隣人が「生活保護」を受給しているそうなのですが、「ペット」と「車」を所有しています。これって正当なんですか?
生活保護の受給者には、世間から厳しい目が向けられてしまうことがあります。特にペットや車など、維持費がかかるものや高額なものを所有していると、近隣から疑いの目を向けられることもあるようです。 しかし、実際のところ、これは法的に問題があることなのでしょうか。「隣人が生活保護を受給しているのに車やペットを所有している」という事例を基に考えていきます。
生活保護の概要
まずは、生活保護という制度の概要について確認していきます。 生活保護とは、資産や能力などすべてを活用してもなお生活に困窮する方に対し、健康で文化的な最低限度の生活を保障するための支援を行う制度です。また、併せて自立を助長することも目的としています。 生活保護の主な受給要件としては、自身はもちろん世帯員全員の持つ資産や能力などあらゆるものを活用してもなお最低限度の生活が維持できないことがあります。 そのため、収入がなくとも何らかの資産を有している場合、まずはそれを活用することが前提となっています。例えば、生活に利用されていない土地・家屋などがあれば売却等し、生活費に充てる必要があります。 生活保護では、厚生労働大臣が定める基準で計算される最低生活費から収入を差し引いた差額が保護費として支給されます。 最低生活費の具体的事例は、68歳・65歳の高齢者夫婦世帯の場合で18万5480円、33歳・29歳の夫婦と4歳の子1人の世帯で22万8560円となっています(いずれも令和3年4月時点のデータを基に厚生労働省が試算した、生活扶助と東京都区部における住宅扶助の上限額の合計)。
車やペットは認められることもある
生活保護は原則、資産の保有が認められません。 ここで資産の保有として問題になりやすい項目の一つに、車があります。原則、車は保有が認められませんが、場合によっては認められることもあります。例えば、障がいがある方や、公共交通機関の利用が困難である地域に住んでいるといった方が、通勤などに必要である場合です。 また、ペットについては、基本的には飼っても問題ありません。生活保護では一切の娯楽や癒やしが禁止されているわけではなく、ペットの飼育を制限する規定もないからです。ただし、ペットの飼育にかかる費用が、生活保護費に上乗せされることはありません。餌代や医療費などは、支給される生活保護費の範囲内で支払うことになります。 このように、生活保護受給世帯がペットや車を保有している場合、生活保護において認められる範囲内で、かつ支給される保護費でやりくりしているのであれば、問題はないと思われます。