60代夫婦、40年の市営団地暮らしの成果「貯金3,000万円」「退職金1,500万円」「年金月25万円」で積年の夢〈軽井沢移住〉を果たしたが…あっけなく終焉を迎えたワケ【FPの助言】
お金がないし、アトリエは邪魔くさい
ところが、移住から1年半後、思いもよらない問題に直面。 「お、お金がない……」田中さんは頭を抱えます。 軽井沢の生活は、想定した以上にコストが高く、特に冬場の暖房費や維持費用がかさみ、予定していた家計の予算を大きく超えることに。さらに、地域のコミュニティにも馴染むことが難しく、孤立感を覚えるようになりました。 地方移住の理想と現実 田中夫妻のように、定年後に都市から地方へ移住するシニア層は増加傾向にあります。移住の主な理由として挙げられるのは、「静かな環境で余裕のある老後を過ごしたい」という願いから。 しかし、計画ばかりが先立って、地方移住にはさまざまなリスクを伴うことが見過ごされがちです。田中夫妻が直面した問題の1つは、地方の生活費が想像以上にかかるという点です。 都市部での暮らしに慣れていた田中夫妻は、地方での生活が安いという固定観念に囚われていたため、軽井沢での特異な生活コストを想定していませんでした。特に冬場の暖房費用や積雪による住宅メンテナンス費用が大きな負担となります。住宅の購入コストに資産の多くを割いてしまったため、急な出費に対応できるだけの準備が不足していたのです。 また、田中夫妻が購入した住宅は以前の所有者が画家で、デザイン性に優れた住宅だったため、一見非常にオシャレですが、持て余す部屋も多く、掃除もしづらいなど住んでみてから数々のデメリットが浮き彫りになりました。 さらに、地域社会への溶け込みも思った以上に難航しました。長年住んでいた市営団地では、自然とコミュニティが形成され、隣人との付き合いも密接でしたが、移住先の軽井沢では、地域住民との接点が少なく、孤独感を感じるようになりました。特に、若い世代との接触が減り、地域の活動にも積極的に参加しにくい状況でした。これも、多くのシニア移住者が直面する問題の1つです。 結果として、軽井沢の住居は手放し、幼いころからなじみ深い地元へ戻って、田中さんの実家を継ぐことに。しかし、軽井沢の家はまだ売れていません。 では、田中夫妻のようなケースを防ぐためには、どのような改善策が必要だったのでしょうか。