島津亜矢「気持ちいい、というのが一番です」 アレサ・フランクリンのカバー曲で世界デビュー
聴く者の心を一瞬で掴み、感情を揺さぶり、いつまでも聴いていたいと思わせる、島津亜矢さんの歌。オリジナル曲はもちろん、さまざまなアーティストの楽曲の見事なカバーでもおなじみ。「歌怪獣」という愛称で呼ばれるなど、いま日本で一番歌が上手いといっても過言ではない彼女が、今年3月、「クイーン・オブ・ソウル」と名高いアレサ・フランクリンのカバー曲で世界デビューを果たした。 ――世界進出、おめでとうございます! 島津亜矢さん (以下、島津) :本当に恐れ多い感じがするんですけれど。でも、50歳を過ぎているのにこうした新しい、大きなことにチャレンジをするチャンスをいただいて。本当に今の環境と周りの方に感謝をしています。 ――7月24日にアルバムも発売されます。アレサ・フランクリンの楽曲との出合いを教えてください。 島津:10年くらい前、デビューの時からお世話になっているレコーディングのエンジニアさんに、「アレサ・フランクリンの歌、絶対に合うと思うから聴いてみて」と言われ、忘れないよう携帯のリマインダーにメモしておいたんです。それをきっかけに、アレサさんを題材にした映画『リスペクト』を観たんですけど、その数か月後に今回のお話をいただいて。何かご縁があるのかなと思いました。過去の映像を見ると、可愛らしい声も、ぶっとくて腹の底に響くような声もお出しになるし、ゴスペルの方とセッションする時の魂の叫びとか、本当にすごいなぁと。だからこそ、どんどんプレッシャーになって、途中で見るのをやめたくらいです (笑) 。 ――歌ってみていかがでしたか? 島津:気持ちいい、というのが一番です。体の中から常に感情が湧き出てくるような感じでした。私、基本的にレコーディングに時間をかけたくないタイプで、10何曲を2日とかで仕上げていたんですけど、今回に関しては、1曲覚えるのに気が遠くなるような時間をかけた、そんな日々でした (笑) 。英語もまったくできないですし。 ――信じられません…! 島津:英語の歌詞を一度カタカナに直した上で、ご本人の歌を聴きながら微調整をしていきます。“昨日はこう聞こえたけど、今日は違うふうに聞こえる”という作業を何度も繰り返しました。しかも、普段使い慣れていない言葉にリズムとメロディがついているので本当に大変で。テンポが速い歌は何度聴いても口が動かず、本当に一言ずつ何十回も練習して、口と頭に覚えさせていきました。以前、YOASOBIさんの歌に挑戦した時も、言葉がたくさん詰まっていて、どこで息継ぎをしているんだろうと思ったけど、英詞はそれとも違うんです。常にアレサさんの歌のことが頭にあるので、夜中に目が覚めた時も頭の中で「Freedom~。」って流れてきました。大変でしたけど、体の中に行き届くほどの達成感を味わわせてもらったのは初めてだったので、本当に財産です。 ――歌とストイックに向き合われているんですね。 島津:母が「同じ人間にできて、あんたにできないわけがない」という育て方の人だからだと思います (笑) 。私が小さい頃から演歌を聴かせ、おかげで物心がついた頃には演歌が染み付いていたし、北島三郎さんが大好きだったんですけど、他にもいろいろなジャンルの歌を聴く人で。車に乗ると西城秀樹さんや井上陽水さん、越路吹雪さんなどいろいろな方の歌が流れていましたね。歌番組で流れていた曲をメモして、私に「この曲がいいから。絶対、あんたに合うと思うから」と言って歌わせもするんですけど、勧める歌のほとんどが難しい。たとえば歌謡浪曲は、何十分もあるし、聴いたことのない言葉や節回しが出てくるので「できない」と言うと、「同じ人間ができているんだから、できる」と。自分で歌ってみなさいよと思いますけどね (笑) 。でも、できないことが悔しくて、結局、頑張ってしまう。私の性格をわかっていたんでしょうね。母への“クソ! ”という思いで、一つ一つ乗り越えてきた感じがします (笑) 。 ――歌う時、マイクの位置がかなり遠くにあるように見えます。 島津:自分の地声をしっかり聴いて、声の厚みや透明感などを感覚的に調整しながら歌いたいからです。近づけすぎると、マイクから出る声しか聞こえないので。イヤモニも、耳を塞ぐと今出している声が聞こえないから苦手なんです。 アレサ・フランクリンの名曲を歌い上げたカバーアルバム『AYA’s Soul Searchin’‐Aretha Franklin‐』を7月24日にリリース。音楽番組での圧巻のパフォーマンスがSNSで話題となった「Think」をはじめ、「Respect」「A Natural Woman」、唯一の日本語詞オリジナル曲「いつでもふたり」など全9曲を収録。¥3,300 (ワーナーミュージック アトランティク・ジャパン) しまづ・あや 1971年3月28日生まれ、熊本県出身。’86年に『袴をはいた渡り鳥』でデビュー。演歌の道を歩みながら、第69回NHK紅白歌合戦で歌った「時代」をはじめ、テレビの歌番組などで披露するカバー曲の歌唱も大きな話題となっている。最新シングル『おてんとさま』が発売中。YouTubeチャンネル「歌怪獣チャンネル」も人気。 ※『anan』2024年7月17日号より。写真・内山めぐみ ヘア&メイク・猪狩友介 (Three PEACE) インタビュー、文・重信 綾 (by anan編集部) あわせて読みたいanannewsEntame IS:SUE「この4人でいるからこそ、それぞれの個性がより際立つように感…2024.7.3anannewsEntame パフォーマンスと内面のギャップにハマる人続出中! ? 実力派4人組IS:S…2024.7.3anannewsEntame 折坂悠太「これまでで一番自分自身が出たアルバムになった」 約3年ぶりの4…2024.7.2anannewsEntame デビュー9年目、藤原さくら「今でも一番好きなアーティストはポール・マッカ…2024.4.6anannewsEntame 福地桃子「自分が千尋として参加していることが不思議」 『千と千尋の神隠し…2024.3.30