喫煙者とのキスは論外…タバコと肺がんの危険な関係性とリスクを、呼吸器外科医の鈴木健司が語る<最強の時間割>
民放公式テレビ配信サービス・TVer初の完全オリジナル番組「最強の時間割~若者に本気で伝えたい授業~」シーズン2のLesson11が1月26日に放送された。年間700件以上の手術を行う肺がん手術のスペシャリスト・鈴木健司が講師として登場。肺がんのリスクを高める身近な脅威について語った。 【写真】秋元真夏が肺がんの怖さについて真剣に学ぶ ■「最強の時間割」とは 「最強の時間割 ~若者に本気で伝えたい授業~」は、さまざまな業界のトップランナーを講師として招き、学生や社会人に「知っておいてよかった」と思える“考え方のヒント”を届ける民放公式テレビ配信サービス「TVer(ティーバー)」の完全オリジナル番組。 2022年12月から約半年にわたり、放送された同番組が好評を受けて帰ってきた。シーズン2は11月3日よりスタートし、シーズン1に引き続きラランド・ニシダが副担任役、ラランド・サーヤが生徒役。そして新しく生徒役として元乃木坂46の秋元真夏が参加する。 ■喫煙者とのキスは論外? 今回の講師は、呼吸器外科医の鈴木健司。順天堂大学医学部附属順天堂医院の呼吸器外科チームを牽引しながら、年間700件以上の手術を行う、肺がん手術のスペシャリストだ。そんな鈴木が肺がんのリスクを高める身近な脅威についての講義を展開した。 肺がんといえば、タバコを吸う人が患う病気というイメージを持っている人が多いのではないだろうか。しかし、それこそが「落とし穴」と鈴木は語る。喫煙者ではなくとも肺がんになる人が急増しており、今や誰でもかかるリスクがあるというのだ。 心臓を除き、ほぼ全ての臓器にできるがん。その中でも肺がんは圧倒的に死亡数が多く、年間約7万人が肺がんで命を落としている。では、その原因は? 肺がんは主に、扁平上皮がんと腺がんの2種類に分けられる。うち扁平上皮がんはタバコが原因と言われているが、腺がんに関しては未だ原因不明。タバコを吸わず、空気が綺麗な場所でタバコと無縁な生活を送っていても肺がんになるという。それは一体どういうことなのか。 鈴木曰く、タバコを吸った人が呼吸をすると胃に入った煙が外に排出されるそう。たとえタバコを吸い終わった後でも、その吐いた息を他の人が吸えば受動喫煙になる。よって、「チューは論外」と断言する鈴木。特に日本人は欧米人に比べ、お酒にもタバコにも弱い傾向にあるという。もしCT検査で肺気腫(肺の組織が壊れ、空気がたまる病気)が見つかった場合は、「タバコをやめないと人生の後半に酸素吸いながら生活しなくちゃいけなくなる」と鈴木は危険性を語った。 ■肺がんの早期発見に必要なこと 手遅れになる前に、肺がんに気づける分かりやすいサインなどはあるのだろうか。ヘビースモーカーで肺がんになった人は喀血することもあるが、なんと腺がんの場合は全くと言ってもいいほど症状が出ないというのだ。 毎年健康診断でレントゲン検査を受けていたとしても、それでは不完全。これまで自分は健康だと思っていた人がCT検査を受け、いきなりステージ4の肺がんを言い渡されるケースもあるという。 大事なのは早期発見。CT検査を受ける年齢について、鈴木は「50代以上は必須。しかし、念には念を入れて30代~40代のうちに一度受けるのもあり」と回答。ただ、CT検査は放射線の被ばくを伴うため、これには賛否両論があることを付け加えた。 ■外科医には手先に器用さより、日々の修練が大切 鈴木は、1984年に防衛医科大学に進学。国立がん研究センター中央病院など、日本有数の手術数を誇る現場で手術の腕を磨いた。2008年からは順天堂大学に勤務しており、年間700件以上の手術を執刀している。 驚くことに鈴木は、通常5時間ほどかかるところを約1時間半に短縮し、1日に何件もの肺がん手術をこなしているというのだ。しかも、鈴木が執刀する手術では電子メスを使用しているため、出血量はおよそ3ccとかなり少ない。 番組では実際の手術シーンも流れ、鮮やかな鈴木の執刀も映し出された。やっぱり外科医は手先が器用なのかと思いきや、意外にも鈴木は不器用だという。器用さは外科医に必ずしも必要なものではなく、それよりも自分を過信しすぎず、コツコツ修練を積み重ねられる人間の方がいい手術ができると鈴木は持論を展開した。 そんな鈴木には忘れられない患者が。国立がん研究センター時代に、北海道からがん手術のために上京してきた患者の手術を担当した鈴木。しかし、患者は心臓にある腫瘍の一部が飛んで脳梗塞になり、手術後になっても目を覚まさなかったそう。その家族に罵倒された経験を鈴木は胸に刻み、日々努力を重ねている。最後に、鈴木は番組恒例の質問「カッコいい大人とは?」という質問に「どんな小さなことでも、人のために何かができる大人」と回答した。 ■文/苫とり子