「冷凍おばさん」など賛否、母・赤堀千恵美の大奮闘と家庭料理の変化 「母のようなキャラはない」自分らしさを模索した6代目校長
【フードコーディネーター・赤堀博美のおいしい秘密】 「赤堀料理学園」(東京都文京区)の6代目校長でフードコーディネーターの赤堀博美の母で5代目校長、千恵美の奮闘ぶりはめざましかった。 共働きが増えた1970年代、「短時間でおいしく作れる料理」の需要が高まり、家庭料理は「簡単でおいしい」が大前提になった。なので、食品の冷凍術やレンジ調理に早くから取り組んでいた5代目は大忙しに。 「『冷凍おばさん』って言われたわよ。レンジでチンは便利で役立つと喜ぶ人もいれば、手抜きだとか、体に悪いのでは…とか賛否両論だった。『うちの子供たちもこうして食べて、毎日元気に学校に通っております』と話したものよ」と生前、取材で語っていた。 新鮮な食材で調理してその日のうちに食べる…は学園のポリシーだが、保存期間を守れば冷凍食材もおいしく食べられる。老舗だからこそ、新しい情報をいち早く発信しなければと判断した。 NHK「きょうの料理」で、フライパン一つでできる料理、缶詰を使った料理、作り置きできるおやつなども発表。時流に合った料理は大ブレークした。280のアイデア満載の料理本『秘密の保存食』は1年で20万部を売るベストセラーに。 料理界を牽引するゴッドマザーの活躍を目の当たりにしながらも、赤堀は「母の後を追う気持ちはなかったです」。ずっと別の道を模索し、好きな歴史の勉強をしたいと考えていた。 高校3年のとき、「食文化史」の先生から「明治の料理本に『赤堀割烹教場』とあるけど、君の家と関係あるの?」と聞かれたことがあった。 「うちですと学園の教科書を見せたらびっくりされて。進路希望を聞かれ、大学で『食文化史』を学びたいと答えたら『まず料理を学びなさい。食物学科に入れば、食文化史は勉強できる』とおっしゃる」 結局進んだのは、日本女子大学家政学部の食物学科だった。一方で学園で助手を始めると、代理店の人から「この先、どんなキャラクターで売っていくの?」という声が。 「母のようなキャラは私にはない。エビデンスを生かす研究職に興味を抱いて大学院へ進みました。でも、学園で数値やデータを盛り込んで講義したら、主婦の生徒さんに『そんなことを考えて毎日調理していない』と言われて…」