7年ぶりの挑戦 第1部 大分/下 「日誌」が養った自主性 /大分
「九州大会11打数ノーヒット」。6番打者、飯塚和茂選手(2年)の「日誌」には大きな字で、こう書かれている。昨秋の九州地区大会で11打席に立ち、一度もヒットを打てなかった悔しさを忘れないためだ。 朝7時半。選手らはグラウンドに集合すると、それぞれ1冊のA4判ノートを広瀬茂部長に提出した。ノートには、起床から就寝までの1日のスケジュール、練習メニュー、その日や1カ月後の目標などがびっしりと書かれている。1日が終わると、どれだけできたか達成状況も記入する。自分の課題や目標を言葉にし、評価させることで自主性を持たせる取り組みだ。 日誌を書くのは就寝前。毎晩、1時間以上かけて書く。多くの部員は「ノートを付けるなんて面倒だ」と最初はいやいやだ。しかし、書いているうちに自分の力や状態を分析できるようになるという。高校から始めた飯塚選手の日誌は既に12冊目。「自分の調子が良かった時と悪かった時のノートを見比べて、練習内容を作る参考にしている」と話す。 エースの長尾凌我選手(同)は、ブルペンでの自分の調子や練習の記録をよく見返す。ブルペンで何割、狙ったところに投げられたか。球速は--。「制球力はよくなった。今の課題はスピードだ」と考え、ノートには「目指せ150キロ」と書いた。日誌の効果を実感し、高1の夏には書くことが苦にならなくなったという。 部員たちは日誌以外にも長期(1年)、中期(3カ月)の目標シートを書く。日誌を提案した広瀬部長は「1年後、3カ月後、明日の自分がどうありたいかをイメージすることで練習が効果的になる」と語る。 ◇ ◇ 「打球が捕りにくい」。昨年10月の真颯館(北九州市)との練習試合。相手打線の鋭い打球に衝撃を受けた。2試合行い、12失点と10失点。「強豪校と打力がここまで違うとは」。試合後、4番・中尾拓士選手(2年)は相手選手や監督に頭を下げた。「どういう練習をしたら、こういう打球になるのですか。教えてください」 同11月。バットを持ちながら手首を八の字に動かす練習が始まった。選手たちが真颯館の練習方法を直訴して採用された。手首を強くし、打球に回転がかかりやすくするのが狙いだ。「打球のバウンドが鋭くなった」(中尾選手)と手応えを感じている。 「選手が自分で考え、練習方法や方針を提案してくることが強みだ」と松尾篤監督は話す。日誌が野球との向き合い方を変え、選手自身の力で成長してきた大分。「自分たちの野球」を見せる大舞台はもうすぐだ。=第1部おわり