明日Jチャンピオンシップ。勝敗のカギは遠藤VS柏木の新旧ボランチ対決。
そして、水沼氏が指摘する「前線からの守備」が、浦和の攻撃に狂いを生じさせるキーワードとなる。 5年半にわたって広島を率いたミハイロ・ペドロヴィッチ氏が、浦和の監督に就任したのは2012年シーズン。広島の代名詞だった「可変システム」も、同時に浦和へ導入された。 基本形である「3‐4‐2‐1」から、マイボールになるとダブルボランチを形成する一人が最終ラインへ移動。それまで3バックの中央だった選手とセンターバックコンビを組む「4‐1‐5」へ様変わりし、2人でビルドアップの起点を担う。 可変システムの起源は2008年シーズンの序盤。3バックの真ん中で攻撃の起点を務めていた自軍の選手を、相手チームのワントップが執拗にマークする状況に手を焼いた広島が、最終ラインで数的優位を作り出すことで反攻に転じようと試行錯誤したことがきっかけだった。 広島でスイッチを入れる森崎和幸の役割を、浦和では阿部勇樹が担っている。水沼氏が続ける。 「浦和も那須(大亮)とボランチの位置から下がってきた阿部の2人で最初はボールを回し、3バックの左右を務めていた槙野智章と森脇良太が実質的なサイドバックとして両ワイドに大きく開く。相手がワントップならばこれでいいが、ツートップになると数的優位をキープするために、ボール回しに加わる人数を増やす。その場合は、もう一人のボランチが加わることが多い」 つまりは柏木も最終ラインに吸収されることになる。本来ならば「4‐1‐5」となるべき浦和の攻撃時の布陣が、中盤不在の「5‐0‐5」になる。最終ラインの位置では、柏木がいくら長短のパスを駆使しても攻撃のリズムに変化を与えられないし、ボールをキープしてポイントを作っても意味をなさない。こうなると、浦和としてはボールをサイドに預けるしか手がなくなる。水沼氏が続ける。 「その場合はG大阪も中盤を素早くスライドさせて、左右どちらのエリアでもボールを取り切る力を発揮する。浦和は再びサイドを変える必要があるが、真ん中にいるはずの味方がいないと厳しい。低い位置でサイドを変えても、あまり意味をなさない。G大阪のプレッシャーのかけ方によって、浦和もボールの回し方を変えてくる。そのあたりは駆け引きとなるが、浦和をはじめとする3バックのチームに対してG大阪が苦手意識をもっていないことは、ある意味で強みとなるのではないか」 宇佐美とパトリックが守備を不得手としていることを踏まえれば、そのどちらか一人と、プレッシャーをかける術を熟知する遠藤が「一の矢」を担うことも十分に予想される。 その場合のG大阪は、今野泰幸をアンカーの位置にすえたひし形で中盤の4人を構成するか。あるいは、パトリックをワントップにすえた「4‐2‐3‐1」で臨むことになるだろう。 いずれの布陣にしても、鍵を握るのはトップ下に入る遠藤となる。浦和ボール時に、柏木に対して遠藤がプレッシャーをかける構図が見られるかもしれない。 浦和としては複数の相手にプレッシャーをかけられたときに、柏木を最終ラインに下げない対処法が必要となる。具体的には槙野か森脇を、ボール回し役に加えることになる。 守備面でのタスクも増えそうな遠藤。厳しいプレッシャーにさらされながらも味方を落ち着かせ、カウンター含めた攻撃の起点になるプレーも求められる柏木。新旧の日本代表ボランチがピッチで演じるパフォーマンスが、広島が待つ決勝への道を左右してきそうだ。 (文責・藤江直人/スポーツライター)