県議へ“異様”な追跡…公務と政務「混同」指摘も<検証集中審査 長崎・大石知事政治資金問題㊦>
長崎県の大石賢吾知事の政治資金問題が浮上したきっかけは、6月24日に田中愛国県議が登壇した県議会一般質問だった。その2日前の22日夜、大石氏と後援会の元監査人は田中氏の周辺で“異様”な行動をしていた。県議会総務委員会の集中審査で、元監査人の証言から明らかになった。 佐世保市で開かれた祝賀会に参加した大石氏は、出席していた田中氏の動向を会場外で待機する元監査人にメールで逐一報告した。田中氏が帰るのを見計らい、元監査人は「自宅に向かいます」と返信。午後8時半過ぎにアポなしで田中氏の家を訪れ約2時間話し込んだ。 集中審査で元監査人は「知事から(田中氏と)話をしてほしいと言われて行った」と証言。委員は「質問を止めようとしたのでは」と疑い、田中氏を参考人招致した。田中氏は元監査人から「質問をやめろとは言われていない」としながらも、大石氏の存在を示唆する発言があり「脅された感覚がある」と憤った。 一方、大石氏は元監査人から「(田中氏に)説明に行くと申し出があった」と述べ、自らの指示を否定した。圧力をかける意図はなく、元監査人を「止めなかったことは反省すべきこと」と述べた。 一般質問後の6月28日、大石氏は承認なく後援会から「多額の出金」がされたと公表。元監査人に疑いの目を向けて関係を切った。 反発した元監査人は、大石氏を名誉毀損(きそん)容疑などで告訴・告発したと発表。集中審査で大石氏とやりとりしたとするメールやLINE(ライン)などの資料を提出した。この中に県職員が事前に田中氏から質問の趣旨を聞き取った内部文書が含まれており、委員から「第三者への情報漏えいではないか」と指摘された。 大石氏の政治姿勢を巡っては、公務と政務の「混同」を指摘される事実も続々と表面化した。 集中審査では、県職員に後援会文書の押印を代行させたことを確認。また、大石氏は知事選で日本維新の会の推薦を受けており、2023年の党県総支部定期大会に寄せたビデオメッセージの作成に県職員を関与させた。これについて、参考人の元県秘書課長は「公党へのメッセージ。公務で対応した」「(公務と政務の)線引きが難しい」と釈明した。 このほか、県が県建設業協会の陳情を受けて公共工事の最低制限価格を引き上げた後、同協会長に大石氏の後援会は会員集めを依頼しており「見返りを求めたのではないか」と疑念を向けられている。参考人の同協会長は大石氏から直接の依頼はないが、大石氏に近い県議から「(依頼は)あった」と発言。大石氏は「見返りとしてお願いしていない」と主張した。 計4日間の集中審査では「政治とカネ」の疑惑のほか、政治姿勢も問われ、大石氏と参考人との証言には複数の矛盾点が生じた。元監査人が提供したメールやラインなどが「証拠」となっており、その信ぴょう性も焦点だが、大石氏は真偽を明確に答弁していない。総務委は11日に審査を総括する。こうした点をどう判断するのかが注目される。