<1勝にかける・カトガク、甲子園へ>番外編 吹奏楽部、苦難の夏 地元からメロディー届ける コンクール中止乗り越え /静岡
阪神甲子園球場で開催されている2020年甲子園高校野球(センバツ)交流試合で、12日に「甲子園初出場初勝利」を収めた加藤学園(沼津市)。野球部だけでなく、吹奏楽部も応援のできるこの日を待ちわびていた。新型コロナウイルスの影響によってアルプススタンドでの演奏がかなわなかったものの、校内でのパブリックビューイングで力強い応援のメロディーを奏でた。 【真夏の熱闘】交流試合の写真特集はこちら 野球部が一度きりの試合で1勝を目指した12日の鹿児島城西(鹿児島県)戦。講堂であったパブリックビューイングの盛り上がりは、八回に杉山尊内野手(3年)がランニング本塁打を放ち、2点を追加したシーンで最高潮に達した。集まった50人ほどの生徒たちが歓声を上げて喜びを分かち合えない中、吹奏楽部がアップテンポの「アルプス1万尺」で会場の盛り上げに一役買った。 今年1月に野球部がセンバツの初出場を決め、吹奏楽部も現地で応援できることになった。特に門脇未奈部長(3年)は強い思い入れがあった。野球が好きな両親の影響で幼いころからテレビで高校野球を観戦。センバツは近隣の高校と合同で応援すると決まり、おそろいのパーカをつくってロゴをデザインした。だが、センバツ、さらに、夏の甲子園が中止になり、「コロナを恨んだ」と言う。 夏の甲子園の中止の発表と前後して、吹奏楽部にとっての「甲子園」にあたる全日本吹奏楽コンクールの中止が決定。「この3年間は何だったのか」と悔しさが込み上げた。再び楽器を手に取ることができた理由は、10月のマーチングバンド大会がビデオ審査形式だが、無事に実施されると決まったからだ。センバツ交流試合の開催が決まり、野球部も新たな目標に向かって走り始めていた。 8月12日の応援は、部員の全員が青いおそろいのTシャツ。114分間の試合中、心を一つにして甲子園にエールを送った。門脇さんは「今しかないこの世代、この仲間たちと1回だけだとしても、野球の応援ができて、うれしかった」と満足げに笑った。コロナ禍で野球の応援が制限される中、その雰囲気を伝えることができてよかったとも思っている。アルプススタンドで演奏する日のために。【深野麟之介】