ASKAが吉田豪に語った「YAH YAH YAH」の歌詞にこめられた真実
「Clubhouse」での秋元康、小室哲哉らとの邂逅
吉田:そんなASKAさんとボクの接点でいうと、‘21年2月に当時流行中の音声SNSアプリ「Clubhouse」で突然、話したという事件がありましたね。 ASKA:あった、あった(笑) 吉田:あのとき放送作家の佐久間宣行さん、秋元康さん、指原莉乃さん、ボクとかが話してたところに、ASKAさんが突然現れた。ボクが「ASKAさんが来てます!」って言ったら、佐久間さんは当時、乃木坂46に所属していた齋藤飛鳥さんと間違えてたみたいなんですけど(笑)。そこでASKAさんにも参加してもらったら、相当カオスに。ネットニュースにもなっちゃった、と。 ASKA:実は、「Clubhouse」自体をよくわかってなくて。あの頃、小室哲哉からも勧められてね。「じゃあ俺もインストールだけしとくよ」って言って。で、どんなもんだろう?ってやってみたら、秋元康が会話しているのが目に止まって、吉田豪ちゃんもいるわけじゃん。参加させてもらったけど、初めてだから参加の仕方が分からず、すごく慌てふためいたのを覚えてるな。あのあと、小室とも「Clubhouse」をやってみたんですよ。5000人以上集まって、即興で歌ったりもしたね。 吉田:あのとき個人的に感慨深かったのは、ASKAさんが秋元康さんとすごいフレンドリーに話していたことです。 ASKA:確かに(笑)。「コノヤロー秋元!」の時期があったからさ。フレンドリーな関係を伝えることができて本当にありがとうね。昔、彼のラジオ番組に出たときに印象が変わったんだ。「秋元康はすごいわ」と受け入れた。向こうはプロデューサーだから、こんなこと僕が言っちゃいけないんだけど、でも彼は物事をよくわかっている。「なるほど。理解しながらあえてやっているのか」って、そのときに認めた。今ではこっちも「あきもっちゃん」って呼ぶようになってね。
YAH YAH YAH「これからそいつを殴りに行こうか」の相手は秋元康だった
吉田:ASKAさんと秋元さんの間に溝ができた発端は、ふたつぐらいあったと思います。最近、古舘伊知郎さんがそのひとつのネタばらしをしていましたね。フジテレビの音楽番組『MJ-MUSIC JOURNAL』(1992-1994年)で構成担当の秋元さんが「チャゲアスは現代の演歌だ」という企画を流したという。 ASKA:あれは僕たちに対してもそうだけど、演歌の方々に対しても失礼だと思ったんだよ。もともとあの番組への出演をOKしたのはフジテレビの偉い方からお願いされて、「番組に穴が開いてしまったから、この穴を埋めるにはいまチャゲアスしかいないんだ!」と言われたから。でも、よくよく考えたらおかしいんだよな。穴が開くってどういうことよって。ああいう番組なら出たい人いくらでもいるわけでしょ。そもそも、穴が開いたっていうこと自体が罠だったんじゃないかって。「秋元コノヤロー」と思うよね(笑)。 吉田:古舘さん曰く、そのときASKAさんが相当怒ってたから、その翌年にリリースされた『YAH YAH YAH』の「傷つけられたら牙をむけ」「これからそいつを殴りに行こうか」という歌詞は秋元さんや番組に向けられたものだった、と。これは本当なんですか? ASKA:ホントホント(笑)。でも、当初はそんなつもりの曲じゃなかったんだよ。『YAH YAH YAH』って言葉とサビだけは決まっていた。全員が手を振り上げているのが見えていて、そこに向かって書き直しているうちにテーマが見えてきた。そこに、ちょうど別件の打ち合わせで来ていた小田和正さんがレコーディング現場にフラッと来て。「言いたいことがしっかりあるのはいいことだな」って言って出てったのね。その楽曲やメッセージの内容がいい悪いじゃなくて、テーマがきちんとあることを小田さんは感じてくれたんだと思う。 吉田:ドラマ(三谷幸喜『振り返れば奴がいる』1993年)の主題歌になるようなポップソングで、なかなかこの歌詞はありえないですからね。 ASKA:ないよね(笑)。 (ASKA×吉田豪 対談1回目/全4回) ASKA CHAGE and ASKAのメンバーとして1979年にシングル「ひとり咲き」でデビュー。約300万枚のセールスを記録した「SAY YES」をはじめ、ヒットナンバーを数多く世の中に送り出す。1988年にアルバム「SCENE」でソロデビュー。1991年にリリースされた3rdシングル「はじまりはいつも雨」がミリオンヒットを記録し、ソロアーティストとしても地位を確立した。2017年には自主レーベル・DADAレーベルを立ち上げ、アルバム「Too many people」「Black&White」を発表。同年10月には配信サイト「Weare」を開設した。23年3月にデイヴィッド・フォスターとのコンサートを開催し、4月から8月にかけて全国ツアーも行った。 【吉田豪】 1970年、東京都出身。プロ書評家、プロインタビュアー、ライター。主な著書に『男気万字固め』(幻冬舎)、『人間コク宝』シリーズ(コアマガジン)、『サブカル・スーパースター鬱伝』(徳間書店)、『書評の正座』(ホーム社)など。
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