5.6東京ドーム世界戦は「命はかけない」井上尚弥vs「死ぬ気」“悪童”ネリのイデオロギー対決…「弱点見つけた」発言に真吾トレーナーは「過去の相手もそう言って何もできなかった」
またこれまで何人ものトップボクサーが井上に歯が立たなかった理由を「決心が足りなかったかもしれないし、パンチ数が足りなかったかもしれないし、意欲が足りなかったのかもしれないし、選手を襲う恐怖も関係するのかもしれない」と、ズラズラと並べた。 「とても厳しい試合になる。オレだけでなく井上にとっても厳しい試合にな。2人共に勝つ可能性がある。東京ドームに来たファンは、人生の中で見たことがない試合を目撃するだろう。流血を見るだろう」 不敵に豪語した。 34年前の東京ドームでは無敵のヘビー級王者のマイク・タイソン(米国)が伏兵のジェームス“バスター”ダグラス(米国)にKO負けする世紀の番狂わせがあった。 その試合は映画で見たというネリは「倒れない選手でも倒れるってことだ」とタイソンに無敗の井上を重ねた。 だが、真吾トレーナーからすれば「弱点を見つけた」は「挑戦者あるある」だった。 「それは誰でも、だいたい言いますよね。でも試合は生き物。対戦した相手は、今まで何もできなかった。気にならない」 メキシコ人パートナーから情報が流出しているとネリのトレーナーが明かした点も「どうなんですかね。スパーパートナーがどういうことを言ったか。こちらがやりたいことをやれれば、なんとも思わない」と相手にしなかった。 ただ真吾トレーナーも「厳しい試合になる」という覚悟はある。 「ネリは、そういう(攻撃的)スタイル。厳しい試合になるのか、どう噛みあうか、思いの他、さっくりいくのか。そこは本番になってみないとわからない」 井上自身も公開練習で「ネリはスピードがない。スローで打ってくる選手にどういったズレが生じるか。当日、ネリをどう感じるか。まずはそこ」と語っていたが、ネリは、典型的なフックパンチャー。 ミット打ちで繰り出したアッパーは、井上には当たらないだろうし、あのラフな左フックは、ネリの言葉の裏返しで打つ際にはスキだらけである。もしネリが、アグレッシブに倒しにくるのであれば、先に井上の左フックと右ストレートが当たるだろう。真吾トレーナーの言う「さっくり」とは、そういう見立てだ。2ラウンドでケリがついた元5階級制覇王者ノニト・ドネア(フィリピン)との再戦のような早期決着となる可能性も十分にある。 ネリは、最後のメッセージとして「すべてを出す。死ぬ気でリングに上がる」と語った。 この考えも井上のボクシング哲学とは正反対だった。 井上は「リングで命はかけない」と明言している。 ボクシングは、喧嘩でも、殺し合いでもない。究極のスキルを競うプロスポーツであり、「KOは作業」と言い切る。KOへの道筋をまるでアーチストのように綿密にデザインし、それをリング上での特異な察知力でアレンジした上で具現化する。5.6東京ドーム決戦は、2人のボクサーの対照的なイデオロギーの対決でもある。 (文責・本郷陽一/RONSPO、スポーツタイムズ通信社)
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