〈本人直撃〉なぜ家系ラーメン店はライス残し客にDM連絡を要求したのか「あれ以降クズ、潰れろ、中卒だのDMが来ます」
「“炎上”以降ものすごい数のDMが来る」
――10日の女性客も、やはり態度は悪かったんでしょうか。 はい。初めてのお客さんでわりと若い子だったと思いますが、非常に態度が横柄だったみたいです。そのとき、俺と2人の従業員で店を回していたのですが、そのうちのバイトの子が「お客さん、お米残されましたね」と声をかけられないほど怖いと感じるような態度だったみたいです。 それで俺はバイトの子から報告を受けたあと、すぐさま「dmください。」と投稿したんです。 ――その女性客からはDMは来たのでしょうか。 わからないですね、あれ以降、もうすごい数のDMが来るんです。「私が残しました」なんてDMはもう何件も来てる。 もし本当に残した女性からDMが来たとしたら、理由を聞いた上で、何かひと言だけでも言うべきじゃないのかということ、本来ならお代をいただくところだってこと、他店でもそれはやめた方がいいってことを言います。仮にライスが不味かったと言うなら改善します。 ――そこまでの気持ちだったと。 俺は食べ物を粗末にするのが本当に許せない。食品ロスを出さないために毎月、米だけでなく麺も野菜もすべてリスト化し、確実に使い切れる必要最低限の食材だけを仕入れてやってきています。 なぜ俺がそんなに食品ロスにこだわるか? 人には育ってきた環境というものがあるでしょう。それによって思考が育まれるでしょう。こんなことを言ってお涙頂戴したいわけではないし、「だからどうだ」なんて細かいことを言いたくない。 でも、言わなきゃ伝わらないから言いますが、俺は母子家庭で貧困で腹を空かせた少年時代を過ごした。白米が大好きだけど、白米を腹一杯食べられる環境になかったんです。
「無料なのにこんなに美味いのか」というお客さんの喜ぶ顔が見たい
――だからこそ、お客さんにお腹いっぱい食べてもらいたいとライス無料のサービスを? そうではありません。俺は横浜育ちで俺をさんざん虐待した母親の彼氏が機嫌がいい時に連れてかれた家系御三家の「六角家」が大好きだった。その後に「本牧家」にもハマって。 それら御三家の本店ではライス無料サービスなんてやっておらず、そういったサービスは家系のフランチャイズ店が始めたことでした。 でもお客様からしたら“家系といえばライス無料”という印象は強いだろうし、みんなが喜んでくれるなら出したい、という思いひとつで、ライス無料のサービスを始めたんです。 でも、無料だからと安くてどうでもいいライスを出す気はなく、ライスにもちゃんとこだわりを持ってやっているから、それを当たり前にされるのは……だからこそ残されるのは我慢ならず、いろいろと試行錯誤してきたわけです。 ――そんな中、7日と10日に立て続けに米残し客が連発し、怒りが爆発したと。 もちろん米残しの件だけでなく、9月にはラストオーダー後に来た客をお断りしたらドアをバンっと閉められたり、その客に関する投稿をしたらロクでもないDMがたくさん来たりと、しょうもないことが連発してたんですよ。 ――ロクでもないDMとはどんなものでしょうか? 「クズ」だの「カス」だの、「潰れちまえ」だの。「ラーメン屋なんてどうせ中卒だろ」とか。まあ俺は確かに中卒だよ。だから何だって言うんだ? そういう奴には「なんか言いたいことがあるなら店に来なよ」と返すんだけど、「おう今から行くよ」って言って、実際に来た奴はひとりもいません。 ――今後、ライスはどういう方針で提供していきますか? 10月12日から【フォロワーサービス】を試験的に始めました。ライスは基本有料としつつ、フォロー画面をスタッフに提示していただくと“ライス1杯”か“海苔3枚”か“きくらげ”をつけるということにしました。 ――これまでとは違う形でライス無料のサービスを残すと。 うちの米は三郷の農家さんに提供いただく形で三郷産コシヒカリを使用しています。俺は中学を卒業してから和食や洋食、あらゆる飲食店を経験し、特に和食店では米の炊き方をものすごく勉強させてもらった。 米の炊き方にはこだわりがあるし、「無料なのにこんなに美味いのか」っていうお客さんの喜ぶ顔が見たいんです。本当にただそれだけの気持ちでやっています。 ※ 石川店長は6歳で家系ラーメンデビューし、それ以降、家系ラーメンのとりこになった。そんな店長が生み出した『三郷家』のラーメンのスープと麺は、馴染み深い「六角家」と大好きな「本牧家」を意識しつつ、石川店長が理想とする家系をカタチにしたもの。ライスもツヤツヤで美味かった。 食品ロス削減のためにも、『三郷家』を訪れる人は自分の胃袋とよく相談したうえでライスを注文するのがよさそうだ。 取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班
集英社オンライン編集部ニュース班