「値上げ地獄の夏」が庶民を襲う…物価も金利も上がるのに実質賃金だけが上がらない日本人の不幸
■国民は急な政策に対応できるのか 懸念されるのは、社会と経済体制の変化に、国民がしっかりと対応できるか否かだ。楽観はできない。5月の実質賃金の確報値は前年同月比1.2%減だった。春闘での賃上げがあったものの、食料品などと同じか、それを上回る賃金上昇を、持続的に実現することは容易ではない。 人材流出の阻止に、やむなく賃上げする中小企業も多い。実質賃金の上昇が難しい中で金利が上昇すると、株価は調整し、個人消費の停滞懸念も高まるだろう。 フランスでは物価の上昇、景気停滞などへの不満から、極左、極右の政党へと支持が移っている。それは、わが国にとって他人事ではない。物価上昇と金利上昇で、消費者心理は悪化するだろう。景気停滞懸念も高まる。そうしたリスクを抑えるために、わが国には経済の実力である潜在成長率を引き上げることを再優先の課題と考えるべきだ。 ---------- 真壁 昭夫(まかべ・あきお) 多摩大学特別招聘教授 1953年神奈川県生まれ。一橋大学商学部卒業後、第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。ロンドン大学経営学部大学院卒業後、メリル・リンチ社ニューヨーク本社出向。みずほ総研主席研究員、信州大学経済学部教授、法政大学院教授などを経て、2022年から現職。 ----------
多摩大学特別招聘教授 真壁 昭夫