女優・柚希礼音「あの子がもうトップになるの」宝塚トップスターのプレッシャーと努力の日々回顧
人生で忘れられない新人公演の“主役抜てき”
柚希さんにとって、新人公演は忘れられない重要な舞台だという。周りも柚希さんを主役としてふさわしい俳優にするために奔走した。 「やっぱり新人公演の『王家に捧ぐ歌』で初めて主役をしたときから、意識が変わってきました。先輩方からもいっぱい教えていただきましたし、お客様から見て素晴らしいものを見せないといけないというプレッシャーを感じていました」 これまでのキャリアを振り返っても、「つらかったと感じたことはないですね」と答えた柚希さん。しかし、宝塚時代は歌唱で相当な苦労をしたという。 「研3(注:研究生3年生、入団後3年目)のときに、『エトワール』(注:大階段で歌って、ショーを締めくくる役割)で、4人で歌う演出があったのですが、まだまだレベルには到底達していなく、先輩方が心配して歌の先生を紹介してくださり、公演をしながら毎日必死にレッスンという日々を送っていました」 はたから見れば、厳しいプロの世界だが、柚希さんにとっては困難を克服していくことで自信につながっていった。 「新人のころは次から次へと役をいただいて、また歌う演出があると、なんとかしなければならないと練習し続ける日々でした。本当に、時間が足りないような感じでした。目の前のことに必死でしたね」
「トップはゴールではなく、そこから毎日成長するしかない」と気が付いた
柚希さんにとっての転機は宝塚に入ったこと、新人公演で主役に選ばれたこと、そして2番手になったときも、大きなハードルが立ちはだかったそうだ。 「私が2番手になったときもまだ早い時期だった。トップの安蘭けいさんとの実力差が大きかったので、なんとかしようって頑張りました。周りもみんなで私をなんとかしようとしてくれて、歌も手取り足取り教えてもらった。 私が星組トップになったときも、ほかの組のトップさんと比べるとすごく若く、“あの子がもうトップになるの”みたいな空気も感じましたし、私自身もそこまで覚悟ができていなかったです。だから、最初に思っていたトップさんって、宝塚のなかでは大きなゴールだと思っていたけれど、むしろゴールではなくてそこから毎日、成長をするしかないって覚悟を決めました」 言葉を選びながらも、丁寧に答えてくれる柚希さん。その姿に、こちらも成長しなければという気持ちにさせられた。 柚希礼音(ゆずき・れおん) 大阪府出身。俳優。1999年85期生として宝塚に入団。初舞台後、星組に配属。新人公演や主演を重ね、‘09年に星組トップスターに就任。6年に渡りトップスターを務めた。’15年5月に退団後も、ミュージカルやコンサートなど精力的に活動。第30回松尾芸能新人賞、第65回文化庁芸術祭賞演劇部門新人賞、第37回菊田一夫演劇賞を受賞。退団後の主な出演舞台に『COME FROM AWAY』、『LUPIN~カリオストロ伯爵夫人の秘密~』『マタ・ハリ』など。‘24年8月には、今年で開催5回目を迎える『REON JACK5』の公演を控えている。 池守りぜね
池守りぜね