「道長に救われた」道兼役玉置玲央インタビュー㊦「光る君へ」人間味あふれる悪役の最期
平安時代、長編小説「源氏物語」を書いた紫式部が主人公のNHK大河ドラマ「光る君へ」。藤原道長(柄本佑)の次兄、道兼を演じたのが玉置玲央だ。5日放送の第18回「岐路」で、道兼は疫病のため、関白になってわずか7日でこの世を去った。衝動を抑えきれない性格と暴力性を抱えていたが、道長に救われてから再起。名作には欠かせない、個性あふれる魅力的な悪役を演じきった。 【グラフィック】大河ドラマ「光る君へ」人物相関図 ■「少しだけ真人間に」 まひろ(後の紫式部、吉高由里子)の母親、ちやは(国仲涼子)を殺害したことを父親の兼家(段田安則)に知られてしまい、一族の繁栄のため、汚れ仕事を背負わされてきた。物語を通して一番変化したのが、道長との関係だ。 いらだちの矛先が道長に向かうこともたびたびあった。ちやは殺害の因縁もあり、度々衝突してきた。だが、兼家から後継指名されなかった道兼を救ったのは、道長だった。「1番信奉していて、かつ柱だったのが父親。自分の中で柱になってた存在がパキっと折れて崩れた。そこを救ってくれた。道長のおかげで少しだけ真人間になれた」 内裏での勤めも放棄し、藤原公任の屋敷で酒に溺れていた道兼を訪ね、道長は兄に語り掛けた。死ぬことすら口にする道兼に対してかけた言葉はどこまでも温かかった。 「兄上にこの世で幸せになっていただきとうございます」「しっかりなさいませ。父上はもうおられないのですから」-。道長の強い言葉とやさしいまなざしに、道兼の心が動いた。 この時のやり取りを振り返り、「避けず逃げず、きちんと今、道兼に必要な言葉を道長がぶつけてくれた。すごいエネルギーのいること。道長の中でも乗り越えなきゃいけないことがいっぱいあったやり取りだと思う。あれで道兼の中での道長への感情がガラッと変わった」と語る。 そこからの道兼は、これまでの凶暴性や衝動性が消えて、人が変わったように道長とともによりよい政治を志すようになった。 平安京に疫病がはやるなか、病人が集まる悲田院へ足を運んだ。道長に、「汚れ仕事はおれの役目だ」と告げた道兼の表情は、どこか吹っ切れたようなすがすがしさがあった。「汚れ仕事」という言葉がこれまでの意味とは違って聞こえた。