バルカン楽団、共存共栄願い公演 旧ユーゴ出身者、来日コンサート
1990年代に凄惨な民族紛争が起きた旧ユーゴスラビア出身の演奏家でつくる「バルカン室内管弦楽団」が29日、共存共栄の尊さを伝える「ワールドピースコンサート」を東京都内で開いた。新型コロナウイルス禍を経て、メンバー全員での来日は4年ぶり。 楽団は2007年、長野県出身の指揮者柳沢寿男さん(52)が設立した。これまでにウィーン、ニューヨーク、東京など世界各国の都市でコンサートを開いてきた。 公演では柳沢さんの指揮で、コソボ出身の作曲家バルトン・ベチリ氏が手がけた「スピリット・オブ・トラディション」や、ロシアの作曲家リムスキーコルサコフの交響組曲「シェエラザード」を披露。日本人の演奏家も加わり、豊かなハーモニーを奏でた。 旧ユーゴは解体の過程で内戦が発生、各勢力が激しい戦闘を展開し、多数の犠牲者を出した。楽団にはかつて敵対していた民族の人々が在籍するが、楽団員の一人でコソボ在住のアルバニア人打楽器奏者、パトリス・ベリシャさん(37)は「何年も一緒に演奏し、今は家族のようだ」と語る。