「Apple Intelligence」の登場で、Appleデバイスの使い方はどう変わる?
この質問に答えるには、まず、以前家族からメールをもらっていた飛行機のスケジュールと空港の場所の情報を把握します。次に、自分のその日のスケジュールを照らし合わせる必要があります。 自分は何時にどこで予定があるのか。自宅なのか、職場なのか、テニスコートなのか。それによって、空港に迎えに行く際の出発地点が変わってきます。経路によっては渋滞があるかもしれません。 また飛行機のスケジュールも、早まったり遅れたりすることは珍しくありません。リアルタイムのフライト情報を参照すべきでしょう。 このように、我々はスマートフォンで、上のような複雑な問題を扱っています。マメな人は予めの分類と事前のリサーチで、そうでない人は場当たり的な検索によって、問題を解決しようとしているのです。 チャット型の生成AIでこの問題を解決しようとすると、さらに面倒ごとは膨らみます。膨大なメールを読み込ませて分析させてフライト情報を探させ、自分のスケジュールも読み込ませて、飛行機のスケジュールをリアルタイム検索から把握させる必要があります。忘れてはならないのは、「誰が自分の家族なのか」すら、チャットで教え込まなければならないのです。 これを、「何時に空港へ家族を迎えに行けば良い?」と聞くだけで解決してくれるようになる。これがApple Intelligenceが実現しようとしている未来像なのです。
■開発者のアイデアが、Apple Intelligenceの実力を引き出す これに留まりません。WWDCは、開発者に対して最新の情報や、Appleが考える技術のユースケースを伝達する場です。つまり、Apple Intelligenceを活用したり、これに情報を提供する役割を、サードパーティーの開発者のアプリが担っていくことになるのです。 画像生成AIのImage Playgroundsは、他のアプリから呼び出すこともできます。また言語処理のWriting Toolsも、標準的なテキストボックスであれば、プログラミングなしで利用可能になります。 あるいは、アプリ内でのユーザーの行動、たとえば本を読んだり、スポーツをしたり、タクシーに乗ったり、という動作(Action)もまた、端末内で利用可能なデータとして蓄積されていきます。 こうして、Apple Intelligenceは、アプリからも情報を集めながら、ユーザーに寄り添うAIとして、成長を始めようとしています。
■ 著者 : 松村太郎 まつむらたろう 1980年生まれのジャーナリスト・著者。慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科修士課程終了後、ジャーナリストとして独立。2011年からはアメリカ・カリフォルニア州バークレーに移住し、サンフランシスコ・シリコンバレーのテクノロジーとライフスタイルを取材。2020年より、iU 情報経営イノベーション専門職大学専任教員。
松村太郎