佐久間由衣×長井短インタビュー「プレゼントを贈る喜び、もらう喜び」
ギフトとは贈る相手について想像をめぐらせること、贈り主のことを思い出すこと。3組の俳優に“ギフト”をテーマに話を聞くと、二人の関係性が見えてきた。第三弾は、舞台『ヴェニスの商人』で初共演となった佐久間由衣と長井短にインタビュー。 【撮り下ろし写真】佐久間由衣×長井短 ──舞台『ヴェニスの商人』で初共演されますが、役者としてどんな印象をお互いに抱いていますか。 長井「私には持てない真っすぐさというか、人が応援したくなる魅力を持っていて、すごく素敵だなと思いながらいつも見ています」 佐久間「私は実際にお会いしても、本当に唯一無二の存在感を放っているという印象を受けました。きっとお芝居に対しても日常でも自分らしく自然体で過ごされているからこそ、演じる役としての魅力やオリジナリティが出ているのだろうなって」 長井「照れますね(笑)」 ──これまでに「これは人生におけるギフトだ」と感じられた作品や人との出会いはありますか。 長井「今回の『ヴェニスの商人』に出演するにあたって、20代に頑張ったからシェイクスピア作品をやっとやらせてもらえるんだろうなって感じていますね」 佐久間「私は初めて舞台をやらせてもらったときに、私自身が『もう舞台に呼ばれることはないだろうな』と思っていたんですよ。『私の舞台人生は終わったのかな』って思うくらい自信をなくしたのですが、今回また舞台のお話をいただけて『やっぱりもうちょっと頑張ってみたい』って背中を押してもらった感じがして。前回と今回の舞台は全く別のものなので、もう一度気持ちを新たに舞台に挑戦させてもらえる機会を与えてもらったということはギフトかなって感じています」 ──佐久間さんが演じる貴婦人のポーシャと、長井さんが演じる侍女のネリッサは、単なる主従関係以上のつながりで結ばれているようにも原作を読んで感じました。 佐久間「ややこしい遺言とともに父を亡くしたポーシャにとって、ネリッサが唯一の理解者なのかなと私は思っていて。二人で男性の話をするのも今でいうガールズトークでしょうし、時代背景や文化は違えど、そういった関係性を想像するとすごく絆を感じたり、親近感が湧きます」 長井「本人同士は自分たちが特別に親しいとか、他の同じ関係性の人たちと違うとはそこまで思っていないのかなって私は感じて。ごく当たり前のように一緒にいるからすごくしゃべるけど、それがはたから見たらとても仲が良いように見えるみたいな。そういう雰囲気を演じるなかで自然と作れたら面白いかなと思っていますね」 ──シスターフッドともいえる二人の結託感も痛快さを感じます。 長井「1、2年前に『ロミオとジュリエット』を見たんですけど、若い頃はそんなこと感じなかったのですが『家父長制すげぇな!』って変なくらい方をしちゃったんです。『ヴェニスの商人』にもその空気はもちろん漂っているし、そういう時代の作品ではあるけれど、とても意志が強い女性たちが、きちんと自分の足で立っていることが出てくる話なので、出演するのがこの演目でよかったってすごく思います」 佐久間「うん、本当に。やっぱり当時は自分が好意を抱いている人と結ばれること自体がなかなかなかったと思いますけど、それを二人して達成できるのは素晴らしいことだと思います。言い方はちょっと良くないんですけど、ある意味では共犯者っぽいというか(笑)。裁判のシーンでもその結託感でつながっているのはすごく素敵だなって、ネリッサとポーシャに対して思いますね」 ──原作のポーシャの台詞には、慈悲とは与える者も受ける者も共に福を得る、という内容のものがあります。ギフトにも贈る喜びと贈られる喜びがあると思いますが、どちらを今後の人生でより享受したいですか。 佐久間「どちらもうれしいですけど、私は贈る喜びですかね。プレゼントをするのが好きすぎて、プレゼント・ハラスメントみたいになってしまうんですよ(笑)」 長井「わかるなぁ。なんか、そういう時期ありません?何のホルモンバランスなのか『すごく人にプレゼントしたい!』みたいになる時期」 佐久間「気をつけなきゃなって思うくらい、そういうふうになるんです」 長井「私は贈られる喜びですね。贈るのも好きなんですけど、極論を言うと『贈る』は一人でもできるというか一方的でも成立しちゃうけど、『贈られる』ってやっぱり誰かに思ってもらわないと起き得ないことなので。実際に『もらいたい!』とか『くれくれ!』ってことではなく、『何か贈りたいな』と思われる人間になりたいなっていう」 ──お互いに今ギフトを贈り合うとしたら、何を贈りますか。 佐久間「お花とかかな?」 長井「わっ、うれしい!」 佐久間「まず第一弾は(笑)」 長井「第一弾って(笑)」 佐久間「でもプレゼントしたいなって、お会いして思いました。お花って儚いものでもあるんですけれど、その時間を一緒に共有できたらなって」 長井「素敵!」 佐久間「そして第二弾と、だんだん圧を強めていきます(笑)」 長井「(笑)。私は何だろうな?マニキュアですかね。かさばらないけど使い切らない限り半永久的に存在するから、忘れた頃に塗って、私のことを思い出してくれたらうれしいかな」 佐久間「マニキュア、好きです!」 長井「あ、よかった!」 ──ちなみに色はどうします? 長井「私が今日着ている洋服の色みたいなマニキュアかな。似合いそう」 佐久間「その色、好きです。じゃあ、私は真っ赤なお花を」 長井「ちょうどクリスマスって感じですね、赤と緑で」