<リオ五輪>日本は4年後に女子マラソンの高速化に対応できるのか?
マラソンだけでなく、女子1万mでも日本勢は完敗している。レースは5000mの日本記録(14分53秒22/福士加代子)を大きく上回る14分40秒で、中間点を通過する。アヤナ(エチオピア)が5200m付近で抜け出すと、29分17秒45の世界新記録で優勝。90年代に女子中距離界を席巻した中国・馬軍団の王軍霞が、93年に打ち立てた世界記録を一気に14秒も塗り替えた。 日本勢は高島由香(資生堂)が31分36秒44の18位、関根花観(日本郵政グループ)が31分44秒44の20位。ふたりともアヤナに2周差近い大差をつけられている。日本勢は「入賞」の期待もあったが、世界の圧倒的なスピードの前にひれ伏すしかなかった。ちなみに優勝したアヤナは24歳で、リオ五輪がキャリア2回目の1万mだった。 1万mとマラソンは関連性のある種目で、1万mでキャリアを積んでから、マラソンに本格参戦する選手は多い。アフリカ勢の圧倒的なスピードを考えると、トラックでの勝負が難しいと、今後は「マラソン」に照準を絞る選手が増えることも予想される。そしてマラソンはさらに高速化が進むことなるだろう。 そんな状況のなか、4年後の東京五輪で日本の女子マラソンは活躍できるのか。 年齢的なことを考えると、リオ五輪の女子マラソンに出場した28歳の田中、同女子1万mに出場した20歳の関根、同5000mに出場する24歳の鈴木亜由子(日本郵政グループ)、2時間22分48秒のタイムを持つ24歳の前田彩里(ダイハツ)、2時間23分20秒のタイムを持つ27歳の小原怜(天満屋)など、4年後が楽しみな選手は多い。 しかし、あくまでも日本レベルで考えた場合の有力選手だ。世界との差をまざまざ見せつけられた今、日本女子マラソン界の目線を上げる必要がある。過去の日本勢と比較するのではなく、世界トップクラスとの差を常に意識しなければいけない。 メダルを狙うには、冬マラソンで2時間20分切りの走力は必要不可欠だ。そのためには1万mで30分台のスピードをつけなければ難しい。さらに、4年後の東京ではリオ以上に、高温多湿なコンディションでレースが行われることになる。走力だけでなく、夏の東京で戦えるランナーを選ぶこともポイントになるだろう。毎回、物議を醸しだす五輪選考方法を含めて、4年後の“歓喜”に向けて日本女子マラソン界の課題は山積みだ。 (文責・酒井政人/スポーツライター)