マライア・キャリー初来日30周年、今こそ学ぶディーヴァ伝説と「ファン第一の姿勢」
『Music Box』30周年、ファンとの絆をもたらした名曲
「『Music Box』をつくったことは一生の思い出です。ファンと永遠の絆をつむいでくれたこの音楽が、私の人生を変えてくれた」(マライア・キャリーの公式Instagramより) ファン想いのマライアが大切にしている作品こそ、このたび30周年記念盤がリリースされる『Music Box』だ。大成功デビュー後の1993年、制作コントロールをにぎりながらヒットを志向した3rdアルバムで、全世界売上は3000万枚にのぼる。そのうち260万枚を売り上げた日本でのスターダムを確立した作品でもある。 『Music Box』30周年記念作品のDISC1にはオリジナル・アルバム11曲、DISC2に未発表音源やリミックス音源含む計15曲、DISC3に1993年アメリカNYで行われた自身初のコンサート『This Is Mariah Carey』ライブ音源10曲を収録(CD通常盤は3枚組、輸入盤アナログは4枚組)。さらに日本盤のみのスペシャル・ボーナス・ディスクとして、DISC3のフル・ライブ映像ほか、当時のスペシャル・インタビュー映像、ミュージック・ビデオ4本、さらに1996年東京ドームで行われた初来日公演での「ヒーロー」ライヴ映像をDVDに特別収録した豪華4枚組「完全生産限定盤」も発売される 真の「シンデレラストーリー」も、このアルバムにあるかもしれない。日本で90年代に「MDウォークマン」、2010年代に「ゲーム・オブ・ウォー」のCM、およびTBS系「平昌オリンピック」主題歌となった代表曲「Hero」が収録されているのだ。じつはこのバラード、創造主たるマライアに愛されていなかった。映画『靴をなくした天使』でグロリア・エスティファンが歌うために制作されたものの、あまりにもいい曲ということで歌わされることとなったというのだが、本人としては「ベタすぎる」歌だったよう。 ある種不遇な「Hero」こそ、マライアにファンとの強靭な絆をもたらす「シンデレラ」ソングとなった。つらく困難な時でも、あなたを救ってくれるヒーローはあなた自身の心にいる……そう歌いあげるこのエンパワーメントソングによって「命を救われた」と感謝する何千もの手紙が届いたのだという。そのなかには、死について考えていたり、大切な人を失ったりした人々も多かった。アメリカにおいては、とくに9.11以降、悲劇を乗り越える国民的アンセムとして大切にされている。 「コンセプトを依頼されてつくった『Hero』は、好きな曲ではなかったけれど、何度も歌っているうちに、こんな風に言われることが多くなった……『この曲をつくってくれてありがとう。私/家族の人生を救ってくれた』。だから、コンサートで絶対に歌うようにしてる。もしやらなかったら、誰かを取り残してしまうかもしれないから」(マライア・キャリー、2006年ツアーでのコメント) 天性の才能を持つマライア・キャリーだが、ファン至上主義、ひいては世界的スーパースターとしての責任感を決定づけたのは『Music Box』なのかもしれない。キャッチーなダンスナンバー「Now That I Know」や感動的なゴスペル「Anytime You Need a Friend」のほか、未収録曲やライブ音源まで網羅する30周年盤が、マライア入門、あるいは再会に最適なことはまちがいない。 --- マライア・キャリー 『Music Box』30周年記念エディション デジタル配信中 CD/アナログ:2024年2月23日リリース
Tatsumi Junk