平均年齢26歳のアニメーションスタジオFLAT STUDIOとloundrawが歩む道 ━ 日本のアニメが削ぎ落してきたものに拘り、効率重視の分業化に反する体制を取る
デザイナーやイラストレーターなどアニメ業界外から集まり、アニメ業界に対してアンチテーゼを投げかける平均年齢26歳という驚異のアニメーションスタジオがある。 『FLAT STUDIO』画像・動画ギャラリー イラストレーターでありアニメーション監督でもあるloundraw氏や小説家の佐野徹夜氏、れおえん氏やSWAV氏といったイラストレーターが所属するFLAT STUDIOだ。 FLAT STUDIOでは、毎週必ずオンエアしなければならないがゆえに、日本のアニメから削ぎ落とされていったという「色」「光」「レイアウト」にとことんこだわり、圧倒的なマンパワーで『サマーゴースト』という劇場アニメを2021年に作り上げた。 彼らは「絵が描ける」という共通点こそあれど、アニメ業界の人間ではなかったため、従来のアニメ作りからすると異質ともいえる方法でアニメを作っている。 一方で、あらゆることをとことん言語化するという、アニメーションスタジオに限らず多くのチームが取り組むべき課題を見事に突破しているスタジオでもあり、そのあり方は非常に興味深い。 さて、そろそろ本稿の本題に入ろう。 本稿は、そんな『サマーゴースト』の監督であるloundraw氏、FLAT STUDIOの代表である石井龍氏、そして元「週刊少年ジャンプ」の編集長であり、マシリトの愛称でお馴染みの鳥嶋和彦氏による鼎談企画である。 アニメと漫画業界から有識者が集うカンファレンス「国際マンガ・アニメ祭 Reiwa Toshima 2023」(以下、IMART2023)が11月24日から26日まで池袋サンシャインシテで行われるのだが、その基調講演に上記3名が登壇し、本稿はそれを記念したものだ。 同基調講演は「AI新時代」がテーマなのだが、電ファミニコゲーマーでは、loundraw氏のクリエイティブ、石井龍氏のマネジメント、そしてFLAT STUDIOというある種で異質な存在に着目し、鳥嶋氏を聞き手として、そのユニークさを掘り下げていく。 そこから見えてきたのは、効率を求めて分業化してきたアニメ業界に対する一種のアンチテーゼであり、「手作りへの原点回帰」だった。 聞き手/鳥嶋和彦、TAITAI ■アニメ業界外から集まった平均年齢26歳のアニメスタジオってどういうこと? ──まずはお二人に迫る前に、そもそもFLAT STUDIOがどういうスタジオなのかを伺えればと思います。 石井氏: 2021年に公開した『サマーゴースト』という映画が初めての作品だったのですが、スタッフの平均年齢が今26歳ぐらいの凄く若いスタジオでして……。 鳥嶋氏: 若いねえ! 高校生もいるの? 石井氏: 今現在でいうと高校生もいますね(笑)。 鳥嶋氏: その高校生はどんな仕事をしているの? 石井氏: 高校生はアシスタントですね。 鳥嶋氏: じゃあインターン的なニュアンスがあるわけだ。 石井氏: そうですね。ただプロジェクトにおいては一般的なインターンよりも、しっかりと手伝ってもらっています。その他の年齢層としては、トップ層が僕や小説家の佐野徹夜ら30代半ばが4名、主戦力のミドル層は20代中盤が一番多いです。loundraw氏は今28歳で、『サマーゴースト』を作った時は26歳でした。 鳥嶋氏: 若い……! ──アニメ業界って慢性的な人手不足だと思うんですが、どうやっそんな若手を集めたんですか? 石井氏: 自分たちはアニメ業界の出身ではないんです。自分はデザイン出身ですし、loundraw君はもともとイラストレーターで、みんな異なる業界から集まってきているんですよ。ただ、「絵を描く」という共通技能さえあれば、「学べば分かる」はずだと思い、絵を描ける子たちをいろんなところから寄せ集めてきて作った作品が『サマーゴースト』だったんです。それこそ、なんなら国外の人もいました。 鳥嶋氏: 企画が始まって、出来上がるまでにかかった時間は? 石井氏: 配給チームとの顔合わせやボツになったいくつもの企画のディスカッションを含めると4年間ぐらいですね。 loundraw氏: そうですね。「一緒に映画を作ろう」と配給の方にお声がけをいただいてスタートしたんですが、最初は長編を作ろうとしていたんですよ。でも監督一作目で長編かつオリジナルという想定だったので、どう構成するか、どこに的を置くか、などの部分が難しくて……。 鳥嶋氏: だよねえ。 loundraw氏: なので最初の数年は全然進みませんでした。ですが、作れないということが作品に携わる全員にとって一番困るじゃないですか。40分くらいの短尺でいいので、まずは1本、短編映画を作ろうとなりました。 そして、脚本として乙一さんに参加していただくことになったんです。ですので、実際4年といいつつ、『サマーゴースト』に関しては企画から脚本に半年ほど、制作に1年くらいで実質1年半ぐらいで作り切ったという感じですね。 鳥嶋氏: なるほどねえ。でも1年半で、いきなり劇場用だもんね。 今のお話を聞いてると、作るとなってから手探りでスタッフを集めて、ディスカッションや共同作業をやりながらお互い勉強して作っていった、という感じなんですか? loundraw氏: そうですね。特に『サマーゴースト』の時は、まだほぼほぼスタッフがいなかったので、美術や撮影はまだしも作画は基本的に外注だったんですよね。 ──制作はリモートで行われたんですか? loundraw氏: 基本はリモートで作業しつつ、関東近郊の子は週1絶対集まって、制作の話をするようにしています。いまでも基本はリモートなんですが、全体ミーティングを週2回やって、作ったもののレビューをしたり、とにかく雑談をする時間を取ったりしています。 鳥嶋氏: 『サマーゴースト』が初めての監督作ということだけど、「届かない」とか「ここを知りたい」とか、作り始めて一番の壁になったのはどのへんだったの? loundraw氏: そもそもの話になってしまうのですが、僕らはアニメ業界の外から集まってきたので、アニメ業界の規格やフォーマットみたいなものを全然知らなかったんですね。それを覚える、というのがひとつ大変でした。 もうひとつが、これはクリエイターとしての考え方の話なのですが……まず前提として、これはアニメに対するディスではないです。その前提で聞いていただきたいのですが、アニメというものには比較的、表現にフォーマットがあるんですよ。 描き方はもちろん、「走る」はこういう動き、「背景」はこういう感じなど。なので一枚一枚にテンプレートを持たないイラストの視点でみると、アニメはライティングや色をそんなに気にしていないようにも思えます。 これはおそらく、「1クールを確実に回す」という中で削ぎ落としてる部分だと思うんですが、僕はイラストレーター出身なので、色や構図がすごく大事だと思うんですよね。 鳥嶋氏: うんうん。 loundraw氏: その結果、どうしても前述したスタンスの方々と自分たちのスタンスとでズレが生じるといいますか、「何が正しいのか」「何を目指すのか」の基準が違ってきてしまったんです。 鳥嶋氏: 同じ陸上競技でも全く違う種目をやっていると。 loundraw氏: そうですね。 鳥嶋氏: 絵を基盤にしてやることは一緒だけど、全く違う視点の、絵の捉え方ってことですよね。 loundraw氏: それが結構難しかったなと思います。 鳥嶋氏: その誤差はどうやって埋めていったんですか? loundraw氏: 諦めた部分ももちろんありますし、自分で言うと角が立つかもしれませんが僕のマンパワーでなんとかした部分もありますね。背景は基本的に僕がほぼ全てのカットをレタッチする前提で進めていて、カットも約600カット中400カットくらいは僕が手を加えました。 鳥嶋氏: 400! loundraw氏: CMなどでしたら、作画も背景もなるべく全て自分で最終調節しますが、流石に600カット全てはできませんでした。 鳥嶋氏: へえー……。すごいね。美術を自分でやったってことか。 石井氏: loundraw氏は基本的に全セクションできるんですよ。それはイラストレーター出身だからこそのスキルセットでもありますが、ただ、それを90分尺の作品でやろうと思うと、物理的に難しいじゃないですか。 鳥嶋氏: 難しいだろうね。 石井氏: なので、例えば『サマーゴースト』の時は、総合的な判断のもと、作画にはなるべく入らないで、「美術に専念する」という判断で行きました。その結果、美術班がすごく育ち、この4年でもう任せられる状態にまでなったので、次回作は美術にはなるべくリソースを割かないで、作画のほうに割くようにしようと思っています。 この辺りはその時のスタッフやスタジオの状況によって、プロジェクトごとにフォーメーションを変えるのですが、「監督が自ら手を動かせる」というのは結構大きなポイントです。 ■従来のアニメにはない、「色」「光」「レイアウト」に対するこだわり 鳥嶋氏: 話をお聞きしてると、loundrawさんの全部思った通りではないにしても、こだわっているところを実現化するための、新しいアニメーションスタジオをイチから作ったっていう感じなのかな。 石井氏: そうですね。 loundraw氏: そう……かもしれないですね(笑)。 石井氏: loundrawの絵柄を実現化させるためという部分は原点です。ただ、この課題は他のクリエーターも抱えているだろうと思いましたし、この取り組み自体が他のクリエーターたちにも何か刺激を与えるのではと考えていました。 ただ、「新しいアニメーションスタジオをイチから作る」というのが実は難しくて。基本的には新卒の子を2年ぐらいかけて育てるのですが、ある程度成長には時間が必要なんですよね。お金があって外注の方にお願いすれば作家独自の“フィルム感”が量産できるかというと、必ずしもそうではない。 どうしても育成期間が必要なんです。『サマーゴースト』ではほぼボツにした作画カットもありますし、外部に依頼した美術がアプローチが違うことで「結局そのままでは使えない」と判断したこともありました。結果、自分たちで直したり(苦笑)。 こういったことは短期的にお金で解決できない、お金では買えない問題なんです。 鳥嶋氏: ああー。気持ちは分かるよなぁ。分かるけど、プロデューサーは頭を抱える。 石井氏&loundraw氏: (笑)。 鳥嶋氏: ちょっと戻るけど、美術のほうに力を入れられたってことをもう少し聞きたくて。僕の経験則からすると、もちろん美術は大事だけど、あくまでも人物が大事で、原画に注力するというのが一般的だよね。 石井氏: はい。 鳥嶋氏: そこを美術のほうに手を入れて、人物のほうは大丈夫だったんですか? 石井氏: これが例えば、キャラクターIPものであれば、“いかにキャラが魅力的なのか”に注力するべきだと思うんですね。 一方で、loundraw氏はイラストレーターとして、「一枚絵としてのルックを担保する」というところからスタートしているので、フィルム感で見るんです。 つまりキャラクターもワンオブゼムというか、作品の中の要素のひとつでしかないんです。もちろんストーリーを引っ張るとか、そういう役割は強くありますけど。 一枚の絵で見た時に、背景美術のほうが印象としては大きな割合を占めるのではと考えていました。 鳥嶋氏: なるほどなー。 石井氏: なので、背景のほうを注力したというのが、まずありました。 鳥嶋氏: やっぱり人物は人物で大事だけれども、全体的な意識としてはモニターやスクリーンで見た時に、どんなクオリティで映るかっていうことが大事なんだね。 loundraw氏: 僕としてはそうですね。単純に「人物」と「背景」という要素に分けた時に、どちらのほうが僕の作風を再現しやすいかというと、背景だったんですよ。 何より、当時は背景を任せられる人間がいなかったんです。なので、そこをまず担保する必要がありました。 逆に今はチームが育ったので、全体で見たときに背景は良いけど、人物が出来ていない状態なので、今度はそっちに入ることになります。 鳥嶋氏: ということは、従来のアニメを作っている人たちにお願いをしたときに、色や光、レイアウトといった要素のレベルが、思ってたのと違ったわけだ。 loundraw氏: ……そうですね。いろいろな要素がある話なんですが、例えば日本のアニメの背景は、あまり「黒色」を使わないんですよね。比較的明るいというか、真っ黒を使わなくて。それは明るい色のほうが「重たくなくて綺麗に見える」という属性を持っているからだと思います。 でも例えば、“夏のアスファルト”を表現するとき、実は影側はかなり黒かったりします。その場合、どれだけ光側で白く明るい色使いをしても、日差しの強さとかが出ないんですよね。 日本のアニメは意外とそういった部分で、自分がら見た解釈というよりは既にある共通認識を優先することがあって、「影って青いよね」とか、「青いと綺麗だよね」とか、わかりやすさという視点でクオリティを担保することが多い印象なんです。 鳥嶋氏: あー……はいはいはい。 loundraw氏: そういった部分が、僕の作りたいルックと、当時一番合っていないものでした。なのでまずそこを担保して作らないと、「僕はこういうことがやりたい」というのが届かないので、『サマーゴースト』の時は「あ、今回は背景をやらなきゃな」と思いました。 鳥嶋氏: なるほどね……。ここまで聞いてきて、ようやく少し分かった。 loundraw氏: ありがとうございます(笑)。 鳥嶋氏: loundrawさんの分析は正しくて、アニメの始まりはテレビなんですよ。だからクオリティはともかく、毎週必ずオンエアしなくちゃいけない。そのための方法論で成り立っていて。 だからおっしゃるように、業界のフォーマットとか慣習が何十年に渡ってできてきている。おまけに、昔はアニメの多くが子どもをターゲットにしていたんだよね。だから色も明るく、子供が認識しやすい形のものになってると。 だけど、ここまで来て、アニメがそれなりに成熟したり広がりを持ってきた時に、やっぱり従来の作り方では、全く「ダメだ」ってことだよね。 loundraw氏: 少なくとも、「僕のイラストをアニメーションさせるのには難しかった」という感じですかね。 鳥嶋氏: だとすると、もう自身で手を動かして、具体的に「こういうことだ」「これでいく」と見せて、説得ないし指示出しするしかないわけだ。 loundraw氏: スケジュール的に全てに手を入れることはできないのですが、チームでどういう修正をしたかの共有は行っていました。今はチームとして、僕が直接関わらない仕事でもメンバーたちが毎週成果物を持ってきてくれるので、一般的にはこう直すとか、僕としてだったらこう直すという話をするようにしています。そういった形で、今ようやくアップデートできる環境ができたかなと思います。 鳥嶋氏: さっきのアスファルトの例をひとつ聞くと、「ああ、なるほど」って思ったんです。でも、それをひとつひとつ上がってきたものに対して、具体的に見せながら変えてくって、こうやってお聞きするよりは相当大変だったんじゃないですか? loundraw氏: 結構大変でしたね(笑)。 石井氏: (笑)。 鳥嶋氏: だよね……。 loundraw氏: でも逆に言うと、大変だからこそ、そこが担保できるようなチームができたら、ちゃんと差別化がされるだろうなとも思ったんです。それが頑張る理由にはなりました。 鳥嶋氏: 一方でスタッフからすると、loundraw氏の話や指示って、彼らの価値観が変わるような内容だと思うんですよ。だから彼らからしても、ビックリしながらも、納得すると楽しかったんじゃないかなぁと。そのへんどうでした? loundraw氏: そう願っています(笑)。ただ、もしこれからチームが少しづつ大きくなり、直接喋る距離にいないようなメンバーが出てきた時は、またそれぞれのスタンスを理解し合う必要があるのかなと思います。ですが、今いるメンバーに関しては、すごく楽しくやってると思いますね。 ■効率を求めて分業化していたアニメ作りが、いま「手作りの原点」に戻ろうとしてる 鳥嶋氏: 年齢というか、世代もあると思いますよ。今のアニメのスタッフって、おそらく平均値が30代前半くらいなんですよ。一方でみなさんは20代半ばっておっしゃった。 loundraw氏: そうですね。 鳥嶋氏: そういう意味では、わりと漫画家に近いんですよね。漫画も新人は20代半ばぐらい。 石井氏: 僕らの共通の価値観みたいなところでいくと、「漫画家」とか「イラストレーター」とか「アニメ」とか、そういった垣根がないんですよ。 漫画も描くし、小説も書くし、絵、アニメも作る。その上で、一番求められてるところが「勝手に伸びちゃう」という現象だと僕は捉えていて。loundraw君の場合は10代からイラストレーターの仕事をずっとやってきましたけど、20代の早々にしてイラストレーターが請けられるであろう仕事の範囲全てを経験してしまったんですよね。 そうなると、技術やクリエイターとしてのステップアップをどうしていくかを考えたときに、“隣接する違う業界”という別の高い山に登ろうとしたんです。 鳥嶋氏: なるほど。 石井氏: そうなると、当然そこで求められるものによって、必要な技術や仲間といった登上のために「集めなければいけないもの」が変わってくるじゃないですか。 僕らはそれまでアニメ業界という文脈でないところからアニメを作ったので、「5合目ぐらいから突然やってきた変な人たち」みたいな感じになってしまったのかなと。なので普通の登山ルートは登ってないんですよね。きっと装備品なども違くて、「一緒に登ろう」と声をかける人たちも、ちょっとずつ違った分野の子たちが集まっている。そういう変わった集団であるという自覚はあります。 たとえば「IMART2023」のキービジュアルは僕たちが作らせていただいているんですが、これのラフ切りやキャラの配置を含めたレイアウトは、美術マンがやっているんですよ。普通はそういう作り方しないと思うんですけど。 鳥嶋氏: これはたしかに、この手のイベントではあまり見ないビジュアルだよね。 文字色もさ、編集的に言うと赤にしたいけど、赤にしちゃうと絵の良さが全部消えちゃうから、もうこうするしかないよね。 石井氏: そうですね。あるメンバーは『サマーゴースト』の時に入って、メンバーになってから既に2~3年は経過しているのですが、普通であれば美術マンとしてのキャリアを深めるところ、この子の場合はむしろ「作画にも関わりましょう」という具合でキャリアを広げるようになっていて。 Z会さんのCMも作らせていただいているんですが、そこではloundraw君と一緒にキャラの色指定までやってるんです。美術の子が色指定をやるなんて普通はないと思うのですが、結局一枚絵で見た時のバランスをみんなで追求しているので、作画の人は作画だけしてればいいとか、美術の人は美術だけ描いてればいいということでは全くなくなってきてしまっていて。この子は次の映画で撮影にも参加すると思います。 鳥嶋氏: 今聞いてて本当に「ああ」と思うのは、徹底的に効率を求めて分業化したものが、「手作りの原点」に戻ろうとしてるんですね。 石井氏: そうです。もう、そこでしかないですね。 鳥嶋氏: だから、今までのアニメの作り方に対して、大きなアンチテーゼを投げかけてるわけですよね。 石井氏: これでも日本のアニメーション業界の一員として、僕らにしかできない役目を担うことで、業界に何かしら貢献できればいいなという気持ちもあって。今僕らが担えることを考えた結果このようなかたちにたどり着いて。なので、結果的にはそう見えるかもしれませんが、自分たちとしてはアンチテーゼを掲げているつもりはないんです(笑)。 鳥嶋氏: でもね、さっき話し途中になりましたけど、既にキャリアがある人には、loundrawさんのような作り方は無理だと思うんだよね。なぜかっていうと、それが常識になっちゃってるから。それはもう壊せない。 ところがこの作り方は、従来のアニメの作り方を壊すことになってるんだけれども、実は自然な流れとして、loundrawさんから始まっているよね。だからこそ、身近にいて、年齢や感性が若ければ、スッと入っていく。 石井氏: そうですね。なので「育てる」という発想になり、高校生ぐらいのセンスいい子に、もう在学中から程度叩きこんでいくんですよ。そして、そのまま入社してもらう。 鳥嶋氏: よくわかるよ。漫画家も、ハッキリ言えば、10代が勝負だから。 さっき、「装備が違う」っておっしゃったじゃないですか。そういうものって何か、具体的にありました? loundraw氏: 「装備が違う」はスキル的な意味合いが強いのですが、例えばレイアウトとは一般的にはアニメーターが切るものですが、『サマーゴースト』では基本的には僕が切ってましたね。なぜかというと、カメラのイメージは監督の中にあるからです。 かつ、アニメーターといっても、実はいろんなスキルがあるんですよね。可愛く描けるとか、動きが上手いとか、それこそレイアウトが上手いとか。全部ひっくるめてアニメーターなんです。なので「レイアウトは各々で描いてください」という指示は、画面構成において実は何の保証もないことだったりするんです。 鳥嶋氏: レイアウトっていうのは、画角とかアングル的なものは全部ということ? 石井氏: そうですね。まずアニメーターには「動きを描けるか」と「キャラを似せられるか」のふたつが求められていて。次回作ではloundraw君が総作監までを担う予定なので、そうなるとアニメーターのメンバーたちは「動き」をどれだけ美しく描けるかに特化していくと思います。 ■何よりも大切なのは言語化。コミュニケーションを重視するスタジオ文化 石井氏: あとスキルセットではないんですが、とにかく言語化をしようというスタジオ文化があります。話し下手なことがダメという意味では全くないのですが、チームで作品づくりをする上ではクリエイターだからといって、コミュニケーションを取らないことを正当化するみたいな振る舞いは、認められないといいますか。 説明できないっていうことは、理解していないっていうことだよね、というスタンスといいますか……。 鳥嶋氏: ものすごく共感する。 石井氏: それに僕らの場合、監督が一番言語化できてるんです。ここから繋がって、プロデューサーラインでも「言語化しましょう」ですし、クリエイターラインでも、「なぜ良いか」を言葉にできないと、チームで共通言語にならないじゃないですか。 鳥嶋氏: ようするに、1人に言って言語化がうまくいっていれば、複数人の体験になるってことだね。 石井氏: そうです。共有財産としての価値が、言葉ってやっぱり高いんです。何よりも、認識がズレた時に「どこでエラーが起きたのか」が言語化できていないと、もう原因が見えないんですよ。 鳥嶋氏: それすごくよく分かる。アニメってやっぱり集団作業だから、どんどん誤差ができていく。ズレていくことを、どう担保するかって、どうズレないようにするかって、ものすごい大きなテーマであるんだよね。 僕はそれを“言語の厳密化”として語った現場を初めて見たよ。 石井氏: あ、本当ですか(笑)。 鳥嶋氏: アニメの現場では初めて聞くね。 石井氏: でも上手いクリエイターが居て、その能力や手法をただ「上手いよね」って言語化せずに曖昧にしちゃうと、他の大多数からすると、逆に良くなかったりもするじゃないですか。 鳥嶋氏: そうすると、姿が見えなくなっていくからね。それがまずいわけだね。 石井氏: はい。なので、あくまでチーム戦をしようというのが僕らの考え方でして。それにチームの良さとしては、アニメ業界だと基本的に作品やプロジェクトが終わるとチームが解散するじゃないですか。でも僕らはそうではないので、作品づくりを改善させるためのサイクルを回すことができるんです。 これがもし解散してしまうと、何を教えるのにも工数が想像以上にかかるんです。例えば「AI使いましょう」という話が全然ドライブしないのって、「面倒だから」という部分もあると思うんですよ。でも僕らの場合は、そこはないんです。同じ人たちがいるので、言えば改善ができてしまう。そういう伸びしろは、すごくあるのかなと思います。 ──お二人と同世代のクリエイターで、「言語化を徹底する」みたいな感覚がある人って、他にいるんですか? そして言語化を徹底するに至った経緯も改めて伺いたいです。 loundraw氏: あまり聞かないですね。僕自身もイラストレーターとしては個人戦だったので、以前から言語化を意識していたわけではないですし。「言語化しよう」と思ったきっかけは、それこそチームを作るとなったからです。その中で、まず「自分は何が好きか」を言えなきゃいけない。また、一般的に「クオリティが高い」という言葉が何を意味するかということも言えないと、成長してないと思ったんです。 あとは、相手が納得してくれる説明ができないと(チームから)離れていくので、そもそもちゃんと説明しなきゃという気持ちがありました。 そういうのがあり、必然的に言語化を徹底していくようになりましたね。 石井氏: あとルーツ違う人が多すぎるから、というのもありますね。例えば「明るくして」といった場合、撮影マンの「明るくする」と、美術マンの「明るくする」ではアプローチが違うんです。 loundraw氏: 例えば単純にコントラストを上げてハッキリとさせる人もいれば、ただ白くする人もいるんですね。 鳥嶋氏: そうか。「明るくする」だと抽象性があるから、厳密に指示しなきゃいけないってことだね。 loundraw氏: そうですね。あとこれは昔の話なんですが、背景の指示で「この辺はなるべく細かく描かないで」と言ったことがあったんですね。それは情報量とか取捨選択の意味で必要な行為だったんです。ですが、「描かない」という指示は「じゃ何を描くの?」という話になるから難しい指示だ、といったようなことを言われたことがありまして。 じゃあ逆に、この「なるべく描かない」という感覚をチームとして共有することができれば、それはちゃんと個性になるなとも思いました。この出来事は結構きっかけになったかもしれません。 石井氏: そういう意味では、ルーツが異なることは問題ないですが、価値観は近くないとチームは組めないなと思っています。 鳥嶋氏: そこだね。 石井氏: たとえば僕らの場合、映画好きの子とアニメ好きの子がいた場合、やはり映画勢のほうが制作時の適応は早かったりするんですよね。これはもう、しょうがないなと思ってます。 鳥嶋氏: でもそれは、漫画を描く人も同じで。映画を好きな人のほうが、やっぱり画面構成がうまい上手い。やっぱり映画はカメラの台数が多いし、特にクレーンで釣ったようなアングルって、映画からじゃないと出てこないからね。 石井氏: だからかアニメ文脈の子は、超望遠の構図をあまり使わないんですよね。やっぱり、キャラクターを見せたい意識が無意識であるのかもしれませんが、バストアップが多い印象です。 ──ちなみに、言語化の能力って、どうやって培ってるとかってありますか? 石井氏: 質問し続けますね。「どういうこと?」みたいな。で、「こうです」とふわっと返されたら、「で、それはどういうこと?」ともう一回聞ききます(笑)。 loundraw氏: 石井さんもそうですし、僕もなるべく正確に本人が悩んでることを知りたいので、そもそもその絵は自分の中で何点? 描けた? 描けなかった? みたいなことも聞きますね。なので必然的に喋らないと進まない感じですね。 鳥嶋氏: 結構でも、エネルギーいるでしょ? loundraw氏: いやでも、楽しいですよ。描くより楽しいです(笑)。 鳥嶋氏: 描くより楽しい(笑)。 loundraw氏: 描くのは自分の答えに向かって時間と体力を使う作業ですけど、教えるは違う視点が入ってくるので、こっちのほうが身になるんですよ。 石井氏: あとそもそもとして、基本的にみんな仲が良いんですよ。 loundraw氏: 前なんか、20キロぐらい歩いて、風呂入って帰るとかやって。 一同: (笑)。 ──でも時には「これじゃダメだ」という話をする必要もあるわけじゃないですか。その時どういうやりとりになるんですか? 石井氏: 純粋にクオリティとしてどうかと、本人的な満足度をそれぞれ聞きますね。上手く描きたかったけど、技術力やスケジュール的に描けなかったのか、あるいはモチベーションが上がらなかったのか、などなど。 これが例えば、上手く書けなかったんだけど、本人的には課題を認識していて、多少でも前に進めたのであれば、下手かもしれないけど価値があるものだからポジティブなフィードバックを返します。逆に「何のためにやってるのか分からないです」という感じだったら、「やんないほうがマシ」みたいな話になりますね。 ──(笑)。 loundraw氏: 僕もいくつかの視点で見ますね。「僕はこう思う」と「世間はこう思う」のほかに、「どうすればその子の能力が活かせるか」みたいな。その上で、「ここ直るといいよね」みたいな会話をしてます。 ■25人いれば世の中は変わる 鳥嶋氏: でも大変失礼だけど、それを継続させるためには、そこで仕事をすることが面白いとか、収入がちゃんと担保されるってことじゃないと、抜けちゃうでしょ。 石井氏: おっしゃるとおりですね。幸いにも今のとこはほとんど抜けていないです。 鳥嶋氏: 今何人ぐらいですか? 石井氏: 契約形態問わずでいえば25人ぐらいですね。クリエーター職のほとんどが新卒です。これは悪い言い方かもしれないんですが、こう……染められてるんですよね。 鳥嶋氏: 逆に言えば、チームとしてのカラーはあるってことだよね。 石井氏: かなりあると思いますよ。 鳥嶋氏: 映画で言えば、だって昔黒沢組とか小津組とかいうのは、だいたいメンバー固定してるもんね。 石井氏: あと、顔の分からない方に任せて、意図しないものが上がってきたとき、「なんでこうなったんだ?」と原因が誰も分からずに途方に暮れることがあります。 鳥嶋氏: ああ。分かる。 石井氏: それって結構虚しいじゃないですか。でも「自分たちのメンバーの子ができなかった」だと、「教えよう」となる。前向きに捉えたり、ポジティブに向き合えるんですね。 鳥嶋氏: ミスはミスで出てきたけど、それはひとつの結果であって、原因究明して辿っていけば、どこかに必ず行き着けるってことだよね。そこを直せば改善されるし、データにもなっていくと。 こうやって聞いてると簡単だけど、自分だけの価値観があって、そこに向かって粘り強くやれる忍耐力がないとね。あとは目の前の人間や才能に対する信頼感がないとできないと思うんですよ。 だから結構、肝が据わってるんだなって思いました。 石井氏: いや、loundraw君は相当ですよ(笑)。 loundraw氏: (笑)。 鳥嶋氏: トップが400カットやってるんだから、下は動かざるを得ないもんね。 石井氏: もう、それでしかないですね。loundraw君が一番オーバーワークしてるんで、みんな文句言えなくなってる空気はありますね(笑)。 鳥嶋氏: そうだよね。分かる分かる。だって置いてかれちゃうから、ついてくしかないよね。 でも今日いろいろ話を聞いて、コンパクトさは大事だと改めて思ったね。組織が大きくなると、だんだん分業制に向かって行っちゃうからさ。そしてつまらなくなる。 今のところは非常にうまく考えてやられてると思うんだけど……。 ──50人超えて、100人超えて、っていう話になった時に、たぶんカルチャーがまた変わってくるからって話ですよね。 鳥嶋氏: さっきスタッフは25人って話があったけど、2~30人って週刊少年漫画誌のスタッフ人数なんですよ。上限24~5人までで、そこから増やすことないから。 ──ジャンプの編集部員がそのぐらいだって聞いて思ったのが、25人いたら世の中が変わるんだ、ということで。いや、むしろそれくらいの規模感がいいんですかね。 鳥嶋氏: そうそう。 ただ、アニメスタジオがそうならなかったのは、純粋に労働効率が悪いからだと思うんだよね。だからそこを変えようとしているのは、なかなか面白い試みだと思います。 loundraw氏: 一方で作画などに関しては、従来の作り方のほうが、意外とコストがかかるなと思う側面もあって。意思の疎通が計れなくて「これは何の時間だったんだろうな」みたいなボツが結構発生するんですよね。それよりは、たしかに1人当たりのハードワークぶりはもちろんありますが、俯瞰して見た時に無駄がないチームだなとも思っています。 なので、「意外と回ってる」という感覚がわりとありまして。 鳥嶋氏: こういう言い方をしてしまうと申し訳ないけど、素人から始まったからこそ、ある種の正解をたぐり寄せたっていう感じはあるよね。 石井氏: そうでありたいなと思います。 ■loundrawらしさとは ──FLAT STUDIOがかなり特殊なアニメスタジオであることは分かったんですが、お二人がこの業界に入られた経緯も伺えればと思います。 石井氏: 僕はもともと編集者で、今はもうありませんが「PUBLIC/IMAGE.ORG」というWebマガジンの編集や「2.5D」というメディアスペースの運用を7,8年間くらいやってました。 並行してCDのアートワークや広告、画集などのデザインプロデュースをして、その中でloundraw君と出会ってマネジメントとなり、作家としての活動管理だけではなく、設立にはいくつかのコンセプトがありますが、彼の才能をより伸ばすという意味でもFLAT STUDIOをloundrawと佐野徹夜と共に立ち上げました。 なので、アニメプロデューサーに、結果的に“なっちゃった”タイプですね。 ──loundrawさんはいかがですか? 石井氏: 最初は広告代理店に行こうとしてたんだよね? loundraw氏: しましたね(笑)。 ──デザイナーとしてとかですか? loundraw氏: そうですね。少し自分のことを話させていただくと、両親が大学で教えたりしているんですが、子供のころからずっと「学者になれ」と言われ続けてまして……。 それで大学受験も頑張っていたのですが、受験期の11月とかに「あ、勉強嫌いだ」って気づいてしまったんです。 一同: (笑)。 loundraw氏: それで親と泣きながら話して、「勉強好きじゃないわ」って。そこから色々調べたところ、芸術と工学を扱う学部があることを知って、じゃあこに行こうと。そのあと、偶然にもイラストのお仕事をいただいて、副業にするつもりでイラストを描いていたんです。 石井さんとはそのあとに出会って、東京に来るならマネジメントすると言ってくれたんですよ。当時(2016~2017年)は、イラストレーターがマネジメントされることがあまりなかった時代で、すごくありがたいことだったんです。 そこから就活辞めるかとなり、今に至る感じですね。 ──イラストレーターとしては、どういう感じで活動の幅が広がっていったんですか? loundraw氏: pixiv経由で見つけてくれた方が多かったようですが、「爽やか」や「青春」などのキーワードで仕事が来ていました。 もしかしたら純粋な発見というよりは、そのフォーマットに乗った中で、当時でいえばインプレッションがある作家、くらいかもしれません。その流れの中で、2015年に『君の膵臓を食べたい』という小説の表紙を描かせていただいて、プロとして見られて行っていることを自覚していった感じですね。 鳥嶋氏: 過去のイラストを見ても、2015年くらいから急激に上手くなってるね。 ──プロを自覚した瞬間に上手くなるってすごいと思います。 鳥嶋氏: いやだから、頭がいいのと目がいいんだよ。素質のない人は急速に上手くなれないから。 ところで、自分の方向性や生きていく道、あるいは自分のスキルをどうやって磨いていくかみたいな部分は、どうやって決めていったの? loundraw氏: 自分で厳密に決めたというよりは、声をかけてもらった、というのが大きいですね。その上で、分析とか計算は良くしていました。 当時はすごくSNSを見て、どういった色使いやコントラストが注目を集めやすいのかを調べたり、漫画を描かないかと言われた時は、自分のタッチや連載にかけられるコスト感を踏まえてクオリティが良く見えるラインは、恐縮ですけど「浦沢直樹さんだな」と思ったり。 絵が細かいわけではないですが、すごくデッサンがうまくて立体があって、かつそこまで背景は描いてないけど説得力とテンポがある、みたいな。枠線の空白の太さは上と横とで幅違うじゃないですか。それがどれくらいとか、そういう構成要素を見るタイプでしたね。 ただ逆にいうと、フォーマットから入ると我が現れづらいのも事実なので。世の中と自分のフィーリングが合っているときは上手くいきますが、監督になる時には「もっと自分を出せ」と言われてすごく苦戦しました。 鳥嶋氏: でもね、あなたが研究して「上手い」と思った浦沢さんは、上手いけど、実は意外と自分がない人なんだけどね。ただ、確かに浦沢さんは本当に上手いね。特にコマ割りと人物。だから、浦沢さんを研究する目の付け所と、研究の仕方はものすごく正しいと思いますよ。 ──構図やカメラ、レンズの感じは何か勉強したりしたんですか? loundraw氏: あまり勉強はしていませんが、カメラは大学のころに買って、趣味で写真を撮ってましたね。もともと写真やミュージックビデオが好きなので、そこからリファレンスを持ってくることも多くて。ただただ絵が魅力的かどうかという点で作る、ある種の「かっこよさ」の頂点の表現だと思うので。 あとは、個人的には人物を描くことは好きでしたが、小説の表紙だとキャラクターは特定されてないほうがいいという文化があって、引きで描いてくださいというオーダーが多くて。そうすると、自ずとレイアウトが良くないと勝負にならなくなっていったんです。 その結果、レイアウトは上手くなりましたけど、キャラクターデザインで呼ばれると「キャラがみんな一緒」と言われたり。 一同: (笑)。 loundraw氏: そんな辛い時期もありましたね。 鳥嶋氏: でもね、それは実は気にしなくていいと思うんだよ。「何を描いても一緒」って言われるのは、ひとつの個性。残る人はみんな、キャラはたくさん描けないから。 ──あだち充とかそうですもんね。 鳥嶋氏: うん。宮崎駿さんもそうだし、鳥山君もそう。実はみんな、大した数はない。バリエーションはデザインによって変えればいいけど、本質は変えるべきじゃないんだ。 ──アニメ監督を目指すに当たって参考にした人とかはいるんですか? loundraw氏: テクニック的には今敏さんが好きです。ロストテクノロジー的といいますか。 鳥嶋氏: へえー。ここで今さんの名前が出てくると思わなかった。意外だなぁ。 石井氏: カナダのファンタジア国際映画祭に「今敏賞」という今敏さんの名が冠された賞があるのですが、僕らは『サマーゴースト』でその賞をいただいたことがあって。海外志向になったのはそれがきっかけなんですよ。あ、このルートあるんだって。その賞をいただいて初めて、日本の僕らのようなスタジオでも世界に打って出れる可能性があるということに、なんだか腑に落ちたというか。 ──loundrawさん個人、あるいは新しい世代として、自分たちの強みや差別化がどこにあると思われますか? loundraw氏: 小説の表紙を描くことが多かったのですが、当時、小説の表紙の仕事は納期が1週間程度のことが多かったんですよ。なので、すごく短いスパンで絵を描く必要がありました。 その中で本質的にクオリティを担保して描こうとすると、押さえるところは押さえつつ、描かないところは描かない、という描き方になるんです。それがむしろ、抜け感だったりに繋がるるんですけど。 石井氏: なので、僕らは描かないところは徹底的に描かないんですよ。視線誘導を意識することで量を担保しようとしています。 鳥嶋氏: 言ってること分かるよ。引き算はね、なかなか難しいからね。 loundraw氏: あと世代でいうと2点あって。 まずは当然ですが、デジタルが近いというのが一番大きなところかなと思います。手間がかかるからこその価値や美徳が生まれることがあると思うのですが、デジタルだとそれがスイッチ1つでできてしまうじゃないですか。 これは原理の理解という点ではネガティブに働きますが、トライアンドエラーの回数を増やして本質に向き合うという点ではポジティブだと思います。昔と比べて、クオリティへの向き合い方に選択肢があることはとても恵まれていますね。 もうひとつは、当たり前ですけど、世代が若いこと。世代によって考え方のベースといいますか、「これがデフォルトだよね」というのは全然違ってきますし、僕がよく話す高校生の子たちも「全然違うな」と思います。そこに“近い”というのが強みだと思います。 ただ、それは同時に短所だと思うこともあって。ある種の答えが出てしまっている状況があるなかで、あえてそこをズラそうとしたときに、「え、なんでズラすの?」と言われるのが僕たち、あるいはもう少し下の世代でして。 鳥嶋氏: なるほどね。 loundraw氏: いわゆる“答え”があるのに、なぜわざわざズラす必要があるの? それ意味ある? と問われた時に、それに対して答えを持つのは簡単じゃない。10代の頃に誰もがわかってることでもないと思うんです。なので、世間の目や最適解を早くから知ってしまうことは、今の世代の一番のデメリットかなとは思っています。 ──「バズらせる」って、いくらでもやりようがあるじゃないですか。一方で、そこに最適化とか特化してしまうと、ある種のはしたなさが出てしまったり、逆に突破しなくなったりしてしまう。 だから「バズらせる」以外の価値が必要だと思うんですが、そこの追求についてはどう思いますか? loundraw氏: その人の人生を感じられるかみたいなところが、僕はすごく大きいなと思っていて。「バズる」こと自体は短距離走ですし、社会の流れを捉えるということなので、もしかしたらその瞬間だけ嘘をつけば、意外とできてしまう人も多いのかもしれません。 でも大切なのは、その人の人生が少しでも見えるかどうかだと思うんです。「自分の過ごした時間」だけが本当の意味で他人に真似できないもののはずで。そしてそれは、一時的にバズるみたいな短いスパンでは見えてこない部分なので、「人間らしさ」みたいなものに価値があるのかなと思います。 ──なるほど。一方で、スナックカルチャーと呼ばれるものが受けるわけじゃないですか。そういうものを好む社会や人に対して、長尺のものを割り込ませるって、結構難しい問題だと思っていて。そこに対して、何か考えや答えはありますか? loundraw氏: 難しい問題ですよね。 僕らも試行錯誤しているのですが、例えば映画の場合は、シナリオ、絵、音という3軸があると思っていて。それらに対して、カットの切り替えは早いほうがいいとか、動きや音は変化が大きいほうがいいとか、いろいろ言われていることがありますよね。 僕が思うに、3軸ある中で、どれか1つ2つでも現代的にすれば、残りはそうである必要はないと思うんです。つまり、どこかで安心してもらいつつ、やりたいことはやると。 まだ試験段階ですけど、そういう形での折衷みたいなものはできるかもな? と漠然と考えてます。 鳥嶋氏: さきほど人間らしさという話があったけども、そういう意味でいうと、loundrawさんらしさみたいなものは、どう構成されて、どういうアニメになってるんですか? loundraw氏: そこはアニメと真逆なんですけど、「止め絵でも分かる」というのが、たぶんすごく僕らしさであり、長所なんですよ。つまりセリフがなくても、表情がなくてキャラが引きでも、置いてあるものや光の当たり方などで状況が分かる。 そういうのは従来のアニメとは、結構真逆のアプローチだと思います。 鳥嶋氏: なるほどね。ところでloundrawさんはイラストから始まってるわけだけど、普通イラストって一人で完結する作業じゃない。それを共同作業にするって、面倒くさいとか思わなかった? loundraw氏: もちろん思いましたけれど、「アニメにしたい」というのは自分が自ら望んだもので。 鳥嶋氏: それがあったからか。 loundraw氏: なおかつそれを自分の絵でやるのであれば、自分の意図を説明する以外の方法がなかったんですよね。 鳥嶋氏: 使える最大の武器が言葉だったんだね。 ■スタッフの意識を変えるために、ドキュメンタリーカメラが密着 石井氏: あとはスタジオを運営してると、興味を持ってもらうことがすごく重要で。そのためにも、やっぱり「言語化」が大切なんですよね。 鳥嶋氏: ということは、おふたり一緒にプレゼンの場に出ることも多いわけだ。 石井氏: 多いですね。 それでいうと、ドキュメンタリー映像として残したりしているんですよ。見られる意識を持つためにも、写真家の鳥居洋介さんが作業風景などを全て映像で撮ってくださっています。『サマーゴースト』の時は1年半ぐらい密着してもらって、ドキュメンタリーのほうが本編より長くなってしまいましたけど(笑)。 一同: (笑)。 鳥嶋氏: プライベート情熱大陸だな。 石井氏: これは自覚の話なんですが、鳥居さんが「今どういうことをやってて、どういう心境なの?」という質問をしてくれるんですね。それに対して、全員がちゃんと答えるんです。最終的にはそれが世の中に出るという意識があると、日常の生き方も変わってくると思っていて。 鳥嶋氏: まあ、変わるだろうね。常に客観的な存在が居て、インタビューされ続ける環境に居るとなれば、その時の自分の思いを最低限整理して伝えざるをえないよね。 でもそれさ、嫌だって人もいるじゃない? めんどくさい、嫌だ、やめて、って。 石井氏: もちろんそういう子は映していなくて、強制ではないです。 ──外向けの効果としてはどうだったんですか? 石井氏: それを見てスタジオに入りたいという人は結構多いんですよ。スタジオの雰囲気を良いと思ってくれたり、何気ない一言が響いたりして。 なので映像に映るメンバーには、演技をする必要はないけど、意識はしてほしいと伝えています。そこに夢がないとそもそも誰もついてこないですからね。 鳥嶋氏: 厳しいねぇ……! ──(笑)。 石井氏: 服装はもちろん、言葉遣いや日常の所作も気を使ってほしいと思っています。そういうことに気を使うと、例えばこのキャラクターがこういう服を着るのは、こういうバックボーンがあるんだ、といったところにまで意識が行くと思うんですよね。なので、日常の些細なことから全部繋がっているんです。 鳥嶋氏: それ、ある種のアニメスタジオやゲームスタジオとは違うとこだね。 ──聞いたことないですね。 石井氏: なので1枚絵を作るにしても、服装はもちろん、置かれている椅子とか、そういう一つひとつしっかりと気にするようになっていくんです。 ■最終的にはサッカークラブのようになりたい ──そろそろ締めの話題に入っていければと思うんですが、今後このスタジオをどうしていきたいみたいな思いがあれば聞いてもいいですか? 石井氏: 最終的には自分たちでハンドリングして、制作予算も“集めさせてもらう”ということをやりたいなと思っています。 鳥嶋氏: ということはあれだよね、任天堂方式だね。 石井氏: 任天堂方式(笑)。 鳥嶋氏: アメリカの任天堂に行ってびっくりしたのは、オフィスの半分が開発で、残りの1/4が自社弁護士たちがいる法務で、もう1/4が宣伝物を作るプロダクトチームだったんですよ この任天堂のマネジメントの考え方とマンパワーの作り方がとにかく衝撃的だった。これが「アメリカで仕事をする」っていう任天堂の覚悟であり、リアルなんだなって。 石井氏: おお……。 鳥嶋氏: 話は逸れましたけど、体力やノウハウがないうちは、筋が良くて共有性があるところと組むのが良くて、規模が大きくなってったら、チームの考えが伝わるスタッフを育てながら雇っていったほうがいいと思う。 だから、目指すはディズニーか任天堂ですよ。 石井氏: ええーいやいやいや(笑)。 一同: (笑)。 石井氏: ちょっといきなり遠すぎます(笑)。 ──ジブリはダメですか? 鳥嶋氏: ジブリはダメ。 一同: (笑)。 鳥嶋氏: ジブリはだって、個人に依ってるから。宮崎さんと鈴木さんっていう2軸だけでしか動いてないから、商店はできても会社にはなれないよ。個性が強いからあそこまで行ったけど、だからこそ目指しちゃダメ。 石井氏: いやもう、めちゃくちゃ耳が痛いんですけど……その“継続性”をどこに置くかだと思ってて。 「作品を作る」をIPを作ることだと捉えると、絶対に任天堂さんやディズニーさんになると思うんですが、僕らはどうしても属人的だったりするんで、アニメ業界の範疇で見ちゃうと、むしろ、他の事例がないといいますか、映画を作ってるフィルムメーカーが、どう育っていくかが未知数すぎて……。 鳥嶋氏: たぶんねぇ、参考事例ないと思う。だから、石井さんとloundrawさんが、新しいファーストスタジオを作るしかないね。 石井氏: まぁそうですよね……。僕らもloundraw君が「もう無理です」と言ったら、もうそこで終わりなんですよ。なんなら僕が「もう無理です」と言ってもそこで終わってしまうという自覚はあります。 継続性や属人的な組織構造の問題というのがずっとあるんですよね。 鳥嶋氏: そこを決めるひとつのポイントは、ふたりの“欲”がどれだけ大きく、どこにあるかだと思う。だから、単にいつもloundrawさんの中にあるイメージを、すごく具体的に忠実に再現するスタジオでありたいって言うんなら、例えば庵野さんのスタジオになると思う。 だけどもっと、そこから属人性を離れて、もっといろんなものを違う形で出していきたいっていうなら、違うクリエイターを立てながら、チームが複数ある形にするとかね。 だから専門店を目指すのか、百貨店を目指すのかっていう。 石井氏: それでいうと、学校がイメージに近いんですよ。学校を作って、人材紹介業やるみたいな。 鳥嶋氏: リクルートになるの? 石井氏: たとえばです(笑)。 鳥嶋氏: (笑)。 石井氏: 「IPを作っていこう」となると、それはそれでスペシャルな才能が必要になるじゃないですか。というよりも、FLAT STUDIOというスタジオに志を同じくするクリエイターが集まって、彼らを育成して、発展させていったほうがイメージにあっているといいますか。 鳥嶋氏: ということは、石井さんとloundrawさんは決して、「研ぎ澄ましてものを作っていきたい」わけじゃないんだ。 石井氏: いえ、それはそれでマストなんです。 鳥嶋氏: だけど、人材育成をして横も広げていきたいわけでしょ。 石井氏: はい。 ──それって、石井さんとloundrawさんで一致してるんですか? 石井氏: いま初めて言いました(笑)。 loundraw氏: 僕のポジション的には、今はまずは自分の映画を作って、それが良いものになることが結果的にチームにとってプラスだと思うので、そのために頑張っているんですね。 一方で、一緒に作っているメンバーの中には「本当は監督をやりたい」という子も沢山いて。ただ、今この瞬間は実力的にはいろんなものが足りてないから、一緒にやってくれてるんですが、その子たちに教えられるものは出し惜しみせず全部教えているんです。 そんな彼らが改めて「監督をやりたい」と言ってきて、実力も伴っていたならば、それを妨げるのは仲間としてはもちろん人類的にも損失だなと思うんですよね。 ──なるほど。 loundraw氏: そうしたら、今後は監督になった子が下の子たちを指導して、いろんな才能が伸びていくわけですよね。場合によっては、またどこかで一緒にやる機会が巡ってくるかもしれない。そういう形は業界全体においても、また自分の立場だけで見ても一番メリットがあると思うので、石井さんが言われたことに対して、あんまりネガティブな気持ちはないですね。 鳥嶋氏: 植物園の空気を良くすれば、自然と全体がうまく綺麗に育ってくって考え方だよね。 ──でもこういう言い方するとあれですけど、一方で、loundrawさんは何でもできるという話だったじゃないですか。それって、かなり先天的なものだと思うんですよ。 ゲーム業界もそうですけど、ディレクターを担える人材って限られていて、その人物の覚悟であったり、作家性というものと心中するというのは、それはそれでひとつの有りようだと思うんですよ。なにより、ディレクターは育てればいいみたいな話がありますが、現実としては育たないなというシビアな現実もあるわけで。 そのあたりはどう思われていますか? 石井氏: 先ほど学校がイメージに近いといったんですが、実は自分が一番モデルケースにしてるのは、サッカークラブなんですよ。 凄くざっくり説明しますと、例えばマンチェスター・シティFCを筆頭にするシティ・フットボール・グループという凄く資金力があって、世界中にに関連クラブを持っているサッカークラブ事業を展開する組織があるんですね。 関連クラブには、当然世界ランキング上位のクラブもあれば、そうでないクラブもあるのですが、何が凄いって、複数のクラブを持っているからこそ、選手の活用やキャリアパスの設定がすごくしっかりしているんですね。 トッププレイヤーは一番すごいマンチェスター・シティFCに行くけど、それ以外はレベルに応じた関連クラブに行ったり、レンタルとして他のクラブへ渡ったり。そして、実力が付いてくるとランクが上のクラブに移籍するみたいなイメージです。 実はそれのアニメスタジオ版といいますか、クライアントオーダーに応えられるレベルであることは前提ですが、各セクションのスキルレベルに合わせてスタジオを作っていき、そのクラスに合わせた仕事ができるようにすればいいと思っているんです。 そうすることで、その人に適した仕事の場を提供することができ、自分と近しいクラスのクリエイター同士で仕事をすることで、適切な競争じゃないですけど、育ちやすい環境が生まれると思うんですよ。 さらに言えば、1スタジオの上限を決めておけば、新陳代謝もあるし、若い子が「あのスタジオに行きたい」という夢にもなる。 そうして頭角を現すクリエイターが出てくれば、トップスタジオであるFLAT STUDIOに迎える、そんな構想です。 鳥嶋氏: 初めて聞いたよ。サッカークラブを参考にするなんて(笑)。 石井氏: 鳥嶋さんがいう任天堂方針も良いなとは思うんですが、僕らの場合、まだまだ規模が大きくないので、任天堂やディズニー、あるいはピクサーのようなスケールで世界を見ることができないというのがあるんです。 だからこそ、今いる人たちをどう伸ばすか、という人間ベースで考えた時に、サッカークラブの在り方にヒントを得ました。 ──となると、極論としては様々なタイプの作品が出てくることになるわけですが、ことloundrawさん個人だったり、石井さんとしては、どういった作品を作っていきたいとかはあるんですか? おそらくそこには、そもそもアニメをずっと続けるんだっけ? という話もあると思っていまして。 石井氏: loundraw君は普通にその道を選んでいたら学者にもたぶんなれると思うんすよ。でも今自分たちがこの場でアニメ作ってるのは、それが一番自分たちの特性に合ってると思っているからなんです。 だからこそ続けているのですが、時代と合わなくなったり、外部要因で特性や価値が低くなることってあるじゃないですか。 その時に、それでもやり続けることが正しいのかどうか、みたいなことは、あまり答えを出さないようにしていて。 鳥嶋氏: それで言うとね、時代を超えるコツは簡単ですよ。うんとヒットすることですよ。 石井氏: そうなんですよね(笑)。 鳥嶋氏: 中途半端なヒットだと、時代を超えられない。『ドラゴンボール』や『ドラえもん』のようにうんとヒットしなくちゃ。 loundraw氏: うんとヒットする(笑)。 鳥嶋氏: “うんとヒットする”っていうのはどういうことかって言うと、ある種のマスを取れってことであり、世代や国を超えて伝わっていくだけの、価値観や強さがあるってことですよ。中途半端なものは、消えてく。 石井氏: はい……。 鳥嶋氏: だから、うんとヒットするものを作るしかないよ。 ──(笑)。 石井氏: そうですよね。 ──その上で聞いてみたいのが、いま作られているものって、わりと狙い撃ちというか、「こういう人たちに、こう共感してもらう」に対して、着実に当ててるって感じがすごくして。 一方で、マスに売るっていうことは、レンジを広げるってことじゃないですか。その時に何が起こるかというと、誰でも理解されるように角を取って、丸くしていくみたいな作業が発生するわけで。 結果例えば、100万人に届くようになったんだけども、濃度や個性みたいなのは薄くなってしまう可能がある。そのあたりはどう捉えてますか? 石井氏: 日本と世界、何を評価軸にして勝負するかでマスという概念自体の捉え方が変わってくるなと思うのですが、どちらかというと僕らは世界の方を見ています。というより、僕らのようなタイプは日本だけでは難しいだろうと思うことが多々あり、後者を見るしかないという表現が正しいのですが。 例えば宇多田ヒカルさんや久石譲さん、北野武さん、宮崎駿さんなど、日本はもちろん世界的にも人気がありますが、かといって丸いという印象はあまりなくて……。 ですので、自分たちらしい尖った部分とマスという意味での丸い部分を両立できるようにチャレンジすることが大切だと思っています。 ──loundrawさんはいかがですか? loundraw氏: ゆくゆくはマス向けといいますか、メジャーをやってもいいと思うんですが、メジャーなものをやるっていうのは、「作家の歴史がそれに値するか」が重要になってくると思うんですよ。 例えば新人の作家が、東京タワーが倒れるシーンを描いたら、「派手なのやりたかったんだな」で終わると思うんです。例えばそれを庵野さんが描いたら、「日本が壊れる」という象徴を描いたと、たぶんスッと思えるはずで。よく、誰が作ったかで作品を観るべきではないという声が上がりますけど、僕は避けられないものだと思っていて。 そういう意味で、僕が今メジャーなものパッと作った時に、「ああなんか、いわゆる『アニメ』を作ってる人だな」みたいな感じに見られるのは、すごく良くないなと思うんです。 ──段階があるということですね。 loundraw氏: そうですね。その時はまた客層も変わるので、いつ作るかはまだ分からないっていうのが正直なところですね。 鳥嶋氏: マスの話でいうと、それを目指す時に、自分の中にある一番訴えたい部分だけは、変えちゃダメ。そうじゃないと、“熱”自体をなくしちゃうから。それは、本当によくやりがちな過ちなんだよね。 あくまでもメジャーとかマイナーって、伝わる数の問題であり、テーマの問題じゃないんだよね、実は。みんなそこを勘違いしちゃう。 loundraw氏: そう思います。関わる人の数やスケールが変わったとしても、結局自分の中に芯が通っているかが一番重要なんだなというのは、環境が大きく変わっていくこの数年で一番感じていることです。 『サマーゴースト』における選択は、生と死というすごくシンプルなテーマでした。ですが、生を選択したとしても僕たちがいるこの世界ではそれで物語が終わりにはなりませんし続いていきます。それに実際の僕たちは一人だけで生きているのではなく、その先には社会があるんですよね。いろんな人がいて、正解もない。その中でどうやって芯を持つのかというのは、僕も知りたいですし、物語の中心に据えられたらと思っています。 ──それは楽しみですね。本日は長い時間ありがとうございました。 (了)
電ファミニコゲーマー:TAITAI
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