北海道から沖縄まで、上皇陛下がご訪問になった55の島 島々へのご訪問(1)
被災地へのお見舞いも
離島へのご訪問は、海路(船舶)または空路(航空機)で現地入りするため、悪天候と重なった場合には訪問そのものが中止になることも想定される。しかし、平成年間の離島訪問では、中止や延期になることはなかった。離島を訪れる理由には、地場産業等の視察もあるが、地震や火山、台風など自然災害による被災地へのお見舞いも欠かされない。1993(平成5)年の北海道南西沖地震の被災地訪問では、道南に位置する奥尻島まで民間航空機と陸上自衛隊のヘリコプターを乗り継ぎ、日帰りで訪問された。2001(平成13)年の新島、神津島及び三宅島では、被害の大きかった三宅島だけは神津島からの帰路、ヘリコプター機上からのご視察にとどめ、後年の2006(平成18)年3月にあらためてご訪問になった。
海上自衛隊のヘリにも搭乗された
行く先々の離島までは、必ずしも民間の航空路線があるとは限らない。災害状況のご視察といったケースでは、日帰りでご日程が組まれることが多いため、スケジュールの融通性を考慮して、自衛隊や警視庁はじめ官公庁所有の機材(航空機)が使用されることもあった。 たとえば、1994(平成6)年の硫黄島(いおうとう)へは、陸上自衛隊輸送機(C130)、海上自衛隊ヘリコプター(S-61)、水陸両用機(US-1A)を、2006(平成18)年の三宅島へは、警視庁の大型ヘリコプター(EH101)といった機材に搭乗された。民間路線の航空機利用では、2018(平成30)年の日本トランスオーシャン航空(B737-800)やジェイエア(E170)などがある。 次回「島々へのご訪問(2)」では、離島へ運航したお召船のはなし、平成最後の島嶼(とうしょ)ご訪問を振り返ります。 文・写真/工藤直通 くどう・なおみち。日本地方新聞協会皇室担当写真記者。1970年、東京都生まれ。10歳から始めた鉄道写真をきっかけに、中学生の頃より特別列車(お召列車)の撮影を通じて皇室に関心をもつようになる。高校在学中から出版業に携わり、以降、乗り物を通じた皇室取材を重ねる。著書に「天皇陛下と皇族方と乗り物と」(講談社ビーシー/講談社)、「天皇陛下と鉄道」(交通新聞社)など。