横浜流星の涙…会いたい人との約束の場所に現れず『わかっていても the shapes of love』6・7話
横浜流星の主演ドラマ『わかっていても the shapes of love』(ABEMA)の6、7話が12月23日21時から配信スタートした。お互いに好きな気持ちはあるものの、「付き合う」という約束はできずにいる漣(横浜流星)と美羽(南沙良)。2人でいる分には、それでもよかった。だが、漣の隣には幼馴染の千輝(鳴海唯)が、そして美羽のそばにも琉希(佐野玲於)がそれぞれの想いを抱いており、2人を放ってはおかない。 【写真】漣を演じる横浜流星の涙 その理由とは……? 千輝は、美羽よりも自分のほうが漣のことをわかっていると自負していた。そして、誰よりも漣を必要としているのだと。そして、琉希は漣のように美羽のことを不安にさせないし、決して傷つけないと覚悟を見せる。幸せにするのだと、漣にも宣言。そんな彼らの猛アプローチが続いていた中、千輝が突然倒れてしまうのだった……。 ・#6 誰より大切とわかっていても 千輝の病状は想像していたよりもずっと重かった。小さいころから体が弱かった千輝。そんな彼女にとって生きる気力となっていたのが、漣の描く絵だった。殺風景な病室が彼女のすべてだったときに、漣が見せてくれた色鮮やかな世界。そんなヒーローのような漣への憧れが、恋へと発展するのは決して不思議なことではない。 それほどまで自分を求めてくれる人に小さいころから出会うというのは、おそらく漣の人生観に大きな影響を及ぼしたに違いない。自分の描く絵が生きる活力となっている人がいる。多くの人が行き詰まったときにぶつかる「なんのために描くのか」という問いに対して明確に答えが返ってくるのだから。そんな千輝の存在は、漣のアーティストとしての自覚を強めていったに違いない。 だが、同時に千輝の期待に応えなければならないというプレッシャーとともに生き続けてきたとも言えそうだ。自分のアートが千輝の命を繋いでいる、といっても過言ではなかった状況。もしかしたら、海外へ活動の拠点を移したのは、彼の才能が花開いただけではなく、千輝の期待から少し距離を取りたいという思いも少しはあったのではないだろうか。 しかし、彼は帰ってきた。それは、きっともう千輝が長くはないという知らせを受けてのこと。自らも美術大学内の銅像にペンキをぶちまけ、颯(浅野竣哉)のストリートアートを咎めることなく、「鎌倉バンクシー」としてともに描いたのも、すべては千輝に刺激的な日常を贈るため。 それが、美羽の登場によって大きく状況が変わった。美羽は、そんな漣に「本当の姿が見える作品が見たい」と訴える。千輝を大切に思い、彼女を楽しませるために描きたいと思ったのも間違いなく自分の意志ではあった。だが、それが果たして自分の「本当の姿」と言えるだろうか。 「もう一度だけ私の恋人になって」残り数ヶ月と宣告された千輝の時間。できれば、その願いに応えてあげたいと思った。その気持ちは決して嘘ではない。しかし、それが「本当の姿」とは言い難いのは、千輝とのデート中に美羽の存在が離れないことが証明していた。千輝が自分を見てほしいと願うほどに、漣の心は美羽に向いていることを自覚していく。そんな重ならないそれぞれの想いが切ない。 それは、美羽も同じだった。誰よりも大事に扱ってくれる琉希に救われた。その存在は、美羽にとっても大切な人ではある。しかし、本当に「特別な1人」という席にはずっと漣が座っている。無意識に目でその姿を探してしまうのも、自然とキスを受け入れられるのも漣だからなのだと、琉希との時間を過ごすほどに自覚する。 わかっていたつもりだった。他の誰かで代わりが効かない人と出会ってしまったのだと。でも、あまりにもその関係性が愛しすぎて、そのまま壊れるまで突っ走るのが怖かったのかもしれない。しかし、こうして改めていま「会いたい」と願う人は誰なのかがわかった漣と美羽は、雨宿りをしたあの場所で待ち合わせをする。 約束の場所に、先に着いたのは美羽だった。しかし、見渡しても漣の姿はそこにはなかった。走って向かっていたはずの漣。実は彼が到着する前に1本の電話を受けていたことがわかる。その物言わぬ後ろ姿だけで、良くない知らせであることを予感させる。 そして、映し出された漣の顔にまた息をのんでしまった。現実を受け入れられないといった表情を浮かべたまま、それでも言葉の意味を理解した脳が条件反射で流したであろう一筋の涙。ようやく開きかけていた漣の「本当の姿」。しかし再び、彼の心が素直になることを拒否してしまったように見えた。 ・#7 空っぽとわかっていても あの電話は、千輝の命が燃え尽きたことを知らせるものだったのだろう。千輝の遺影が飾られた祭壇を前に、空っぽになった漣を見てそう思った。あの電話を受けたあと、漣は美羽との約束の場所には行かず、千輝のもとへと駆けつけたことも想像ついた。漣と千輝が抱えていた事情を知らなかった美羽が、そのことについて触れようとすると漣が過剰に反応していたことからも、千輝の死はただ幼馴染を失った以上の意味があることがわかる。 「永遠なんてない。いつか終わりがくる」そう虚ろな眼差しで漣が話した言葉を、美羽は心に触れた瞬間だと感じていた。漣が語っていたその「終わり」とは、千輝がいつ「その日」を迎えるかわからないという恐れもあったのではないだろうか。死という終わりを意識するあまり、いまを生きるこの瞬間が見えにくくなっていく。いつか手放さなければならないのならば、はじめから求めることをやめようと。 そんな感覚を持っていたのは、漣に近いものを感じた光莉(福地桃子)も同じだった。颯(浅野竣哉)から向けられたストレートな想いも、いつか消えてしまうのではないか。そう思うと心配だという話をするも、颯からは笑顔という思わぬ反応が返ってきた。なぜなら、颯にとっては光莉が怖くなるほどにいま、彼女の気持ちは颯に向いていることは嬉しいことだから。 終わってほしくないと願うのは、それだけ失いたくないということ。そう思えるものと出会えることそのものが、人生の醍醐味。美羽の苦しい過去の恋だって、漣と心を近づけるきっかけになったといってもいい。「人は短い繋がりであっても関わった人すべてに何かを残していく。傷跡みたいに」そう教授の宇佐美(中山忍)の言葉を噛みしめる美羽。そして宇佐美は「生きることと創ることを簡単に切り分けちゃダメ」とも。 また、別の角度から漣と似た者同士であると感じていたのは愛実(夏子)だ。愛実には、漣も自分と同じく中身が空っぽなタイプだと感じ取る。創作の源となっていた千輝を失った今、空っぽになっているのはわかるが、それよりも前からそう感じているとはどういうことなのか。 それは愛実が、自分のなかから創作の種を探そうとするも何も出てこないという感覚を持っていたから。そんなコンプレックスに近いものを抱えていた愛実にとって、漣が千輝に見せるために行動しているのを見透かしていたのだろう。加えて、咲(朝倉あき)を愛しているという「本当の自分」から逃げていたところも愛実が漣と近い部分でもあった。 咲への想いを形にした作品で、自分の殻を破った愛実。その姿を見て美羽も漣と過ごした時間からもらったものを作品にしてみようと決意する。それは漣を振り返らせたいから創るものではなく、美羽自身の今を表現するもの。「もう漣とは会わない」その美羽の強い眼差しに、愛実が言う「中身の詰まった人」を感じた。そんな美羽の変化に、漣はどうするのか。また去っていってしまったと。やっぱり永遠なんてないのだと、美羽のこともそのまま手放してしまうのだろうか。
佐藤結衣