「首相経験者に聞く」②野田佳彦さんが語る岸田政権 「最後は党首同士が腹を割り、一致点を見いだして」
「聞く力」を掲げて2年前の自民党総裁選を勝ち上がった岸田文雄首相だが、国会では野党議員の質問に正面から答えない場面が目立つ。与野党が対立する政治課題で散見されたのは一方通行の議論。立憲民主党の野田佳彦氏は、民主党政権で首相を務めた際「一致点を見いだす政治」を目指した。野田氏に、岸田政権に対する評価、野党が向かうべき方向性を聞いた。(共同通信=石井俊也) ―岸田首相の政権運営をどう見ているか。 「防衛費増額や異次元の少子化対策といった方向性はそれぞれ理解できる。たぶん、国民もそうだと思うんです。問題は財源論の先送り。一つの癖というかね。メニューはいっぱい出すけど、料金は『時価』としか書いてないみたいな。これ、国民にとっては不安だと思いますよ」 「防衛費も少子化対策も兆円単位のお金ですよ。漢字の『兆』に部首を付ければ『挑む』にも『逃げる』にもなる。私は首相として、社会保障と税の一体改革、東日本大震災の復興財源確保に挑み続けました。えらい目にも遭いましたけれど。だから岸田首相は対極にいる、逃げ続けていると思いますね」
―岸田内閣は支持率が下落傾向にある。 「マイナンバーカードを巡る混乱。総点検と言っても、まだまだ不安だ。加えて物価高は政府が思う以上に、国民生活に厳しい状況だと認識した方がいい。賃金上昇よりも物価が上がれば、国民はやっぱり賃上げを実感できないってことでしょう」 ―マイナ問題への政権対応をどう見るか。 「健康保険証の来年秋廃止とマイナカードへの一本化を決め打ちしてしまっている。それでマイナ情報を総点検しても、ただの『やってるふり』になっちゃう。例えば選択制の可否など、一度立ち止まって考えるべきですよ」 野田氏と岸田首相はともに1993年衆院選の初当選組だ。同期から輩出したもう一人の内閣総理大臣、安倍晋三氏は昨年7月8日、銃撃されて死去した。岸田首相は事件直後、安倍氏の国葬実施を発表した。 ―首相は「聞く力」を掲げているが。 「マイナ問題もそうだし、安倍元首相の国葬にも言える。銃撃事件の6日後に実施を発表して、厳しく批判されましたね。その後、国葬の在り方を丁寧に議論すると言ったので、各所から意見を聞くのかと思ったらそうではなく、結局『時の政権が決める』となったじゃないですか。だから、時間稼ぎの『聞いているふり』にしか見えなくなってますよね」