM-1出ます」と宣言したが、若さやネタ本数も考えれば十分にその可能性は考慮できるし、もし連覇なって達成してしまったら……と夢さえ膨らむ。 だが、今後も令和ロマンという新たなスターが誕生した大会として、M-1グランプリ2023は記憶に刻まれ続けるはずだ。
まっつ