“アスラン放浪記” 正義感ゆえに所属を移り渡った戦士。映画で所属する「ターミナル」とはどんな組織なのか<Road to 『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』>
「ガンダムSEEDシリーズ」最新作『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』が1月26日(金)より全国劇場にて上映が開始される。昨年11月にはメモリアルイベント「機動戦士ガンダムSEED FESTIVAL~CONNECT あの時代(とき)を超えて~」)が開催されたが、その中でアスラン・ザラ役を演じる石田彰の「ある発言」がファンの間で話題になった。『SEED FREEDOM』のキャラクター相関図でアスランの所属組織が「ターミナル」になっていることに、「(アスランは)流浪の民なんですよ」と、会場の笑いを誘ったのだ。言われてみれば、たしかにアスランはしばしば所属を変えている印象がある。そのさすらいっぷりは当時からファンの間でも話題になっていたが、実際はどうだったのか? “アスラン放浪記”を追憶しながら、映画で所属しているターミナルについても解説したい。 【写真】傷ついたアスランの心を支えたカガリ。劇場版で2人の関係はどうなっているのか ■ザフト→オーブ→三隻同盟へと移った『機動戦士ガンダムSEED』 『機動戦士ガンダムSEED』と続編の『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』、合わせて100話の物語の中、数えてみるとアスランは実に5回も所属陣営を変えている。ガンダムシリーズに限らずこうあちこちに移り変わるメインキャラクターというのは珍しく、石田が冗談混じりに“放浪の民”と例えたのも頷けるというものだ。 そんなアスランの移籍第1ターンとなったのは、敵となった親友キラ・ヤマトを撃墜してしまったことからだ。キラを手にかけてしまった後悔、仕方がなかったという苦しみに号泣するアスランを諌め、共に涙を流してくれたのがオーブのカガリ・ユラ・アスハだった。 「殺されたから殺して…殺したから殺されて…それでほんとに最後は平和になるのかよ!」 アスランの心にも、視聴者の心にも突き刺さったカガリの痛烈な言葉に、アスランは戦争とは何か、自分は本当に正しいことをしているのかと悩むようになっていく。さらにアスランの婚約者であったラクス・クラインから「アスランが信じて戦うものは何ですか?」と問いかけられる。その言葉に激しく揺さぶられたアスランは自分が信じる平和のため、地球連合軍とオーブとの戦いに介入し、窮地にあったオーブを救ってみせるのだった。 厳密にはこの時点ではザフトを抜けたおらず、オーブ軍に加わったわけでもないが、ザフトの正義から心が離れつつあったのは事実。そして、移籍第2ターンはプラントの最高権力者となった父パトリック・ザラが全てのナチュラルを滅ぼす策略を目論んでいることを知ったときだった。これでアスランは完全にザフトとは決別し、ラクスが率いる第3勢力「三隻同盟」へと所属を変えて戦争終結のために尽力する。 『機動戦士ガンダムSEED』で見せるアスランの葛藤は、植えつけられた価値観の脱却という意味で、とても率直で筋が通ったものだったと言える。プラントの高官である父から徹底した英才教育を受けて育ったことを考えると、敵であるキラ、カガリやラクスの言葉に耳を傾け、葛藤の末に自分なりの答えを見つけていく展開はまさに「成長」の証であっただろう。 ■オーブからザフトへ復帰。再びオーブへ戻った『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』 続編『SEED DESTINY』ではザフトを離れ、キラたちとオーブに身を寄せ、カガリのボディガードとして活動していた。しかし、プラントの現最高評議会議長ギルバート・デュランダルから軍への復帰を呼びかけられたことで意識が変化。ナチュラルとの融和政策に共感したアスランはザフトへの復帰を選択する。これが移籍第3ターンだ。 このときのアスランは地球連合軍と戦うことを望んでいたわけではない。あくまで戦争の拡大を食い止めようとする気持ちが強く、自分なりに今できる精一杯のことをやるという決意の表れであった。しかし、結果的にはこの選択が彼をより苦しめ、追い詰めていくことになる。後にして思えば全てデュランダルの思惑通りで、甘言にそそのかされたと言ってもいい。このときばかりはカガリやキラたちに一切の相談をしなかったことも含め短慮だったことは否めず、アスラン自身ものちに「俺は焦ったのかな?」「嫌だったんだ、何もできない自分が」と述懐しているのが何とも心痛いところだ。 しかし、戦争を止めるためにザフトに復帰したものの戦火は広がるばかりで、さらには再び動き出したキラたちとも戦うことになってしまうのは運命のイタズラだった。アスランはキラたちに戦いから引くよう説得するも、デュランダルに疑念を抱く彼らは受け入れず、2人は決裂してしまう。しかし、そのアスラン自身もデュランダルのやり方に不信感を募らせていき、結果、造反の危険ありと排除の対象にされてしまうのだ。 これがアスランの移籍第4ターンとなり、軍を脱走した彼はカガリに救助され、彼女やキラたちがいる部隊と合流する。ここでようやくキラと和解することができたアスランはこれまでの葛藤から吹っ切れ、最終決戦ではシンを行動不能に追い込むなど大きな戦果を上げることになる。 こうして振り返ってみると、明らかに判断を誤ったと見えるのは『SEED DESTINY』でのザフト復帰のみで、それ以外は仕方のない流れだったと思える。アスランは誰よりも真面目で正義感の強い性格なため、状況が変わるたびに「これが本当に最善なのか?」と思い詰めすぎるのも要因の1つかもしれない。ただ、キラ、カガリ、ラクスに対する親愛の情は最後まで一貫しており、決して裏切るつもりで行動しているわけはない。キラたちへの親愛が時に自身の判断を複雑なものにしてしまう傾向があったが、そうした優しさもまた、アスランの大きな魅力なのだと感じている。 ■映画では諜報機関ターミナルに出向中 そんなアスランだが、『SEED FREEDOM』ではオーブ軍に所属しつつもターミナルという組織に出向していることが判明した。このターミナル、映画での新組織に思えるが、実は『SEED DESTINY』の時点でその存在はほのめかされている。例えば、PHASE-24「すれ違う視線」ではフリーカメラマンになっていたミリアリアがターミナルを介してアークエンジェルに電報を送ってきたことが台詞として出てきている。組織の全容は知れないが、オフィシャル設定では世界各国にエージェントが潜む非政府の独立諜報機関ということで、プラント、地球連合とは一線を引いているアークエンジェル、ラクスには協力的なようだ。おそらくそうした関係もあって、アスランはオーブから出向しているのだろう。 ただ、気になるのはターミナルは諜報機関ということ。アスランはターミナルの任務で何を調べているのか。第2弾PVでも何かを監視しているようなシーンが映っているが…。まさかとは思うが、これがきっかけでターミナルからまた所属が移る、なんていうことも考えられないわけではない。“アスラン放浪記”の行く末ははたしてどこに向かうのだろうか。