小児性加害者から親権を剥奪する法案、英議会に提出

イギリスでこのほど、重大な性犯罪で有罪となった小児性加害者から親権を剥奪（はくだつ）する法改正案が、議会に提出された。 BBCは昨年11月、小児性加害者の元夫を娘に会わせないようにするため、弁護士費用などで3万ポンド（約580万円）を支払った女性について報じた。 このニュースの後、最大野党・労働党のハリエット・ハーマン議員が、法改正案を提出した。 改正案は、13歳未満の子供に対する強制性交など、もっとも重大な性犯罪に適用される。 ハーマン議員はBBCニュースの取材に対し、法案が可決された場合、こうした罪を犯した小児性加害者からは、親権が「自動的に剥奪」されることになると説明した。 「小児性加害者は家庭裁判所に行き、親権を回復することが子供のためになると説得できた場合にのみ、親権を取り戻すことができる」 「子供に対する強制性交罪を犯した人物は、その可能性は低い」 BBCの取材では、大法官はこの改正に合意している。大法官は裁判所、刑務所、保護観察、憲法問題の責任者。 ハーマン議員は、「法律が性犯罪者から他人の子供を守る一方で、性犯罪者自身の子供を守らないというのは明らかに異常だ」と指摘。イギリスの現行法では、たとえ親が小児性加害で有罪判決を受けたとしても、子供に対する親の権利を保護する「除外規定」があるという。 「これは明らかに間違っている。最優先されるべきは子どもの権利であり、父親の権利ではない」と、ハーマン議員は述べた。 ■ベサンさんのケース BBCは昨年11月、英カーディフ在住のベサンさん（仮名）の経験を報じた。 ベサンさんの元夫は、他人の子供に対する性加害で有罪判決を受け、現在服役している。判決が言い渡されたとき、元夫には今後一切子供との接触を禁止する命令も出された。しかしこの禁止令には、元夫自身の子供は含まれていなかった。 元夫とベサンさんは、娘が生まれたときに結婚していた。そのため、元夫は親権を保持しており、少なくとも子供の健康、教育、生活環境について口を出すことができた。 昨年11月、カーディフ家庭裁判所はベサンさんに有利な判決を出し、父親の権利を制限した。父親が娘と接触することは、娘が18歳になるまで禁止された。 ベサンさんは元夫の裁判に出廷していなかったため、審理の記録を手に入れるまで、元夫が何をしたのか正確には知らなかった。ベサンさんは、自分が経験したようなことを他の親が経験しなくて済むことに安堵（あんど）していると語った。 「すべての母親が裁判所を通して事件を追跡する時間を持っているわけではないので」 ベサンさんのケースは比較的、わかりやすく進んだが、それでも弁護士費用に3万ポンドかかった。ベサンさんの両親は、住宅ローンを延長して訴訟資金を援助した。 ■「家父長制の名残り」 労働党の副党首を務めたことがあるハーマン議員は、BBCのラジオ番組でベサンさんの話を聞いた後、この改正案を提案したと語った。 ハーマン議員は、この話が、有罪判決を受けた小児性加害者の親権をそのままにし、ベサンさんのような女性が子供を守るために、しばしば長く費用のかかる法廷闘争を強いられるという「目に余る異常」を浮き彫りにしたと述べた。 また、これは「家父長制の名残りの一部」だと表現した。 ハーマン議員は、裁判所と法律は「母親に任せる」のではなく、「子どもを守るために一歩踏み出す」べきだと述べた。 新たな法案は、ベサンさんのような親が、子どもの安全を確保するために何千ドルもの弁護士費用を支払う必要がなくなることを意味する。 子どもたちは、親が刑事裁判で有罪判決を受けた瞬間から保護されることになる。ベサンさんはBBCに対し、「これはとてつもない勝利」だと語った。 「生活費の危機の中で、人々は子どもたちに衣食住を与えるのに苦労している。裁判に出廷する余裕なんてあるのか？　　自分の子供を守るために値踏みされるなんて、そんなこと想像できるだろうか」 ベサンさんと両親は、自分たちの経験が、家庭裁判所での手続きを報道することの価値を示していると信じている。 ベサンさんのケースは、家庭裁判所をめぐる透明性試験の一環で報道が許可され、ジャーナリストは初めて有意義な方法で家庭裁判所について報道できるようになった。この試験は現在、イングランドとウェールズのほぼ半分の家庭裁判所にまで拡大されている。 （英語記事　Paedophiles could be stripped of parental rights under new law/‘I paid ￡30k to protect my child from her paedophile dad’）