「アルツハイマー病」の新治療薬、薬価は年間で約298万円 保険適用を承認
2023年12月13日、中央社会保険医療協議会は製薬大手のエーザイなどが開発したアルツハイマー病の新しい治療薬「レカネマブ」への公的医療保険適用を承認しました。この内容について中路医師に伺いました。 [この記事は、Medical DOC医療アドバイザーにより医療情報の信憑性について確認後に公開しております]
中央社会保険医療協議会が承認した内容とは?
編集部: 今回、中央社会保険医療協議会が承認したアルツハイマー病の新しい治療薬「レカネマブ」への公的医療保険適用ついて教えてください。 中路先生: 今回、アルツハイマー病の新しい治療薬レカネマブへの公的医療保険適用の承認を出した中央社会保険医療協議会は、厚生労働省の諮問機関です。レカネマブは製薬大手のエーザイなどが開発した治療薬で、2023年7月にはアメリカで正式承認されています。 アメリカでの卸売価格は年間2万6500ドル、日本円で約390万円と高額なことから、国内での価格が注目されていました。 国内の動きをめぐっては、エーザイの申請を受けて厚生労働省が2023年9月に製造販売を承認して、中医協で薬価や対象範囲などを議論してきました。 今回の承認で薬価は1瓶200mgで4万5777円に設定し、2週間に1回、約1時間かけて点滴することになります。体重が50㎏の人では年間298万円となる見込みで、費用の大部分は公的保険で賄われることになります。 日本では、高額な薬価には患者の自己負担に上限を設ける「高額療養費制度」が適用され、住民税非課税世帯を除く年収約370万円以下で70歳以上の患者の場合は、外来による年間負担額の上限は14万4000円です。 今回の公的医療保険の適用は2023年12月20日からで、年内にも医療現場で使用が始まります。2031年度には3万2000人への投与が予想されています。
アルツハイマー病とは?
編集部: 今回のニュースで取り扱っているアルツハイマー病について教えてください。 中路先生: アルツハイマー病は、アミロイドβという老廃物が脳に溜まることで起きる病気です。アミロイドβが蓄積されていくと「プロトフィブリル」と呼ばれる物質になります。 抗アミロイドβ薬であるレカネマブは、薬の成分がプロトフィブリルに作用して目印の役割を果たし、そこに体内の免疫細胞が集まって攻撃します。 856人が参加したレカネマブの中期治験では、同薬の投与によってアミロイドβの減少が大半の参加者で確認されたとされています。 レカネマブが使えるのはアルツハイマー病患者で、アミロイドβがたまっていることが確認できた人に限られ、さらに認知症の症状が軽い軽度認知障害と、軽度の認知症の人だけが対象となります。 こうした条件を鑑みると、レカネマブの投与対象となる患者は認知症患者全体の1割未満とみられています。また、治験の結果では、約1割の人に、脳がむくんだ状態になったり、脳内でわずかな出血が起きる副作用が確認されたりしています。