69回目の「終戦の日」どんな日なのか /早稲田塾講師 坂東太郎の時事用語
8月15日は「終戦の日」。今年で69年目となります。この日は政府主催の追悼式典が催されたり、夏の甲子園では正午に合わせて黙とうを捧げたりします。「終戦の日」とは、どんな日なのでしょうか。
●どんな日なのか
日本では8月15日が「終戦の日」と広く認識されています。政府などの機関が正式にこの日を「終戦の日」「終戦記念日」と決めている訳ではありません。あえていえば1982年の「戦没者を追悼し平和を祈念する日とする」という閣議決定でしょうか。 歴史上の1945年8月15日とは「ポツダム宣言の受諾を昭和天皇が録音でラジオを通して国民に知らせた日」です。終戦の詔書とも呼ばれ、当時の主権者である昭和天皇が肉声で「朕」(天皇)を主語にアメリカ、イギリス、中華民国、ソ連に対して宣言を受諾すると通告したと明言しました。世にいう「玉音放送」です。 ポツダム宣言とは、いくつかの条件を飲めば日本に戦争終結の機会を与えるとする連合国主要国の合意文書で1945年7月、アメリカ、イギリス、中華民国の共同宣言として出され、8月9日に対日参戦したソ連が後に加わります。受諾は8月14日に日本側から通知し、天皇の「お言葉」も同日録音。したがって15日のラジオ放送で「受諾すると通告した」と過去形になっているのです。 閣議決定の内容も踏まえれば、8月15日は戦没者を哀悼し、戦争を繰り返さないとの平和の誓いを立てる日となりそうです。
●どんな戦争だったのか
8月15日が日本人にとって「終戦の日」である理由は以上です。では何の戦争の終結かというと議論が分かれています。 (1)15年戦争論 1931年に発生した満州事変で日本軍が中国東北部を実効支配した時点から数える (2)日中戦争開始後 満州事変はタンクー停戦協定が結ばれ連続性がない。1937年からの日中戦争は終戦までずっと続いていて、中華民国はポツダム宣言に名を連ねた連合国だからここから数える (3)太平洋戦争後 1941年12月にアメリカ、イギリスに対して宣戦布告して以降とする。同時期に中華民国も正式に日本へ宣戦布告している。日本側の呼称は大東亜戦争。「第二次世界大戦」は同盟国のドイツが1939年に連合国側と戦闘を開始しており、スタート時期は一致しない 日本人の肌感覚では真珠湾奇襲から始まって、ミッドウェー海戦の敗北、ガタルカナル島撤退、サイパン島陥落、沖縄での地上戦から広島・長崎の原爆投下に至る主に米軍との戦闘が記憶に深く刻まれているので(3)ととらえている人が多いのではないでしょうか。しかし太平洋戦争は日中戦争の手詰まりが大きな動機なので切り離せないという主張も強くあります。結局、今日まで「始まった日」は人それぞれで「先の大戦」というあいまいな概念で報道などもされています。