個人消費回復に懐疑論 物価高重し、トランプ政権に懸念も 実質GDP、2期連続プラス成長〔深層探訪〕
内閣府が15日発表した2024年7~9月期の実質GDP(国内総生産)は、2四半期連続のプラス成長となった。けん引役となったのは個人消費で、政府は賃上げや定額減税などの効果を強調する。ただ、一過性の要因も目立ち、物価高が重しとなる消費の本格回復には懐疑的な見方が根強い。トランプ前米大統領の返り咲きで海外経済の不確実性も増す中、経済の好循環が実現するかはなお見通せない。 【写真】仕入れ価格や光熱費の上昇に苦慮する東京・神楽坂のバー ◇政府、政策効果を強調 「(6月の)定額減税の実施以降、可処分所得は増加している。賃上げの効果や夏のボーナスとも相まり、物価上昇が続く中でも個人消費を下支えしている」。赤沢亮正経済再生担当相は15日の記者会見で、政策効果に胸を張った。 個人消費はGDPの半分以上を占める。7~9月期は前期比0.9%増と2期連続プラスとなり、民間シンクタンク20社による事前予想(平均0・3%増)を大きく上回った。増加率は新型コロナウイルス対策の緩和が進んだ22年4~6月期以来の水準だ。 ただ、認証不正問題の反動による自動車販売の拡大、台風や南海トラフ地震の臨時情報などによる備蓄用食料の増加といった要因が中心で、野村総合研究所の木内登英エグゼクティブ・エコノミストは、「個人消費の上振れは今年1~3月期まで4期連続で低下した後の反動。インバウンド需要と輸出によって何とか支えられているのが、今の日本経済だ」と指摘する。 ◇高まる節約意識 物価高で節約意識は一段と高まっている。東京・神楽坂のバーでは今月11日、店主が「物価高で交際費を切り詰めている人が多い」とため息をついた。仕入れ価格や光熱費の上昇が店の経営を圧迫し続けている。 今夏は「令和のコメ騒動」と呼ばれるコメ不足と価格高騰にも見舞われた。イオントップバリュの土谷美津子社長は「店頭で買うか買わないか迷うお客さまが増えた。経験がないほど(利用客が)価格に厳しくなっている」と分析する。 企業はトランプ次期政権の政策運営にも神経をとがらせる。ホンダの青山真二副社長は、トランプ氏が掲げる海外製品への関税強化について、「すぐに実行されるとは考えていない」が、現実となった場合は「対象にならない国での生産を考えざるを得ない」と話す。気候変動対応でも「影響を見極めたい」(川崎汽船の明珍幸一社長)と警戒感が高まる。 みずほリサーチ&テクノロジーズの酒井才介チーフ日本経済エコノミストは、財政拡張的な政策がさらなる円安を招く可能性に言及。「食料品やエネルギーなど輸入物価の上昇で、個人消費が停滞することも懸念される」と指摘している。