解説:トランプ氏がグリーンランドを欲しがる「理由」と「実現可能性」
トランプ次期米大統領が北大西洋条約機構(NATO)加盟国デンマークの自治領グリーンランドを米領土の一角に取り込みたいとの意欲を改めて表明している。獲得のために軍事行動や経済措置を取る可能性を排除しなかった。実現の可能性や関心の理由、グリーンランド自治政府の独立に向けた動きなどをまとめた。 ◎トランプ氏が関心を持つ理由 トランプ氏は1期目の2019年、初めてグリーンランドの購入意向を表明。デンマーク政府に提案したが、一蹴されていた。グリーンランド自治政府も拒絶した。 グリーンランドは米軍にとって、戦略的な重要性がある。欧州から北米へ飛行の最短ルートは、グリーンランド上空を通過するためだ。 また、鉱物・石油・天然ガスといった資源も豊富にある。環境への懸念から石油と天然ガスの採掘は禁止されており、鉱業開発は先住民らの反発を受けている。 ◎トランプ氏は購入できるのか デンマークのフレデリクセン首相は、今回のトランプ氏の意向を巡り、米国と緊密に協力する必要があると強調。「島の未来を決め、方向付けられるのはグリーンランドだけだ」と述べた。 グリーンランド自治政府のエーエデ首相は、島は売り物ではなく、島の将来に関する決定は、島民に委ねられていると繰り返し述べている。 グリーンランドはデンマーク憲法の適用下にあり、法的地位の変更には、憲法改正が必要となる。2009年には、住民投票を通じて広範な自治権が付与された。これには、デンマークからの独立を宣言する権利も含まれている。 ◎グリーンランドが独立したら何が起きるか 近年、グリーンランドでは独立に向けた動きが強まっている。現地の政治家らは2019年以降、米国との貿易・連携強化にも関心を示しており、デンマークから独立した場合、米国と連携するという選択肢もある。 島民の大多数は独立を支持しているが、時期や、想定される経済的影響については意見が分かれている。 ◎トランプ氏はどこまで行動に移すか トランプ氏は獲得のために、軍事行動や経済措置を取る可能性を排除しておらず、こうした発言は、国際的な懸念を引き起こしている。 フランスのバロ外相は米国がグリーンランドに侵攻する可能性を否定した一方、EUは、他国が領土を攻撃することを容認しないと表明した。 *映像を一部差し換えて再送します。