【毎日書評】人の話は「聞きっぱなし」が大正解!どんなアドバイスもいらない
心のなかでは「わかってほしい」と思っていても、なかなかわかってもらえなかったり、話を聞いてもらえなかったり──。 多かれ少なかれ、そんな経験は誰にでもあるのではないでしょうか? しかし、満たされない思いが募っていくと、やがてフラストレーションを感じることになるかもしれません。その結果、ブチ切れてしまったりしたら、人間関係にも悪影響を与えてしまうでしょう。 事実、臨床心理士である『プロカウンセラーの こころの声を聞く技術 聞いてもらう技術』(諸富祥彦 著、SB新書)のもとにも、「わかってもらえない。聞いてもらえない」という「こころのつながりの不全」を感じている多くの方々がカウンセリングを受けに来るのだそうです。 そこで本書において著者は、そんな「こころのつながりの不全」を感じている方々のために、具体的な対処法を示しているのです。 「もっとしっかり、つながりたい」 「もっと話を聞いてほしい」 「わかってほしい」 そんな気持ちを叶えるための具体的な対処法を示した本です。 また同時に、周囲にいるほかの人が、その気持ちに応えるために、「もっとうまく話を聞ける人間になりたい」。「もっと気持ちをわかりたい」。そのためにはどうすればいいか、その技術を具体的に示した本です。 (「はじめに」より) きょうは第1部「聞く技術とわかってもらう技術、その大原則」内の第1章「聞く技術【初級編】」のなかから、興味深いトピックを抜き出してみたいと思います。
「聞きっぱなしのまま」そのままにする
「聞く技術」というと複雑な技術が必要だと思われるかもしれませんが、著者によればそのための大原則はとてもシンプル。 「聞いたら、聞きっぱなしにする」「余計なことはいわない。そのままにする」。これこそが、なによりも大切な「聞く側の大原則」だというのです。 例えばこれは、アルコール依存の経験がある人がお互いに支えあう「セルフヘルプ・グループ」(自助グループ)など、さまざまな治療的グループなどでも採用されている「人の話を聞くときの大原則」です。 セルフヘルプ・グループとは、同じ悩みを抱えている人、かつて抱えていた人同士で支えあうグループです(断酒会のほかに、薬物依存の会、不登校の子どもの親の会、ひきこもりの親の会など、さまざまな会があります)。(21ページより) こういった会では、参加者のひとりが自分の苦しかった体験やその後のプロセス、自分の感情を語ることになります。同じグループのメンバーは、心を込めてそれを聞きながら、ただそのまま「聞きっぱなし」にする。それが原則であるわけです。 「聞きっぱなしなんて冷たい」と思われるかもしれませんが、じつはそれがいちばん安全。ひとりのメンバーが思いを語っているときに他の誰かが「自分はこう思う」と割り込んだりすると、それまで語っていたメンバーは「なんだか聞いてもらえた気がしない」と感じてしまう可能性があるからです。 それどころか、ときには「傷ついた」ということになってしまうかもしれません。そこで、そういった事態を避けるためにも「聞きっぱなし」にするという原則が重要な意味を持つわけです。(20ページより)