「事件医療チーム」始動 現場で待機、負傷者救命へ 茨城県警・水戸医療センター
茨城県警は7月、凶器を使った人質立てこもり事件などの現場で負傷者の高度救急救命に当たる「事件現場医療派遣チーム(IMAT)」の運用を始めた。協定を結んだ国立病院機構水戸医療センターが迅速で専門的な治療を提供し、救命率向上や後遺症軽減を図る。 IMATは、刃物や銃器、爆発物などの凶器を使った立てこもりのほか、航空機やバス、船舶の乗っ取りなどの事件現場で、容疑者確保時に被害者や警察官が負傷する恐れがある場合、警察からの要請で派遣される医療チーム。災害時に派遣される医療チーム(DMAT)の事件版に当たる。 県警が県内医療機関とIMATに関する協定を結ぶのは初めて。全国では東京や愛知、千葉など13都道府県で運用が始まっている。 協定によると、県警から派遣要請されたIMATは病院から駆け付け、現場から離れた安全なエリアで待機。負傷者が発生した場合は警察がけが人などを同エリアまで運び、IMATは救急搬送までの応急治療に当たる。これまでは救急隊(救急救命士)が待機して応急処置に当たっていたが、できる救命措置が限られていた。 同センターは2010年7月からドクターヘリの基地病院となり、県のDMATでも活動。IMATでは外科医と看護師、調整員の計3人構成のチームを4班組織する。 実際の活動では限られた資機材で検査や治療をする判断能力などが求められるとみられ、ドクターヘリ・災害担当の石上耕司医長(43)は「事件現場での治療は院内とは環境が違う特殊な状況。これまでに培った現場経験を生かしたい」と話した。 県警によると、刃物や銃器が使われた外傷死の大半は出血によるもの。石上医長は「いかに出血を防ぐ処置をできるかが救命の鍵。高度な止血処置ができるのはわれわれの強みでもある」とIMAT設立の意義を強調した。 警察庁は近年、各県警にIMAT導入を呼びかけており、県警内部でも設置をを求める声が高まっていた。県警は昨年6月以降、県内医療機関に協定締結を打診。承諾した同センターと運用開始に向け準備を進めていた。 県警と同センターは、訓練などを通して連携強化を図り、制圧後に容疑者を治療するまでの流れなどを確認する。県警は県内各地の事件に対応するため、他の医療機関とも協定を結びたい考えだ。
茨城新聞社