空き家を無償解体、米沢市と民間業者が協定 危険性の除去、スペースを有効活用
米沢市は所有者不在の空き家を年度ごとに1軒ずつ解体し、危険性の除去や空きスペースの有効活用を図ることを決めた。所有者がおらず適切な管理がされていない空き家に対し、行政側が清算手続きできる昨年12月施行の改正空き家対策特別措置法などを活用する。1軒当たり数百万円とされる解体を市内の業者が社会貢献事業として無償で担うと提案があり、連携協定を締結した。県建築住宅課は「民間の善意による先進的な取り組み」と話す。 同特措法では、危険な空き家の除却を円滑に進めることを目的に、市区町村長に財産管理人の選任請求権が付与された。行政側は建物や土地の登記簿、固定資産台帳、住民票の確認などを通じて所有者や管理者がいない物件に対し、裁判所に財産管理人選任を申し立て、清算手続きすることができるようになった。 一方で、解体費用は公費負担となるケースがあるほか、裁判所への手続きにも費用が発生するため「選任請求権は認められたものの、積極的に適用していくにはハードルがある」(同市建築住宅課)との見方があった。同市によると、「倒壊の恐れがある」との判断でこれまで、略式代執行で空き家と空き倉庫の計2件を解体したが、その際は400万~600万円程度の費用負担が生じた。
市内には所有者・管理者不在の空き家が約70件あり、今後も増加が見込まれる。倒壊防止のため、市が雪下ろしや補修をする必要もあり、毎年数十万円から約700万円の財政負担が発生している。 特措法活用、年度ごとに1軒 こうした状況に、市内で解体・産業廃棄物処理などを手がける横山興業(横山直人代表取締役)が市に対し、年度ごとに1軒、解体を無償で引き受けると提案。市は11月19日に同社と連携協定を締結した。横山代表取締役は「業界の社会的役割を発信することにもつながると考えた」と語った。 協定では、略式代執行に至らない物件のうち、生活環境や景観への影響、解体後の土地利用が見込めるか―などを両者で協議する。市が弁護士や司法書士などを相続財産清算人などとして申し立て、選任された担当者が管理や売却手続きなどを行う。解体するだけでなく、土地売却した場合、手続き費用や市が負担してきた応急措置の経費に回すことも検討する。
市担当者は「積極的な空き家対策が可能となる。行政コストを減らしたりするだけでなく、更地にすることで土地という財産の有効活用にもつなげたい」とした。