羽田空港の第３ターミナル＝東京都大田区（本社チャーターヘリから、桐原正道撮影）

経済産業省は石油元売り大手に対し、二酸化炭素（CO2）の排出量を減らすことができる航空機用再生燃料（SAF）の供給を令和12年度から義務付ける。元年度に国内で生産・供給されたジェット燃料によるCO2排出量の5％以上という目標を設定する。SAFの設備投資支援や生産量に応じた減税など支援策を講じる一方、中期的な規制や制度的措置も整え、航空業界の脱炭素化を促す。 30日にも有識者会議を開催し、SAFの供給目標について技術的な検討を進めた上で、6年度内にエネルギー供給構造高度化法の関連規則として定める。 対象は年間10万キロリットル以上のジェット燃料を供給する事業者で、ENEOSや出光興産、コスモ石油など5社が該当する。12年度から5年間の供給目標とし、違反すれば事業者名の公表などの罰則が科される。 SAFは飲食店や家庭で出る廃食油や藻類、植物由来のエタノールなど化石燃料以外を原料とすることで、製造から燃焼までの過程でCO2の排出量を削減できる。原料が廃食油ならジェット燃料よりCO2排出を80％程度減らせる一方、米国産トウモロコシ由来のエタノールだとほぼ減らすことができず、原料ごとに効果に違いがある。 経産省は当初、12年にジェット燃料の10％をSAFに切り替える案を示していたが、削減効果が低い原料でつくったSAFを使うと効果が見込めないため、今回、目標を排出量ベースに切り替える。併せて、削減効果が50％以上となる原料の使用を促進する。 航空機はCO2の排出量が多く、2050年のカーボンニュートラルの達成にはSAFの活用への期待が大きい。世界の航空会社で構成されるIATA（国際航空運送協会）は世界のSAF需要が50年に25年度の50倍以上の約4・5億キロリットルに急拡大すると予測。国内でも令和12年にジェット燃料の10％がSAFに置き換わると、単純計算で171万キロリットルの需要が見込まれるため、元売り大手は製造拠点の整備に乗り出している。 もっとも、原料の廃食油などは世界的な争奪戦になっている。SAFの値段は現在、ジェット燃料の3倍とされ、原料の調達と製造コストの低減が課題になっている。世界各国で政策的な支援が相次ぎ、日本でも累計3400億円の設備投資支援や生産・販売1リットルあたり30円の税額控除で後押ししている。（万福博之）