ヘアケア化粧品の細分化進む 「ニッチトップ」獲得競争の波
ヘアケア化粧品市場が熱を帯びている。コロナ禍のおこもり美容ニーズを受け、髪や頭皮の健康を意識する層が増えたことで、1000円を超える中高価格帯シャンプーがブームとなったのは記憶に新しい。今ではDgSストア店頭でも中高価格帯シャンプーが大きく棚を取り、大手ヘアケアメーカーも市場に参入、PB品にまで波及している。処方やアプリケーションのバリエーションも拡大している。最近では、髪専用パックや頭皮美容液など、様々なアイテムが登場。ヘアケア製品の細分化が進んでいる。 本紙が毎年6月・12月に化粧品受託メーカーを対象に実施している取材・調査(有効回答120社以上)でここ数年、人気受注アイテムのトップは、ヘアケア化粧品となっている。本調査でヘアケア化粧品に分類している製品は、シャンプー、リンス、トリートメント、コンディショナー、育毛剤がメイン。 シャンプーだけを見ても、アミノ酸系、ノンシリコン処方、オーガニック系など、様々な潮流が見られる。特に近年は、ヘアカラーを楽しむ人が増える一方、髪のダメージに悩む人も増えており、トリートメントやコンディショナーだけでなく、シャンプーにまでダメージケアを求める傾向にあるようだ。 また、SDGsが世界的潮流となる中、シャンプーボトルや水の使用量を低減する点を売りにしたシャンプーバーや、ノンケミカルを訴求するオーガニック系シャンプーの人気も高まっている。 このほか、若い女性の中には何日も風呂に入らない層が一定数いるといい、水を必要としないスプレータイプやシートタイプのドライシャンプーの需要も高まっているという。実際、SNSでは「風呂キャンセル界隈」というワードがトレンド入り。ある受託メーカーの担当者は、「美容室からドライシャンプーのオーダーが増えている」とのこと。 消費者の多様化するニーズに合わせ、販売メーカーサイドでも様々なアイテムを開発し、提案している。化粧品受託メーカーへの調査からも、最近は髪専用のパック、頭皮用の美容液、アホ毛ケア製品――などの回答が増えてきており、ヘアケア製品の細分化が進んでいる傾向が見られる。また、剤型も液体、泡、ゲル、クリーム、固形、バームなど、バリエーションが広がっていることがうかがえる。 経産省の生産動態統計によると、2023年の国内のヘアケア化粧品の国内出荷金額は約3641億円、医薬部外品の承認を得ている薬用育毛剤および薬用シャンプー、リンスの国内生産金額は約2475億円と、ヘアケア化粧品は一大市場を形成している。とはいえ、減少する国内人口を背景に、今後国内でヘアケア化粧品市場の爆発的な拡大は期待できない。 こうした中、国内産業の多くがニッチ市場の創出と、ニッチトップを獲得する動きを加速させるのに合わせて、化粧品市場でもスキンケアやメイクアップ製品に続き、ヘアケア製品にまで、その波が押し寄せていることがうかがえる。