取り調べで「ガキ」検察官発言は違法、黙秘権問う訴訟で国に賠償命令、判決は「第一歩」
●判決の「マイナス」の側面と「録音録画の大きな効果」
一方で、黙秘の意思を表明しているのに、取り調べが56時間も続けられたことは違法と判断されなかった。 宮村啓太弁護士は「黙秘権が保障する権利主体である被疑者の黙秘権行使の意思は尊重されなければならない」と指摘した。 今回の裁判で特徴的だったのは、取り調べの様子が法廷で上映されたことだった。 弁護団の髙野傑弁護士は「録音録画制度は、違法な取り調べの問題を検証するための制度。今後も同じような事態になったときに、国賠訴訟の中で録音録画が頻繁に使われるんじゃないか」と話す。 裁判では、取り調べにおける検察官の発言がいくつも事実認定された。 「今までは、警察、検察の発言を違法だとすると、まずはそもそもそんな発言がされたのかというところから問題になっていた。今回そうではなかったのは、法廷でも映像が再生された効果に間違いないと思います」(髙野傑弁護士) しかし、そうした録音録画の映像が裁判の中で証拠として採用されるには、長い時間が費やされ、煩雑な手続きが求められるとして、時間短縮や手続きの簡略化が必要だと訴えた。 今回、YouTubeで公開された映像は、取り調べの様子を可視化するものとしてだけでなく、その取り調べのひどさも伝えて、大きな反響を呼んだ。 趙弁護士は「あらゆる事件において取り調べを録音録画するべき」としつつも、国側が裁判の中で「多少声を荒げたかもしれないが適法だ」と主張したことを踏まえて、「カメラがあるから違法な取り調べがなくなるかというとそうではない」とし、取り調べを受けたくないという意向を示した場合には尊重されなければならいとの考えを強調した。