「宮藤官九郎さんの脚本にはいい意味でプレッシャーがあった」映画『サンセット・サンライズ』岸善幸監督が本作への思いを語る
楡周平の原作小説を宮藤官九郎が脚色した、映画『サンセット・サンライズ』が1月17日(金)より公開される。本作は、東京の大企業に勤める釣り好きの主人公・晋作と東北の小さな町の人々との交流をコミカルに描いた作品だ。今回は、本作を手掛けた岸善幸監督にインタビューを敢行。撮影の裏側や本作への思いを伺った。(取材・文:斎藤香) 【写真】菅田将暉の釣りシーンを堪能できる貴重な未公開カットはこちら映画『サンセット・サンライズ』劇中カット一覧
「宮藤さんと東北談義などをしながら脚本執筆した」 『サンセット・サンライズ』映画化のきっかけ
―――最初に本作を監督することになった経緯から教えてください。 「佐藤順子プロデューサーから楡周平さんの小説「サンセット・サンライズ」を勧められて読んでみたら、とても面白かったんです。コロナ禍の日本、東京から地方への移住など、現代的なテーマから紡ぎ出されるストーリーが素晴らしかった。佐藤プロデューサーに面白かったと話したら、宮藤官九郎さんに脚本をお願いしますという展開でした。 その後、宮藤さんとお会いして。宮藤さんは宮城県出身、僕は山形県出身なので、東北人同士で通じるものがあるんですよね。原作者の楡さんも岩手県出身だから原作に東北人気質がとてもよく表現されている。宮藤さんとは東北談義をしながら、プロット、脚本化へ進んでいき、映画化が動き出した感じです」 ―――主人公の晋作役が菅田将暉さんになったのは、岸監督のリクエストですか? 「いや、佐藤順子プロデューサーが『菅田将暉さんに声をかけてみます』と前のめりで。僕は『やりますかねえ』と(笑)、半信半疑でした。でも、プロットの段階で菅田さんが好感触で、佐藤プロデューサーが菅田さんと会ったときは出演する気持ちを固めてくれていたようです」
映画『あゝ、荒野』から7年以来となる菅田将暉とのタッグ
―――岸監督は、菅田さんとタッグを組むのは『あゝ、荒野』(2017)以来、7年ぶりですね。菅田さんのお芝居に変化は感じられましたか? 「相変わらずストイックな表現者でしたね。芝居に向き合う姿勢は以前よりも厳しくなったと感じました。いろんな作品でまったくタイプの違う役にチャレンジをし続けている俳優なので、その経験もあって、彼の引き出しもかなり増えてきているんだと思います。 本作で、菅田さんは晋作をどのように演じるんだろうかと思っていたんですが、クランクインの日に、最初のセリフの声のトーンですでに晋作として現場に存在しているのがわかりました。彼がこれまで研磨してきた結果だとは思いますが、すごいなあと思いましたね」 ―――タケ(高森武)役の三宅健さんも新鮮でした。三宅さんには、永遠のアイドルというイメージがあるのですが、この映画では、年を重ねた三陸の男になりきっていました。三宅さんのキャスティングについて教えてください。 「三宅さんも佐藤プロデューサーから名前が挙がったんです。僕は以前『前科者』(2022)という作品で、三宅さんがいたV6(2021年に解散)の森田剛さんとも仕事をしているんですけど、10代から歌やダンスを鍛錬して、アイドルとして活動してきた人が、40代になって、演じるということでも、すごい表現力を発揮する姿を目の当たりにしているんですよね。だから、三宅さんの芝居も楽しみにしていました。 結果として、予想を超えるほどのタケにしてもらったと思っています。とにかく勉強熱心な人で、方言のセリフ使いも現場の誰よりも見事でした。 撮影を見学に来た宮藤官九郎さんが、タケのシーンを見てうれしそうに笑っていたのが印象に残っています」