名古屋でイラストレーター西淑さん個展 ── きっかけは「カレー屋で展示しませんか?」
名古屋市千種区の古民家カフェ「babooshka(バブーシュカ)CURRY & CAFE」でイラストレーター西淑さんの個展「すいめんとほしかげ」が行われている。期間は8日まで。少女性の中に静謐さと強さを感じさせる独特の世界観が魅力で、雑誌や書籍、ウェブなどでイラストレーションを手がける西淑さん。全国各地で個展を行うが、名古屋でのオリジナル作品による個展は今回が初めてだ。
きっかけの言葉は「カレー屋で展示しませんか?」
馬と木、流れる星、鳥、少女と花の冠、スプーンとフォーク。額の中に並ぶ西淑さんならではのモチーフたちは一様に静かだ。個展のタイトルは「すいめんとほしかげ」。その言葉に込められた意味について西淑さんは語る。「私にとって作品を作ることは、夜の湖に船を浮かべて漕ぎ出すようなこと。水面の中から星の光みたいなものを集める。それがものを作るということでありたい」 そのときに彼女がいる場所は現実ではない。「子どもの頃の空想の世界の延長なんです」と教えてくれた絵の中の世界は、かわいらしくも「私はここにいるのだ」というしんとした決意さえまとっている。 本個展開催のため、彼女にラブコールを贈った「babooshka CURRY & CAFE」店主の杉村かなさんは、もともと西淑さんの作品の大ファン。昨年の秋、大須の「モノコト」(名古屋市中区)で彼女が挿絵を手がけた『Silence book』の出版記念巡回展を観に行った際、そこにいた本人に話しかけたという。 「カレー屋をやっているんですけど、そこで展示をしませんか?」 メルヘンタッチなイラストも人気がある西淑さんだが、「彼女のおさえめでシックな作品が好きだったので、そういうものを描いてほしいとお願いしました」と杉村さん。企画はひとつの熱意から始まった。
個展で常に流れている音楽のヒミツ
個展が開催される中、常に流れている音楽は「water water camel」のものだ。1995年に中学のクラスメイトで結成され、結成20年を迎えようとしている3ピースバンド。現在は出身地である山梨県を拠点にインディペンデントな活動を行い、小学校、植物園、本屋、寺など全国各地のさまざまな場所でライブを重ねている。 穏やかなメロディーに優しい歌声、身近なような懐かしいような切なさを帯びたこのアーティストの作品は、店主の杉村さんがこよなく愛する、「babooshka」ではおなじみのBGMだ。昨年の夏には、好きが高じて店に招き、ライブイベントも開催している。 彼らの4thアルバム『おんなのこがわらう時』のジャケットなどのアートワークを西淑さんが手がけているのを見た時には、幸せな驚きを感じると同時に「この2人と仕事をしたい!」と強く思ったという杉村さん。西淑さんの個展開催に合わせて「water water camel」のライブを行うプロジェクトを進めることは必然だった。